第4話
剣術を習いたいと言うクーに、剣でも買ってあげようと考えた私は、無事にクーと2人でお屋敷を出ることに成功する。
せっかくクーと2人で出かけているのであるから、ただ一緒に歩くだけではもったいない。
ここは、更にひとつ欲を出してみることにする。 クーに拒絶された場合、私の心には深刻なダメージが予想されるため、慎重に進めなくてはならない。
「んん・・・ゴホン。 ク・・・クーちゃん?」
しまった・・・緊張のあまり、声がうわずってしまった・・・
「はい?」
きょとんとした顔で、クーが私を見上げている。
あーもう可愛いなあ・・・いやいや、今はそんな場合ではない。
いきなり出だしをしくじってしまったのだ。これより先は、更に慎重に慎重を重ねてコトを運ばなくてはならない。
「お、お外ではぐれちゃったりしたら大変だから、て、て、て、て・・・手をつないで・・・行こっか?」
「うん。 ありがとう、カメリアお姉ちゃん!!」
クーが、私に向けて右手を差し出す。
(よし!! パーフェクトだ!!)
私は、心の中でグっと拳を握る。緊張のあまり若干つかえてしまった所はあったが、結果は最良だったと言えよう。さすが、幼い頃から神童と呼ばれていた私の計画は完璧だ。
妹と手をつないで街ブラするのは、私の昔からの憧れだったのだ。
私の接し方に問題があったのだとは思うけど、私は実の妹には距離を取られていたので、妹と手をつないだことなんて記憶にない。
「じゃあ、行こうか。」
「うん。」
私は、クーの手を取り軽やかに歩き出した。
スキップしたい欲を抑える事が出来たことに、私は自分を褒めてあげたい。
それから、どこをどう歩いたのか私には分からないのだが、気が付くと目の前には武器屋があった。
「ししょう。 このお店でお買い物ですか?」
「形から入るのもいいと思うんだ。 クーちゃんに似合う剣を買っちゃおう。」
「ホント? いいの?」
「でも、人に向けたらダメだからね。」
「はい、ししょう。」
「約束だからね?」
「はい、分かりましたししょう!」
うんうん。いつもながら素直でイイ娘だ。
そうして、武器屋を覗いてみるものの、どうも私の感性にピンと来るものは見つけられなかった。
既に3件の武器屋を見てみたが、まだなにも購入はしていない。
これで4件目となる武器屋に入る。
「いらっしゃい。 別嬪さんにカワイイ嬢ちゃん。 剣をお探しで?」
「ええ。 この娘が持てそうな・・ダガーかショートソードをね。 良い物ないかしら?」
「そうだな。 この辺がいいんじゃないか?」
店主に勧められた辺りを見てみる。
(う~ん。どこも同じだな・・・)
その時、視界の片隅に入った剣に目が吸い寄せられる。ショートソードとしては少し短く、ダガーと言うには少し長い剣だ。
何か気になり手に取って鞘から抜いてみる。
「これ!!」
鞘を払うと片刃の剣だった。中央大陸では両刃の剣しか見てなかったけど片刃の剣もあるんだ。
母国の刀を彷彿とさせる。反りのない直刀だけど、私の持つ『白鷺』も刀としては珍しい部類の直刀だし、お揃いみたいで良いかも。
「お、別嬪さん。 それを気に入ったのかい? 船乗りなんかが使っていることが多いものなんだけどな・・切れ味は結構いいぞ。 嬢ちゃん可愛いから安くしてやろう。」
微妙に短い感じがクーにちょうどいい。あんまり切れ味がよくってもなんだが、これがいいな。よし。
「クーちゃん。 これどうかな? 私は良いと思うんだけど?」
「うん。 他のよりもなんかカワイイ。」
ん? 可愛い? 剣にも可愛さってあるのか? まぁ、いいや。
「店主さん、これ買います。」
「毎度っ!」
「やっと決まったのか? 女の買い物は長いってのは本当だな。」
武器屋で会計を済ませているらしいカメリアを、向かいの店の陰に隠れて見ていたパトリックはホッとする。
「あとは、屋敷まで帰るだけだな。」
と、カメリア達が通り過ぎるのを待つため後ろを向いて身を縮める。
「パトリック、ご苦労様。」
「カ、カメリア!?」
パトリックは、後ろからいきなり声を掛けられて驚いている。
「気づいていたのか?」
「隠れていたつもりなの? あなた自分の体の大きさをわかっていないわよ。」
「そ、そうか?」
「そうよ。 どうせエルザに言われたんでしょう?」
「いや、偶然・・・いや、違うな、その通りだカメリア。」
「ありがとね。 なにか甘いものでも食べて行きましょう。 奢るわよ。」
「もうすぐ晩飯の時間になるんじゃないか?」
「甘いものは別よ。 ね? クーちゃん?」
「うん!!」
「パトリックも、実は結構甘い物好きでしょう?」
「う、まあキライ・・・ではない・・・かな。」
「じゃ、ちょっと寄り道して行きましょう。」
「一緒に行こうパトリックさん!!」
「ま、まあ、お前たちが行くと言うなら仕方ないな。 護衛を任されている訳だしな。」
「そうだよパトリック。 護衛なんだから仕方ない、仕方ない。」
「仕方ない~。」
私たちは、ケーキを食べてから帰ることにする。
パトリックとこんなに喋ったことはなかったんじゃないかな?なんて思う。
そして夕食は、やっぱり食べきれなかった。




