第11話
朝食から1時間ほど後
私たちは、ロアー・リブ市のアローヘッド領事館に来ていた。
「グスタフ=トーチは来ていないのか?」
領事館の職員は、以下にも役人じみた高圧的な態度で接してくる。
「だからナ~? ミオはさっきから言っているだろ? グスタフは別の用事があるから来ていないんだってば~。」
私たちの中で、パーティ在籍期間が一番長いミオが先頭に立って職員に説明している。
ちなみに猫田さんは、ミオの命により外の馬車で待機している。
私はついつい忘れそうになっていたが、確かにあの不可思議な眼を持つ猫田さんを、人前・・それも役人の前に立たせるのはうまくない。
「しかし、我々はグスタフ=トーチに渡す様に命令を受けている。 グスタフ=トーチを連れてきなさい。」
「話の分からないヤツだナ・・・だから別件があっていないんだってば!!」
(あ・・・これダメな感じだ・・・)
「じゃあ、もうミオは知らん!! 帰る!! 怒られたらお前のせいなんだナ!!」
「冒険者風情が何を言うか!?」
(あ~・・・ほらね。 ・・・仕方ない。)
「ミオさん、ちょっと待って下さい。 職員さん、横から口を挟むようですみません。 私たちの冒険者登録証は確認いただけたんですよね? でしたら、私たちがグスタフの主宰する『星夜の灯火』のメンバーであることは分かっていただけていると思います。」
「それはそうだが?」
「私たちはパーティリーダーであるグスタフから、私たちでロアー・リブからアローヘッドまで荷物の運搬をするように指示されてここに来ています。 グスタフがそのように指示しているということは、依頼の条件に『グスタフ自らが荷を受け取らなくてはならない』という条件がついていたとは思えません。」
「・・・・」
「グスタフへの依頼に、今お話しした条件があったというのは間違いないのでしょうか?依頼書の内容を再確認していただけませんか?」
「依頼書などない。」
「そうですか。 書面は交わしていないのですね・・・困ったな。」
「何がだ?」
「口頭での依頼であれば、グスタフに依頼した方が、グスタフに先ほどお話しした条件を付けていたか確認ができません・・・」
「我々が嘘を言っていると言うのかねキミは。」
「いえ、あなたがそういう指示を受けていると仰るのなら、それはそうなのだと思いますけど・・・それはグスタフから直接指示された私たちも同じです。」
「それはそうかも知れんな。」
「はい。 どうしても荷の引き渡しをいただけないのであれば、私たちはこのままアローヘッドに戻るしかありません。 その場合、グスタフに非があれば私たちには何らかの処罰があるかもしれません。」
「そうだろうな。」
「でも、グスタフに非がなかった場合には・・・」
「私を脅すつもりか?」
「いえいえ・・ただ、そうなり兼ねないってことです。」
「どうしろと言うつもりだ?」
「お手数ですが、上司の方に事情をお話ししていただけませんか? それでも無理なら仕方ありませんので引き上げます。」
「うーむ・・・分かった。 外で待っていてくれ。」
「はいっ! お願いします!!」
私とミオは、一旦外で待つ猫田さんの元に向かう。
「しかし、クロエはスゴいナ。 お姉ちゃん驚いたんだナ。」
「いえ、私は商品の納品とかで業者さんとのやり取りや、役所に書類を提出に行ったりの経験がありますから、ミオさんよりもちょっとだけ知っていることがあっただけですよ。」
「そうか? でもスゴいんだナ。 自慢の妹だナ。」
「まあ、でもうまく行くかは相手次第ですけど・・・」
「どうした? 何かあったのかい?」
「もう・・・猫田さんは相変わらずですね。」
「え? 何が?」
「あのなネコタ! クロエはスゴいんだぞ!!」
「どうしたんだミオ? クロエが凄いのは自分も知っているぞ。」
「あ~も~ネコタ! よく聞け!」
ミオの猫田さんに対する態度が元に戻っている。 今朝の状況が続いていたら帰りの道中私が耐えきれなかったかもしれない。
そう言う意味では、今回の出来事には意味があったのだと思いたい。後は役所の判断だけだけど・・・
馬車で15分ほど待っていると、先ほどの職員が上司と思われる人物とやってきた。
荷物の運搬が遅れると困るとか理由を付けていたが、結論として荷物は引き渡してもらえることになった。
荷物は、両手で持てるくらいのさほど大きくはない金属製の箱だ。 当然カギも付いている。
ただ、間違いなく届けるようにしつこく言われた。
当然だけど、中身は見ないようにも念押しされた。
何だろうね? わざわざ高いお金を払って冒険者に依頼するんだから、重要なものなんだろうけど・・・?
「じゃあ、早速出発しましょうか!」
「「おう!」」
街中を移動中に、私が刀を卸した千年武器店が見えた。
私は、甲の壱式を始めとした私の武器達が、大事に使ってくれる人に巡り合えるよう祈りながら、お店が見えなくなるまで見送り続けた。
こうして私は、初めてのロアー・リブ市を後にするのだった。




