第3話
豪邸生活も、すでに5日目。
あれほど苦戦していたテーブルマナーも、さすがに大分マスターしてきて、いよいよやる事がない。
庭で遊ぶクーを見ているのは飽きないけど・・・・あれあれ?
クーがなんかパンチを出したり、キックをしてみたり格闘術の真似事みたいなことをしている。もっとも心得が全然ないからふにゃふにゃだ。
これはこれで、超絶にかわいらしいんだけど・・・
「クーちゃんどうしたの? 格闘技の練習しているの?」
「うん。 クーも戦えるようになりたいと思ったの。」
「そうなの?」
「この前の、お風呂でのカメリアお姉ちゃんのキック凄かった。 クーもあんな風になりたい。」
「そっか~。 でも私、格闘術はほぼ素人なんだよね。 エルザ達なら多少は知っているだろうけど。」
「そうなの?」
「そうなの。」
「そっか・・・じゃあ、エルザさんに教えて貰おうかな?」
え!? それはマズいな。クーと過ごす時間が減ってしまうじゃない・・・それなら・・・
「・・・剣術なら私でも多少は教えられるけどなぁ。」
「ホント!? 教えて、カメリアお姉ちゃん!!」
「私自身はあんまり剣とか振れないんだけど、型とかを教えることはできるかな。」
「それでいいから、クーに教えて!!」
「よーし。 じゃあ、クーちゃんはこれから私の弟子だからね。 剣の勉強の時は、私のことは『師匠』と呼びなさい。」
「はい、ししょう!!」
よし。クーの心をゲット!!剣術を習わされた事に今ほど感謝したことはない!!
短めの木の棒をさがしてクーに持たせてみる。
「ちょっと振ってみて?」
「はい! ししょう!!」
クーは、木の棒をブンブン振るが、やはり軸がしっかりしていないので振り回すというようは振り回されているといった感じだ。
「ん~。 クーちゃんはまずは基礎体力作りからだね。」
「きそ・・・体力?」
「うん。 筋肉とかね。」
「でも、ししょうも筋肉ないよ?」
「えっ!? あ、うん。 そうなんだけど。 私はほら、魔法使いだし。」
「剣を教えてくれるんでしょう?」
「えっ!? あ、うん。 そうなんだけど。 小さい頃にちょっとね。 習ったことがあってね。」
「ふ~ん。 じゃ、なにからやりますですか?」
「そうだね。 まずは走ってみようか? お庭を30週。 できるかな? くれぐれも敷地からは出ないようにね。」
「はい、ししょう!!」
そう言うと、クーは走って行った。
「フォームはメチャクチャだけど足は速いなぁ。 私が言うのもおこがましいけど、持久力がどれくらいあるかが問題かな?」
でも、いきなり30週は多すぎたかもしれないかな?
しばらく待っていると、クーが走って戻って来る。
「30週走ってきました! ししょうっ!」
「えっ? ホント? 体力あるじゃない。 トラ獣人の地力を見くびっていたわ。 体の使い方が分かっていないだけ?」
「あいつら、何を始めたんだ?」
庭を一望できる縁側に横になって、カメリアとクーを眺めていたゲオルグにエルザが声を掛けた。
「剣かなんかの訓練みたいだぞ。」
「ふ~ん。 ま、いいんじゃね?」
「そ~だな。 クーの奴が興味あるみてぇだしな。」
「カメリアちゃんは剣の心得でもあるのかね?」
「どうなんだろうな。 魔女ちゃんは何でもできるんだろ。」
「ゲオルグ、お前さ・・・」
「何だよ?」
「お前、結構クーのこと好きだよな。」
「な、なに言ってんだ? そんなんじゃねぇよ。」
「いや、別にバカにしてねぇよ。 アタシも思ってたよりもクーのことは気に入ってるんだぜ。」
「そうかよ。」
「エルザ。 ちょっとクーちゃんと出かけてきてもいいかな?」
「あ~? まぁ、お前が一緒なら大丈夫だろ。」
「ありがとう。 ちょっと行ってくるわね。」
「おう。 気をつけてな。」
クーを連れて屋敷を出ていくカメリアを見送ったエルザは
「おい、パトリック。」
「なんでしょうエリザベート様。」
「おい、その名前を外で出すんじゃねぇぞパトリック。」
「失礼しましたエルザ様。」
「カメリア達について行ってくれ。 一緒にじゃなく離れて見守る感じでな。」
「俺がですか?」
「お前、ここに来てから一層存在感なさすぎだぞ。 少しは動けや。」
「分かりました・・・それでは、行ってきます。」
「おう。気づかれないようにな。」
パトリックは、エルザに言われた通りにカメリアたちを追って行った。
彼の後ろ姿は、いつもより気持ち小さくなっているように見えた。




