第10話
深紅の会議が行われた翌日から、早速クーの特訓が始まる。
従来通りに、私が剣の型の指導をする。
エルザ他2名は、立ち合いの相手をする。
エルザはパワー&スピードタイプ。パトリックはパワー&タフネスタイプ。ゲオルグはスピード&テクニカルタイプなので、色々なタイプを相手にできるのは良い。
ゲオルグは加えて情報収集にも奔走している。
かなりキツイ本気の特訓で、クーは何度も泣いたが、弱音を吐かずに頑張った。
1月経つ頃には、エルザ達も簡単には1本取れないほどに強くなった。
「そろそろクエストを請けてみても良い頃だろう・・・なあカメリア?」
「そうかしら? まだ不安だわ。」
「また、ママの過保護が出てるぞ。 もっと我が子を信用しろよな。」
「ママはやめてよ。 私まだ16才なのよ? クーと5つしか違わないんだから。」
「16か・・・見えないんだよな。」
「5つしか違わないってのは、私とエルザの年の差よりも小さいのよ? それでママだなんて言ってたら、私とエルザなんてお祖母ちゃんと孫くらい違うじゃないの。」
「おいおい、何を言い出すんだいセニョリータ? アタシは19才だって言っただろ? お前とアタシとでは3つしか違わないんだよ。」
「まだソレ言うのね。」
「おい、クー。」
「はい! エルザさん!?」
パトリックと訓練中のクーが、戦いを続けながら返事をする。
「ちょっとこっち来てくれ。」
「はい。 パトリックさん途中でごめんなさい。 行っても良いですか?」
「ああ、行ってきなさい。」
「ありがとうございますっ!!」
クーは、パトリックに詫びをいれてから、私とエルザの方に駆けて来る。
「なんでしょうか? エルザさん。」
「今日の訓練は終了だ。 これからお前の装備を買いに行こう。」
「ホントですかっ!?」
「ああ、フロで汗を流したら行くぞ。 ママも来るだろ?」
「・・・行くわよ。 あとママ言うな。」
3人そろってお風呂に向かう。
この2人には、既に私の秘密を知られているので、秘密を気にせずにお風呂に入れるのは気が楽でありがたい。
しかし、今の私には別に気がかりなことがある。
クーは、訓練を始めてからドンドン筋肉も付いてきた。それはまあいい。しかし、それと同時になんか一部が膨らみ始めた気がしてならない。まだ11だよね?クーちゃん?
お風呂場にて・・・
「お、クーなんか成長したんじゃねぇか? なぁカメリア?」
「やめてエルザっ! 聞きたくない!!」
「お前何言ってんだ? クーの背が伸びたって話だろ?」
「あ、そうなの? そうね。 運動で成長が促進したのかもしれないわね。」
「そうなのリア姉? 私背伸びた?」
「伸びたんじゃないかな?」
「そっか。 私、もっと背高くなりたい。」
「しかしよぉ・・・クー、お前背だけじゃなく・・・」
「いや~~っ!! バカエルザぁ~~!!」
私は、耳を塞いでお風呂場から逃げ出した。
「リア姉どうしちゃったの?」
「クー。 そっとしておいてやれ。」
「う、うん?」
お風呂の後、私たちは以前にクーの剣を買った武器屋に来ていた。
「クーの戦闘スタイルだと、やっぱり軽装だよな。 皮鎧・・・でも、クーはすぐにデカくなりそうだからな。 どうすっかねー・・・ピッタリだとすぐに着れなくなりそうだな。」
「でも、あまり大きいのはダメでしょう?」
「だな。 買い替えは仕方ないか。」
「そうだね。」
「クーはなんか気になるのあるのか?」
「え~とね・・・あ、これ良いかも?」
「鎧じゃなくて、普通の服みたいだけどね。」
「でも獣人って、こういう感じの着てるヤツ結構多いんじゃないか?」
「そうね。 獣人は鎧よりは、こういう服みたいな感じの装備の人が多いかもしれないわね。」
「店主さん。 これって試着して見てもいいですか?」
「そっちのトラのお嬢ちゃんが着るのかい? いいぞ、着て見な。 しかし・・・」
「しかし・・?」
「嬢ちゃんちょっとの間にデカくなったんじゃねぇか?」
「背がね・・・」
「ああ・・・そ、そうだな。背がね。」
店主は何かを感じ取ったらしく、それ以上はクチにしなかった。
「どう?」
試着を終えたクーが、両手を広げてクルりと回る。
上は、首まである厚手の長袖、下はダボっとした7分丈パンツみたいな感じだ。膝から下だけは鉄板に覆われた足鎧みたいなブーツを履いている。
(ふむ・・・アンバランスで変かも? と思っていたけど、実際に着たところを見ると・・・いいネ。 想像していたよりも遥かにイイ。)
「お、いいじゃないか。 ちょっと大きめだけど、動きづらくないか?」
「ん~。 大丈夫かなぁ? リア姉はどう思う?」
「えっ・・・ああ、そうね。 とっても良いと思うわ。 でも、鎧の方が良くない?」
「鎧だと重いし、動きにくそうで・・・」
「トラの嬢ちゃん、その上着は一応鉄線入りなんだが、重くないかい?」
「ん~。 普通の服よりは重いと思うけど・・・全然大丈夫です。」
「そうかい? それなら良かった。」
「あとはグローブか?」
「グローブはもちろん必要だけど、他にもフルフェイスの兜がいるわね。 クーの顔に傷でもついたら大変だもの。」
「おい、この格好にそれは・・・変質者っぽくならないか?」
「見た目よりも、安全性ですっ!」
「リア姉・・・私やだよ。 頭はコレがいいです。」
クーは、幅のある鉢巻きみたいなものを手に取ると、おでこの辺りに巻いて見せる。
「お、いいんじゃないか。 兜は獣人用のものじゃないと耳がな・・・これなら鉄板も入っているし、いいじゃん。 カワイイしな。」
「んー・・・カワイイのは認めるけど・・・やっぱり兜の方が・・・」
「これがいいよ。 ね? 良いでしょうリア姉?」
「クーがそう言うなら妥協しますか。 店主さん、これ下さい。」
「毎度あり~!! ズボンに尻尾用の加工はするかい?」
「そうね・・・私がやっても良いんだけど・・・本職にお任せした方がいいかしら?」
「料金はサービスしてくれるんだろうな?」
「もちろん、別料金はいただきませんよ。 明日の午後に、取りに来てもらえるかい?」
「それじゃあ、お願いするわ。」
「よろしくお願いしますっ!!」
「あいよっ! お任せあれ!」
更に、クーのサブウエポンとしてメイスを買った。斬撃が効きにくい相手には打撃系が良いだろうということと、クーの力で殴ったら相当効果がありそうだとのエルザの判断だ。
翌日、私とクーの2人で加工の終わったズボンを取りに行く。その後は、雑貨屋さんに寄ってカバンや小物入れなんかを揃えた。
まだ自分のお金を持っていないクーは、私からの借金と考えているようで、申し訳なさそうにしていたが、自分専用の装備が嬉しくて堪らないように見えた。
もちろん、クーの装備一式は、私からプレゼントするつもりだけど、クーは遠慮しそうなので、まだ黙っておくことにした。




