表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鋼と虎  作者: 釘崎バット
第2章 カメリアとクー1

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/40

第7話

 私が宿に戻ると、宿の主人から声をかけてきた。

「お客さんの言いつけ通り、皆さんずっとお部屋でお待ちですよ。」

「そうですか? ありがとうございます。」

 主人に笑顔で礼を言って部屋に向かう。


 ノックもせずにドアを開けると、ベッドの上で肩肘をついて横になっているエルザと、私のベッドに足を組んで腰掛けているゲオルグ、床で胡坐をかいて座っているパトリックが何かを話し合っていた。


 突然開いた入り口の方を見た3人は、一様に青ざめてサっと3人並んで床に正座で座る。


「カ・・カメリアお帰り。 随分速かったわね。」

「そのまま待てって言わなかったかしら?」

「いや、その~。 この正座? 正座を長時間すると足がね、こう痺れてさぁ・・・いざと言うときに困ると言いますか・・・その・・・なんですよ。」

 エルザはしどろもどろに答える。


「エルザ。 私の服は?」

「ええっ、あちらに干してございます。 今日は天気も良かったもんで、言いつけ通りに陰干しにしましたが、以前よりも着心地抜群でございますよ?」

「はあっ?」

「いえっ。 以前よりッてことはないですかね。へへへっ・・・」

「まあいいわ。 それよりコレ。」

 エルザに酒場の請求書を渡す。請求書を見たエルザの顔がみるみる青ざめる。


「お店のオーナーがすぐに払えって言うんで、私が立て替えてきたわ。 あんたら3人で私に返しなさい。」

「いや、魔女ちゃん・・・じゃなくって、カメリア様ッちょっと待ってくださいよ。 いくらなんでも・・・ヒィっ!!」

 ゲオルグが請求書を見てクチを挟んでくるが、私の顔を見たとたんに俯いて黙る。

 パトリックは、心配そうにエルザを見ていたが、やはり私の方を見てから俯いたままだ。

 しばらく沈黙が続くが、耐えきれなくなったエルザが口を開く。


「カメリア・・・様。 そもそもこの請求書おかしくないですか? 飲食料金は街で出すはずだろう? なんで請求されてんだよ?」

「エルザはお店の閉店時間って分かる?」

「はあっ!? まぁ、それはもちろん・・・知っていますが・・・」

「そうなの? じゃあ、私に説明して見て?」

「えっと、お店が閉まる・・・営業が終了する時間のことです。」

「あら、本当に知っていたのね。 あのお店って何時が閉店だったのかな?」

「確か・・日付が変わるまでだから夜の12時ですね。」

「あらあら、本当に知っていたのねエルザ。 さすがはリーダーだわ。」

「そ、それが何か?」

「あなた言っていたわよね。」

「な、何をですか?」

「乾杯の時に『()()()()()は街が出してくれるそうだから、()()()()()()()好きなだけ飲んで食ってくれよ』って。」

「そんな・・・ニュアンスのことは・・・言ったかも・・・知れません。」

「街で払ってくれるのは、閉店時間までの分だって。」

「そ!そんな話があるかよ!? 皆が帰るまでが飲み会だろ!?」

「普通は、閉店時間には帰るものよっ!」

「うっ!・・・はい。」

「他には? 何かある?」

「今の流れで従業員の残業手当ってのも分かった。」

「あら? 察しがいいわね。 賢い人間は好ましいわ。」

「だけど、備品代? 清掃代? 保証金? 訳が分からん。 特に備品代高すぎだろ!?」

「・・・あんた・・・お店の・・・お店の惨状を覚えていないの?」

 エルザのとぼけた発言に、さすがの私もブチギレそうになるが、なんとか抑えた。


「いや・・・どうだったかな? ちょっと記憶が曖昧でして・・・」

「ふ~ん。 じゃあ、何か思い出せることはあるかしら?」

「いやぁ・・・え~っと・・・確か・・・みんなで楽しく飲んでいて・・・・」

「ふ~ん。 他には?」

「いやぁ・・・え~っと・・・確か・・・誰が一番強いのかって腕相撲大会が始まって・・・?」

「そうだ! 腕相撲だ。 やってたな確か。 そんで、エルザとパトリックが勝ち進んでいって・・・?」

「そ、そうだな、腕相撲はやったな。」

 今まで黙っていたゲオルグと、珍しくパトリックも口を挟む。


「そうなのね。 誰が優勝したの?」

「優勝・・・優勝? おい、お前ら・・・誰が勝ったんだっけ?」

「待て・・・ちょっと待てよ・・・・そうだ! 思い出してきたぞ・・・確か、途中でエルザに反則だとかケチをつけてきた奴が居て・・・?」

「そうなの? エルザ?」

「あ~?・・・ああ!! そうそう居たわ! いたいたっあのクソ野郎っ!!」

「そうなんだ。 本当にクレーマーって嫌よね。 で、エルザはそいつをどうしたの?」

「えっ!? ・・・えっと・・・・・・あ!?」

「何? ちゃんと話して頂戴?」

「・・で・・・殴りました・・・」

「ゴメンねエルザ。 もう少し大きな声で話してもらえるかしら?」

「イスで殴りましたっ!!」

「そう。 じゃあもう理解できたわね?その後どうなったかも。 それとも説明が必要かしら?」

「あ~。もうわかったよ。 勘弁してくれ。」

「そう。 じゃあ私への返済の方は3人で話し合ってお願いね。」

「その・・・スグには無理だから、しばらく待ってくれ・・・くださいっ!」

「仕方ないわね。 それじゃ早速次の仕事で返してもらうわ。 エルザ、昨日言いかけていた次の仕事のことを話して?」

「だけどよ・・・この最後の給仕服ってカメリアが着ているやつのことだろ? なんで私等が払うんだよ! これはカメリアが・・・」

 あわててゲオルグとパトリックがエルザの口をふさいだ。もしもエルザが最後まで口にしていたら、私はエルザを殺してしまっていたかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ