第7話
ロアー・リブ市に到着後、商隊からお礼をもらって別れた。
エッタが手を振ってくれていたので、私も手を振り返してお別れした。
彼らはこれから野盗を兵士に引き渡し、ギルドに報告・仲間の埋葬とやることがいっぱいだ。
商隊の商人から、この市内にある武器屋の中で信頼できる店を数店教えてもらえたのは有難いことだ。
「今日はもう遅いから、早速宿に行こうか。 出来れば食事もできる所が良いな。」
「そ~だナ。 ネコタ、探してくれ。」
「分かったよミオ。 クロエ行くぞ、乗ってくれ。」
「はい~。」
宿はすぐに見つかった。
3人で夕食を済ませて部屋に向かう。
私とミオが同室で、猫田さんは1人部屋だ。
「では、明日は自由時間という事で良いかな? 明後日に領事館に行こう。」
「そうですね。 でも、私の用は午前中だけでも済みそうです。」
「ダメだナ。 クロエの用事が済んだらミオに付き合ってもらうから1日必要だナ。」
昨日から妙に大人しかったミオがムスっとしながら1日休暇を主張する。
「ミオさん・・・?」
「了解だ。 元々そういう予定だったしね。 自分は宿でのんびりさせてもらうから2人は楽しんできてくれ。 必要のない荷物は自分の部屋に預けて行ってくれればいいよ。」
「おう、ネコタ。 殊勝な心構えだナ。」
「ミオさ~ん・・・」
猫田さんと別れて部屋に入る。
受付で借りて来た桶に、同じくもらってきたお湯を入れる。装備を解いて、お湯につけたタオルで体を拭っているとミオが後ろから抱きついてきた。
「ミ、ミオさん!? どうかしましたか??」
「クロエ・・・昨日あのエッタって人族に聞いていた氷嵐の魔女ってなんなんだナ?」
「ああ、そっか。 ミオさん、私がこの国に来た目的ってお話ししましたよね?」
「うん。 クロエの本当の姉ちゃんを探しているんだナ・・・氷嵐の魔女がクロエの姉ちゃんなのかナ!?」
「いえ・・・分かりません。 エッタさんのお話を聞いてすごい似ているなって思った反面、決定的に違うところもあったんです。」
「??」
「私の姉、鍔姫は白髪だったんです。 エッタさんの話では氷嵐の魔女の髪は青だったということだったので・・・他の特徴は、正直言って姉と一致しているところが多いんです。 元々私が第9国のアローヘッド市にやって来たのも氷嵐の魔女の噂を追って来たからなんですよ。」
「そうなのか・・・もし姉ちゃんが見つかったらクロエはどうするんだナ?」
「そうですね。 正直言うと決めていないんですが・・・私の国にはもう帰る場所も無いですし、姉が冒険者をしているのならこの中央大陸で一緒に冒険するのもありかも知れませんね。」
「そうか・・・そうしたら偽の姉ちゃんは用済みだナ・・・」
「偽って・・・ミオさんの事ですか?」
「うん・・・」
「鍔姫姉さんとミオさんって全然タイプが違うんですよ。 ミオさんは私をすごく気にかけてくださいますけど、鍔姫姉さんは・・・なんというか、人を寄せ付けない雰囲気があるといいますか・・・全然ベッタリとはしない・・そうですね孤高の人って感じです。 年も4つ離れていますし・・・」
「うん。」
「え~と、何を言いたかったのか分からなくなってきましたけど、とにかく、鍔姫姉さんが見つかったとしても、ミオさんが私にとって大切な2番目のお姉ちゃんだってのは変わらないってことを言いたかったんです。」
「そうなのか?」
「そうですよ。」
「そっか・・・ありがとうナ、クロエ。」
ミオは、泣いているようだった。
私もミオも体を拭き終わり、一緒のベッドで並んで横になる。
「ミオさんは、どうしてそんなに私に良くしてくださるのですか?」
「あのナ・・・シンシア達にも話していないんだけどナ・・・」
「はい。」
「ミオには・・・妹が・・・いたんだナ・・・」
「いた・・・ですか・・・?」
「うん。 もう死んじゃった・・・」
「そう・・・なんですか・・・」
「ミオが父ちゃんと大ゲンカして家を飛び出した後にナ・・・」
「はい。」
「ミオの家は、誰かにメチャメチャにされたんだって・・・その時に家族はみんな死んじゃったんだナ。」
「・・・・」
「前に・・・ミオは3月くらい冒険をお休みしていただろ?」
「はい。 実家に帰られた時ですね・・・」
「あれは・・・家族のお墓を見に行ってきたんだナ。」
「じゃあ、ご家族が亡くなられたのって去年なんですか?」
「ううん。 3年くらい前だって・・・アローヘッドで、たまたま故郷の話が耳に入ったんだナ・・・だからお墓を確かめに行ったんだナ。」
「・・・・」
「ミオが・・・家を出たのは6年くらい前だから・・・ミオは家族が死んじゃったことを3年も知らなかったんだナ・・・」
「ミオさん・・・」
「ミオは、父ちゃんや母ちゃんとはケンカばっかりだったけど、本当に嫌いだった訳じゃないしナ、それに妹のことは大好きだったんだナ。」
「妹さん・・・もしかして『クーニャ』さん・・・ですか?」
「!?・・・クロエ・・・なんで?」
「すみません。 ミオさんが寝言で言っているのを何度か聞いたんです。」
「そうなのか?」
「はい。 すみません。」
「いや・・・クーニャはナ、ミオ達のようなトラ人間には珍しい黒髪だったんだナ。」
「黒髪・・・」
私は、ミオの部屋にあった大きな黒ネコのぬいぐるみのことを思い出した。
トラではなくネコだったのは、黒いトラのぬいぐるみが手に入らなかったからなのだろう。
「クーニャの黒髪を気味悪いって言うやつらもいたけど、ミオはクーニャの黒髪はとっても好きで・・クーニャにも良く似合っていて・・・もうクーニャが可愛くって可愛くって仕方がなかったんだナ。」
「・・・・」
「それなのに、ミオは父ちゃんとケンカして勝手に家を飛び出しちゃったんだナ。 大好きな妹を・・クーニャを置き去りにして・・・それで、クーニャや父ちゃん、母ちゃんが死んじゃったことも知らないで自分勝手に生きていたんだっ!!!」
「ミオさん・・・」
ミオの悲痛な叫びに応えるように、私の眼にも涙が溢れる・・・
なんとなく境遇が似ているミオに自分を重ねたのかもしれない。
「本当は・・・ミオの方がクロエを勝手にクーニャの代わりにしていたんだナ・・・」
「・・・・」
「ミオがクーニャを見捨てたのにっ! なのにっ! ミオはクロエを勝手にクーニャの代わりにしていたんだっ! それで・・・それなのに、クロエの本当の姉ちゃんかもしれない人の話を聞いて勝手に嫉妬していたんだっ!! ・・・ごめんナ・・・クロエ・・・ミオは・・・ミオは・・・」
「ミオさん。 どうするのが正しかったのか私には分かりませんが、私がクーニャさんの代わりになれていたのなら私は嬉しいです。 私だってミオさんに姉の影を見ていたのは間違いありませんし・・・ミオさんには本当に救っていただいています。 それに・・・」
「ん・・・?」
「悪いのはミオさんではなく、ミオさんの家族を襲った奴等でしょう?」
「・・・うん。」
しばし沈黙・・・
「ミオさん。 明日は2人で楽しんじゃいましょうね。」
「うん。そうだナ。」
「じゃ、もう寝ましょうか?」
「うん。 クロエ・・・今日の話はみんなには内緒ナ?」
「はい、私たち姉妹の秘密ですね。」
その後、私とミオは仲の良い本物の姉妹のようにくっついて眠った。




