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鋼と虎  作者: 釘崎バット
第3章 クロエとミオ2

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第8話

 翌日。

「猫田さん、それでは私たち行ってきますね。 荷物番申し訳ありません。」

「いや、問題ないよ。 2人とも楽しんでくるといいよ。」

 猫田さんは手を振り見送ってくれた。


 ミオと2人並んで歩く。

 冬もそろそろ終わろうかという時期だが、まだ結構寒い。


 私が肩にかけている大きな縦長の包みがミオは気になるらしい。

「それはなんなんだナ?」

「ふふっ、ヒミツです。 これから行くところを見れば分かりますよ。」


 昨日、商人から教えてもらった武器屋の一つに辿り着いた。

 お店の名前は『千年武器店』・・・千年続く店なのか、千年使える武器を売っている店なのか・・・大きくはないが、中々老舗感のある店構えだ。

「こんなところまできて武器でも買うのか?」

「え~。 お姉ちゃん察しが悪いなぁ~。 私は鍛冶師ですよ?」

「クロエ~。 あ、ソレはクロエが造った剣だナ?」

「正解です。」

「クロエの剣をロアー・リブで売るのか? でも、なんでわざわざこんな所で売るんだナ?」

「せっかくロアー・リブ市まで来たんです。 私の打った剣が凄いってことをアローヘッド市以外にも広めたいじゃあないですか! ・・・まあ、アローヘッド市でも名前が売れている訳ではないんですけどね・・・」

「ん、そうなのか? まあせっかくだしナ。」

「そうです。 あの遺跡で手に入れた上質な鉱石を使った自信作です。」

「ここに売るのかナ?」

「まずは、お店に入ってみましょう。」


「うわぁ・・・」

 思わず頬が緩む私。

 陳列されている武器は1本1本がきれいに並べてあり、量より質って感じがする。

 実際、質の良さげな武器ばかりに見える。

 店主は・・・居た。パっと見頑固そうな髭まで白いお爺さんだ。 耳が尖っている所を見ると、ドワーフ種かな?お腹も立派だし。


「すみません。 手に取ってみてもいいですか?」

 店主と思われるお爺さんに声を掛けてみる。

「ああ、構わんよ。 ウチのはどれも一級品だぞ。 刃には触れないようにの。」

 う~ん。渋い声・・・私の好きなタイプの店主さんだ。ドワーフ種なら、もしかしたら自分でも鍛冶をしているのかもしれないな。


 剣を手に取り、鞘から抜いてみる・・・うん。手入れも良くされているようだ。

「嬢ちゃん達は、冒険者だろう? でもロアー・リブのギルド所属ではないようだが・・・剣をお探しかな?」

 よし、このお爺さんに見てもらおう。

「いえ、剣を買いたい訳ではないんです。 実は・・・見てほしいものがありまして・・・よろしいですか?」

「何だね?」

 私は、お爺さんの前のカウンターに包みを置いて、中身を開いて見せる。

 包みの中は、ほぼ同じ大きさに揃えた抜身のショートソードが4本、皮の鞘に入った短刀が2本、そして布で包まれた少し曲がった棒状のものが1つ入っている。

 お爺さんは、ショートソードを1本手に取って検分する。

「ほう・・・これは・・・変わった剣だな・・・こっちのナイフも・・・ほう・・・同じような刃だな。」

 お爺さんは、2本3本と次々に見ていく。


「鉄も相当いいものだな、なによりこの刃が良い。 見ただけで良く斬れると分かる。 だが、見たことのない造りだな。 嬢ちゃん、これをどこで手に入れたんだね?」

「アローヘッド市です。」

「そうかい、アローヘッドからわざわざ・・・で、そっちの包みは何かね?」

「これです。」

 包みを開いて、朱鞘の刀をお爺さんの前に置く。


「これは・・・また・・・見たことがない・・・剣かね?」

 お爺さんは、鞘から刀を抜いて刀身を色んな角度から検分する。その間ずっと何も喋らなかった。


(ん~? 好反応なのか? それともこの国では刀の良さは伝わらないかな?)

 私は、内心ドキドキもので、お爺さんの反応を待つ。


「これは・・・なんと美しい剣だ・・・機能性と様式美が一体となった・・・素材は黒鉄鉱だね。 随分高価な素材だ。 こっちが本来の形なんだろう。 先程のショートソードやナイフは、これをこの国用に落とし込んだものではないかね?」


(お、お爺さん正解です。 よく分かってるな。)


「そうみたいです。 これは、他の国で使用されている剣で『刀』と言うそうです。 それで、ご相談なんですが、これらをこのお店に置いていただけませんか?」

「それは願ってもないことだが・・・ただ、この辺りの冒険者の中にこれらの剣の良さが分かる者がどれだけいるものかのう。」

「実の所、今回はピーアールを兼ねているので・・・一つ勝手なお願いを聞いていただけるのでしたら格安でお譲りいたします。」

「お願いとはなんだね?」

「この刀についてですが・・・・」


 無事に商談成立して店を出る。

 店の前では、いつの間にか消えていたミオが待っていた。

 邪魔にならないように気を遣ってくれたのかな?それとも飽きたのか・・・


「うまく行ったのかナ?」

「はい。 目利きも良いですし信用できる店主さんだと思いました。 買い取り額も私が提示した金額よりも高く買ってもらえました。」

「そうか! じゃあ、早速それで食べ歩きだナ!!」

「そうですね・・・って、お姉ちゃんが奢ってくださいよ~。」

最近は、ミオのことを照れずに「お姉ちゃん」と呼べるようになってきたなーなんて思った。



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