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鋼と虎  作者: 釘崎バット
第4章 カメリアとクー2

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第1話

 私たちが人身売買組織からクーを救出し、第9国の4つの城塞都市のうち、王都サジタリアの西側に位置する『アローストリング市』に到着したときには既に日が落ちかけていた。


 護衛対象だった商隊と別れた後、エルザが話を始める。


「おい、パトリック。 お前はギルドで依頼完了の報告をして報酬をもらってきてくれ。」

「分かった・・・」

「ゲオルグ、お前は宿を探してきてくれ。 1泊だけでいい。 部屋も2人部屋を2つだ。」

「いいのか? 子供だって1人に数えられちまうぞ。」

「アタシの分はいいんだ。 アタシはこれからいろいろやることあるからな。」

「カメリアとクーは、あそこの店で飯でも食って待ってろよ。」

「まぁいいけど。」

「ゲオルグたちもお使いが済んだらそこで合流して飯にしてくれ。」

「エルザはどうするんだよ?」

「言ったろ? アタシはやること盛りだくさんだ。 明日の昼に中央噴水前で落ち合おうぜ。 カメリア、クーを任せるからな。」

 そう言うとエルザはさっさとどこかに行ってしまった。


「エルザの言うとおりにしておこう。」

「うわ。 パトリック? ・・・・そうね、それじゃ、あの店で食事しながら待ってるわね。」

 珍しく自発的に口を開いたパトリックに驚いてしまった。


「んじゃな。」

 ゲオルグとパトリックもそれぞれの要件をこなすために去っていったため、私はクーと2人で指定の飲食店で食事を摂ることにする。


 エルザの様子が気にはなったが、その後は特に問題もなくゲオルグたちと合流して宿で1泊した。ゲオルグがツインルームを取っていてくれたが、私はすっかり姉気分で、クーを抱っこして一緒に寝る。


(そう言えば未沙柄と一緒に寝たことってないんだよな。 クーちゃん、最後に見た未沙柄よりも少し上くらいだし。)そんなことも思うが、クーの暖かさが心地よくてすぐ眠ってしまった。


 翌日、エルザに指定されていた中央噴水でエルザの到着を待つ。

「ゴメ~ン。 待たせちゃった?」

「エルザ・・・」

「おっと、積もる話は後だ。 まずは暫定ホームに移動するぜ。」

「ホーム? アローストリング市にそんな所があるの?」

「だから暫定だって。 伝手を伝って貸してもらったんだよ。 クーの依頼主との連絡には時間がかかるからな。」

 とか話しながら皆でエルザの後に続く・・・ってなんか高級住宅の並ぶ地区に入ったみたいだ。場違い感が凄い。

「エルザ? こっちであっているの?」

「ああ、あってるよ。」


 高級住宅街を進み続ける。しばらくすると

「ん? ああ、ここだここだ。」

 エルザが指さす建物を見ると・・・整えられた樹木の柵に囲まれた広い敷地、白亜の大きな2階建てのお屋敷、よく手入れされたキレイな庭、もう時期ではないけどプールまである。


 私の眼からは、勝手に涙が溢れ出していた。

「どうしたカメリア? 泣くほど嬉しいのか?」

「エルザ・・・何人殺したの? お願い・・・自首して頂戴・・・」

「お前・・・何言ってんだ?」


 屋敷に入ると、凄い・・・豪華だ。王族とか有力貴族の別荘とかがこんな感じなのかも。

 私の実家は、里では1番大きかったけど、豪華というのとは違った。この建物は、贅が尽くされている。場違い感一杯の私は目が眩みそうだ。

 貴族の娘らしいクーはまだしも、パトリックやゲオルグまでもが平然としているのが不思議に思える。


 居間らしいところに連れてこられた。これまた広い。こんなに広いところでくつろげるのか?

「とりあえず、みんなくつろいでくれや。」

「本当になんなのよここ。」

「だから伝手から借りたんだよ。 さっきも言ったけど、クーの件の依頼主には連絡つけるだけで時間がかかるんだよ。 クーを実際に実家に帰してやれるのは何か月か先の事になるだろう。」

「そうなの? その間はどうするか考えてるの?」

「まぁ、今回結構大変だったから、しばらくは休んで各自好きなことしようぜ?」

「いいのそんなことで。 お金は?」

「カメリア~。 お前いつも金、金言って・・・世の中金は重要だけど、それだけじゃないんだよ? もっとさぁ、豊かな心を持とうぜ。」

「エルザ・・・あんたねぇ・・・こんな豪華なところ借りられるんなら、私への借金返しなさいよ。」

「えっ!? いや、現金はないんだよ・・・だから、借金はまだ返せん。」


 とりあえず、皆居間のソファーやイスに腰掛ける。

「さっきも言ったけど、依頼完了までは時間がかかっちまう。 なので、しばらく基本的には自由にしてもらっていいが、絶対にクーには1人は付いていてもらうぞ。 一番懐かれてるカメリアが主にってことになるけど、いいか?」

「ええ。 クーちゃんは私に任せて。」

「ま、なにか用があるときは、アタシらの誰かに声を掛けてくれよ。」

「分かったわ。」


「!!!!」

 屋敷の中を探検したそうにクーがウズウズしている。


「クーちゃん。 私と一緒にお家探検しよっか?」

「いいの? クー行きたい!!」

「いいわよねエルザ?」

「好きにすれば? ただ、盗んだり壊したりはしないでくれよな。」

「はぁ?」

 エルザを睨みつけると、エルザは肩を竦めてやれやれと言ったポーズをとる。


 時間をかけて、敷地全体から屋敷内を見て回る。

 どこもかしこも本当に凄い・・・来た時には気が付かなかったけど、使用人さんが数人いるのを見かけた。

 だけど、何かが足りない気がした。なんだろう?こういう貴族のお屋敷といったら、必ずありそうなもの・・・?まぁ、その内思い出すかも。


 屋敷を一回りした後、私は庭で小休止していた。クーは、庭園の緑と戯れている。

「かわいいなぁ~。 私ってやっぱり小さい子・・・いや、妹が好きなのかも?」

 性的な好きではない。あくまでも私のお姉ちゃん属性が高すぎるってことだと思う。本当だよ?


 きれいに手入れされた樹の横からひょっこり顔を出してこっちを見ているクー・・・

(うわ~。 ヤバい・・・可愛すぎる。)変な気を起こしそうになる(いやいや、未沙柄の時は私の気持ちがうまく伝わらなかったけど、今回はうまくやるぞ。 お別れするまであまり時間がないしね。)。


 そうこうしているうちに日が落ちて来た。


「もう夕方かぁ・・・これからしばらくどう過ごしたらいいんだろ?」

 思いがけず長期の休暇となってしまいそうだ。今までこんな経験がなかったから私は少し戸惑っていた。

「でも、クーちゃんも居るし退屈はしないよね。」

 遊び疲れたのか、私の膝の上で眠るクーの髪を撫でながらそう思ったんだ。



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