2-10 承認欲求に侵された作家の末路
――これは救命に失敗した記録
承認欲求の毒は、新人だけを殺すわけではない。
むしろ、経験者ほど深く、重く、静かに侵されていく。
ここに残すのは、
深度2で止まった者ではなく、
深度3〜4まで到達した実力者が崩壊した構造的事例だ。
創作の世界では珍しくない。
以下、典型的な末路を4種類まとめる。
────────────────────────
【症例1】書籍化成功 → 第2巻で絶望死
《灯の死因:書きたいの全喪失=灯の喪失》
ある作家は、書きたいではなく、書籍化することが目標になった。
書く理由は、書籍化。
だから、テンプレも、ウケも、技術もあらゆる方法を使った。
書きたいは売れないから封印した。
その努力が実り、書籍化を達成した。
アニメ企画の噂まで立った。
だが2巻の執筆で、彼は突然こうなる。
「書籍化したのに、思ったより嬉しくないな」
これは心理的に説明できる。
承認欲求は達成すると虚無を生むからだ。
そして、目標が消えて気づく。
「書きたいが分からない」
とっくに、灯は消えていた。
結果、こうなる。
・一文が書けない
・キャラの声が聞こえない
・プロットに沿っても心が動かない
・締め切りに追われて胃を壊す
・編集が求める修正をすべて飲む
・最後は「書きたくないのに書かねばならぬ」で精神が折れる
そして終了。
商業的成功の翌年に筆を折る。
これは極めて多い。
きっと君もこういうケースを聞くことになるだろう。
なんで上手く行っているのに筆を折るのかって思うかもしれないが、原理はコレだ。
────────────────────────
【症例2】技術で心を模倣する生活に陥り、人格が崩壊
《灯の死因:感情の枯死》
承認欲求に侵された作家は、心を書いたふりをし始める。
なぜなら、本当の《心》を描くと地味と感じてしまうからだ。
・感情描写をウケる順に公式化
・恋愛反応をテンプレで派手に再現
・読者が泣く構造を計算して泣かせる
・キャラのリアクションを読者のために設計
技術は高い。
文章も上手い。
人気もある。
だが、致命的な問題がある。
本人が一切、心を動かしていない。
心の模做を続けると、本物の心が動かなくなる。
・嬉しくないけど、笑わせる。
・悲しくないけど、泣かせる。
・大爆笑を書いても内心では虚無。
感情が摩耗して、虚無に堕ち、最終的には、
「私は何を書きたいのか分からない」という状態になる。
実はこれが作家の精神崩壊で最も深刻。
創作核(「書きたい」)だけでなく、その周辺にある感情すらも消えてしまう。
────────────────────────
【症例3】反応のない日が《禁断症状》になり、SNS依存で消滅
《灯の死因:外界依存》
承認欲求の毒は、
「評価されて嬉しい」レベルでは終わらない。
数字の変動=自己価値になる。
これは、他の中毒と同じだ。
ドーパミンという脳内物質の性質により、中毒症状が出てしまう。
そして、この中毒はどんどん強い刺激を求めていく。
すると、報酬系が歪み続け、いずれは自分の実力では得られない刺激を求めるようになる。
・投稿 → 即SNSチェック
・反応がない → 苦痛
・反応がある → 5分で快感が切れる
・また投稿 → 快感欲しくなる
故にこうなる。
・創作ではなく反応稼ぎが目的にになる。
最終的にこうなる。
・反応が落ちる日:地獄
・反応が少ない作品:即削除
・数字が下がるジャンル:切り捨て
・書きたいもの:封印
そして、読者の反応が一度でも落ちると、
「書く意味がない」という結論になる。
完全に中毒者の末路だ。
────────────────────────
【症例4】長期連載 → 読者の声が“神”になり、作者が消える
《灯の死因:主従逆転》
シリーズが長く続くと、読者の評判(承認欲求)に囚われた作家はこうなる。
「これをやったら読者は怒る」
「こう書けば喜ぶだろう」
「期待に応えないと反応が下がる」
この状態になると、作者はもうキャラの声を聞けない。聞いても、無視するようになる。
・読者が主人公より優先
・レビューが物語の方向を決める
・荒れたら修正
・炎上を避けるために無難に寄せる
最後に作者は、
「物語を自分で書いていない」
という感覚に到達する。
その瞬間、筆を置く。
────────────────────────
■末路の総括
全員に共通しているのはただひとつ。
■「創作核(灯)」が死んでいる
■承認欲求に主導権を奪われた
■書きたいが(気づいた時には)消えている
これは天才でも、人気作家でも、ベテランでも例外ではない。
でも、書きたいだけじゃ読まれない、売れないという声も聞こえるが、それは深度3で扱う。
深度2で、売れないからで「書きたい」を捨てれば、売れずに消えるか、売れても消える。
承認欲求を上手く扱えるのは深度3以降。
今は、どうか「書きたい」を死守してほしい。
君の筆を守るために、だ。




