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鋼と虎  作者: 釘崎バット
第4章 カメリアとクー2

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第5話

 クーと剣の修行を始めて、かれこれ2週間ほど経っただろうか。

 クーの剣技は、この短期間で随分と上達していた。


「やぁっ!! えいっ!!」

 可愛らしい掛け声を上げつつ、クーは、私が教えた型を何度も繰り返す。


「とうっ!!」

「うーん・・・やっぱり体力あるなぁ。 何もしてない状態でも凄かったのに、ちょっと修行したらこれだもんな・・・」

 最近は、クーからのスキンシップがどんどん痛いレベルになって来ている。私にとってはうれしい悲鳴であるけれど、華奢なこの体がいつまで耐えられるか・・・心配になるくらいではある。


「クーちゃん! 次は、一の型から九の型まで続けてやってみて! 30回!!」

「はいっ! ししょうっ!!」


 やはりクーは、獣人界最強の一角と言われるトラ種の獣人なんだと改めて思う。体の動かし方を覚えたとたんこの成長ぶりだ。


 トラ獣人は、その能力を戦闘力に全振りしている(私の勝手な印象だけど)と思っていたが、クーは意外(失礼)と頭も悪くない・・・というか、かなり頭は良いほうだと思う。

 聞き分けもよく、言ったことはすぐに理解してくれるし、理解できなかったことはちゃんと聞いてくる。文字だって最初から書けたし。

 まあ、言葉遣いはなんか幼いと思うけどね。



「おい、カメリア。 ちょっと出かけて来るからな。」

 エルザが私に声を掛けて来た。

「わかっ・・・」

 エルザに分かったと言いかけていた私は、目に飛び込んできた光景に、思わず言葉を詰まらせてしまった。


 そこには、()()()()()()服を着こんだエルザとパトリックが立っていたからだ。

 エルザは、いつもの両手斧の代わりに高そうなバッグを持ち、アクセサリーも身に付け、化粧までしている。普段のエルザを知らない人がみたら、どこぞのご令嬢だと勘違いしてしまうだろう。

 

 私は、エルザとパトリックの近くに駆け寄った。

「な・・何ごとなの? もしかして夢・・・? それともあの世ってヤツ? 私、知らない内に死んでいたの?」

「何言ってんのお前・・・大分失敬なヤツだな。 夢でもなんでもねぇよ。 やっと連絡が付いたんで、これからクーの依頼主の代理人と会って来る。 アタシ等がいない間、ちゃんとクーの面倒みといてくれよ()()()()()()()()。」

クーに聞こえないようにするためか、エルザは後ろを向いて話をする。


「え? え? ちょ、ちょっと待って・・・って誰がお母さんか!! じゃなかったわ、依頼人の代理人? それなら私も一緒に行くわ。 連れて行きなさい。 すぐに着替えて来るわね。」

「ダメだ、ダメだ、ダメダメのダメだ。」


(この女・・・短いセリフの中で5回もダメって言いやがった・・・)


「お前はクーとここに残って待っていろよ。 お前がいると、話の展開によってはどうなるか分からねぇしな。 依頼人の前で大暴れされても困るんだよ。 ゲオルグおじちゃんは置いていくから、良い子にして待っていろや。」


(ちっ・・・こういうときのエルザは、私が駄々をこねても聞いてくれないか。)


「そう・・・分かったわ。 言うとおりにするわよ。」

「そうそう。 ちゃんと良い子にしてたらお土産買ってきてあげるからよ。」

 エルザは、振り向いてクーに向かって手を軽く振りながら歩きだす。その後ろには、大きな黒い塊(パトリック)が続く。


「エルザさん、パトリックさん、行ってらっしゃい~!」

「おう。 クー、カメリアの面倒任せるからな。」

「はぁい!」

 クーもエルザたちに向けて手を振って見送っている。少し離れたところにいたクーには、先ほどまでの会話の内容は聞こえなかったらしい。


(依頼主と連絡がついたって?? そんな・・・クーちゃんとお別れの日が近いってこと・・・!?)


「どうしたの? ししょう??」


 まだ少しは先の事になるであろうクーとの別れを想像して、青くなって俯いている私をクーが心配そうに見上げて来る。


「あ、ええ、だいじょうぶよ・・・何でもないから。」

「ししょう・・・?」

「大丈夫だから・・・ほら、クーちゃん練習続けましょう。」

「はい、ししょう・・・」


 その後は、心ここにあらずでクーの練習を眺めていたが・・・


(こんなことじゃダメだわ。 クーちゃんと過ごす日々を無駄にしてられないっ!)

 考えを改めて、自分に喝を入れる!!


「よしっ!! クーちゃん。 今日はいつもとは違う剣術を教えて進ぜよう!!」

「はいっ! ししょう!!」

 クーが元気いっぱいで返してくる。


 そうだ。 残りの時間を無駄になんてしてられない。 未沙柄の代わりって訳じゃない。 クーだって私の妹なんだから。

 私は、今までクーに教えて来た基礎的な技とは一線を画す、変わった剣技を見せてみようと考えていた。



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