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1-3 ミルクみたいに、一行だけでいいよ。
君にとっての最初の一歩はね、
たった一行でいいから、書くことだよ。
その一行は、君の灯のミルクなんだ。
赤ちゃんは、最初からごくごく飲めるわけじゃない。
飲みムラってのがあって、
たくさん飲める日もあれば、
ほとんど飲めない日だってある。
でも、それでかまわない。
それでも赤ちゃんは育っていくから。
作家も同じなんだ。
書ける日もあれば、
全然書けない日もある。
だけど、ひと口だけでも飲めれば、
君の灯は確かに育っていく。
そしてね──
ここでひとつ、大切なことを言うよ。
「書きたい」と思って書く一行は、
どんな小説の技法よりも、どんなプロットよりも、どんな文法よりも、
ずっと深い場所を育むんだ。
これは本当にそうなんだ。
文体の整え方や、
てにをはの美しさ、
構成のロジック──
そういう《硬いもの》は後からいくらでも学べる。
でも、灯から生まれた一行は、
今の君にしか書けない。
だから焦らないほしい。
深い話は、この先の層でゆっくり語る。
今はただ、一行ずつでいいから、少しずつ書き続けるんだ。
それで灯はしっかり育ってくれるんだからね。




