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鋼と虎  作者: 釘崎バット
第3章 クロエとミオ2

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第10話

 翌日。

 目が覚めると、隣にはミオが寝ている。もうすっかりお馴染みの光景だ。

「あ~。 よく寝たぁ~。」

 手を組んで伸びをする。まだ少し肌寒いけど、今日も良い朝だ。

 冷たい水で顔を洗い、着替えも済んだ。ミオはまだ布団の中だ。


「ミオさん。 起きられますか?」

 ミオに声を掛けてみるが、答えは返ってこない。


「ミオさん。 今日は領事館に行くんですから、起きて着替えをしてください。」

 再度声を掛けるが、やはり反応はない。


「ふぅ・・・・()()()()()?」

 ガサっと、布のこすれる音。ミオを見ると、眼は閉じたまま仰向けになり、両腕を上げた体制になっている。

(抱きかかえて起こせってことか・・・)

 ここの所のミオは、どんどん甘えん坊レベルが上がっており、お姉ちゃんというよりもむしろ妹みたいだ。しかし、亡くなったというミオの実妹の話を聞いたばかりであるし、無下にも出来ない。なにより私がこの手のかかるお姉ちゃんを大好きで、放っておけない。


「もう、しょうがないお姉ちゃんだな~。」

 ミオを抱き上げて起こす。

「顔洗って、着替えしてください。 きっと猫田さん待ってますよ。」

「クロエ~やってくれ。」

「ダメです。 自分でしてください。」

「もう仕方ないナ。 今日はお姉ちゃんが折れてやるかナ。 ミオはお姉ちゃんだからナ。」

 のそのそとベッドから抜け出て顔を洗いに行くミオ。

「私、猫田さんに声を掛けてきますね。」

 顔を洗っているミオに声を掛け、猫田さんの部屋に向かう。


 コンコンっと、猫田さんの部屋のドアをノックすると「どうぞ」とすぐに返答が聞こえる。

「猫田さん、お早うございます。」

 言いつつドアを開けると、刀を鞘に戻す猫田さんが見えた。手入れをしていたのかな?

「お早うクロエ。もう行くのか?」

「猫田さんは気が早いなぁ・・・ミオさんがようやく起きてくれたので、まずは朝食にしましょう。 猫田さん朝食はまだですよね?」

「そ、そうだな。 朝食はしっかり摂らないとね。」


 その後、宿の食堂で3人一緒に朝食を摂る。

「今日依頼品を受け取ったら、またすぐにアローヘッドへの旅か・・・」

「あー。 猫田さんも自由時間欲しかったですよね?」

「いや、そう言う訳ではないよ。 もう少しグスタフとシンシアに()()()()()()()をあげてもいいんじゃないかって思ってね。」

「えっ!?」

「なんだクロエ、グスタフはともかく、シンシアは結構グスタフに気があるんじゃないかナ。 気づかなかったのかナ?」

「え? グスタフって頼りになるし良い人だけど、おじさんだよ? そりゃあシンシアの方がグスタフよりも倍以上年上なんだろうけど・・・それにシンシアはいっつもグスタフに小言ばっかりじゃないです?」

「ふう、クロエ・・・お子ちゃまだナ。 それにしてもネコタが気づいているとはナ。 しかも、そんな気を遣うなんてミオは驚きだナ。」

「そうかい? これでも自分は気遣いの人なんだよ。」

 猫田さんは、やれやれと言った素振りをしてみせる。

「ちょーしのんなよ、ネコタ~!」

「ミオさ~ん・・・あんまり猫田さんにキツく当たらないで下さいよ~。」

「大丈夫だよクロエ。 これもミオの()()()()だと分かっているさ。」

「な!なななナ・・・・・!?」

 ミオは顔を真っ赤にしている。怒っている?それとも照れているのか?こんなミオは初めて見た気がする。

 しかし、猫田さんも妙な言い回しをしないで欲しいよ。


 ミオは、それ以降黙ってご飯を食べ続け・・・「先に部屋に戻る」と言って、さっさと席を立ってしまった。


「怒らせてしまったかな?」

 ミオが去った後、猫田さんが気まずそうにしながら聞いてきた。

「いえ、大丈夫だと思いますよ。」

 そう。多分怒っていたのではないと思う。ミオは、少なくとも猫田さんの強さには惹かれているじゃないかな?

 ミオ自身もそれに気づいていない可能性は大だし、猫田さんも不用意に勘違いさせるような事を言うし・・どっちもどっちだから今は指摘してあげない。


 シンシアの気持ちに気が付かなかった私から見ても、ミオが猫田さんに惹かれ始めているのには分かるのに、私を鈍感扱いしている2人が自分のことになると全然分かっていないんだもの・・・。でも、案外自分のことって自分じゃ分からないものかもしれないね。


「それじゃあ、一旦部屋に戻りますか。 1時間後に出発しましょう。」

「そうしようかクロエ。 領事館の場所は分かっているのかい?」

「はい。 昨日確認済みです。」

「そうか。 意外と抜け目ないなキミは。」

「ふふっ。 そうですよ。」


 猫田さんと別れて部屋に戻ると、ベッドの上に丸くなった布団の山があった。

「ミオさん、大丈夫ですか?」

「ク・・クロエ1人か? ネコタはいないだろうナ?」

「はい、私1人ですよ。」

「そうか・・・」

 ミオは恐る恐る布団から顔を出して、周囲を見回す。

 布団にくるまっていたせいもあるのかもしれないが、ミオの顔はまだ赤い。


「今ネコタを見たら、殺してしまいそうだからナ・・・」

 ふむ。やはりミオは自分の気持ちを勘違いしているようだ。まあ、あまり急かしてもなんだろう。ここは長期戦を見据えていくべきか。

「ダメですよ。 猫田さんも悪気があった訳じゃないでしょうから。」

「そうか・・・」

「ほらっ、お姉ちゃん。 こっち来てください。」

 私は椅子に腰かけて、両手を広げる。

「うん。」

 ミオはベッドから抜け出て、私の膝に座る。

 私は膝の上のミオを抱きしめ、くせっ毛を撫でてあげる。

(私にも妹がいたらこんな感じなんだろうか?)

 私は、私よりも小柄でウブな2番目の姉が落ち着きを取り戻すまで、そのまま待つことにした。


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