2-4 比較の対処──生き残るための技術
ここは深度2の分岐点だ。
ここを越えられるかで、9割の作家は生きるか死ぬかが決まる。
深度2の少年は、比較を《完全に消す》ことはできない。
だから必要なのは、
《比較を浴びても、死なないための技術》だ。
深度1のように抽象では救えない。
深度3のように理論では支えられない。
君に必要なのは──
シンプルで、すぐ使えて、効果が即時に出る《防具》
これだ。
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比較の対処──少年が生き延びるための技術
深度2に来た君へ。
今日の話は、深度2の中でも最重要だ。
ここで説明する対処法を、
ひとつでも身につければ君は生き残る。
逆に言えば──
これを知らない少年は、99%消える。
比較は敵だ。
そして敵に出会うことを完全に避けることはできない。
外に出た時点で、
君の周りには《他人の光》が存在してしまう。
どうしたって目に入る。
だから今回は、
「比較に刺されても《死なない》技術」
を渡す。
それは難しいことじゃない。
深度2は育ちざかりの少年の層だ。
難しい理論は入らない。
使えるものだけを出そう。
順に説明する。
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まず「比較」が起きた瞬間にやること
比較に刺されたその瞬間、
君の脳はこう処理する。
《相手が強い → 自分が弱い → 自分はダメ》
これは深度2の自動反応だ。
訓練するまで止められない。
だから──刺さった瞬間に逃げることが、最初の対処になる。
技術①:その場から離脱する
比較が刺さった瞬間、
画面を閉じる。
スマホを置く。
サイトから離れる。
逃げることは弱さじゃない。
過酷な戦場で、戦闘力のない少年が生き残る《唯一の手段》だ。
例えるなら、
毒ガスが漏れたとき、ガスマスクがないなら逃げるしかない。
それと同じだ。
■逃げる基準
・胸がギュッとなった
・指が止まった
・心がザワッとした
・文章が書けない
・ぐるぐる考え始める
どれか1つでも出たら、即時離脱だ。
深度2で最強の防御技術は、逃げだ。
これは本当に強い。
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比較の正体を正しく再定義する
比較の刃は、こうやって弱体化する。
比較とは──
少し難しい話だが、自分ではなく「未来の自分」と戦わせられている状態だ。
もっと正確に言うなら、
比較は未来を焦らされているだけなんだよ。
深度2の少年に必要なのは、
未来ではなく今日の成長だ。
■技術②:再定義せよ
比較の痛みを感じたとき、こう言い換えてほしい。
《これは、今日の俺の戦いではない》
この一行で、比較の毒は半分は消える。
君が戦うのは、
100万PVの大作家でも、書籍化した人でもない。
今日の君の相手は、
昨日より1行だけ前に進む君自身だ。
これは綺麗ごとじゃない。
深度2という層の元々の《仕様》だ。
灯を大切に守る。
一見、深度1と同じに見えるけど全然違う。
比較や評価などの痛みに晒されながら、どうにか灯火を守り抜くという激戦だ。
深度2の君にとっては、今日進む1行がすべてだ。
本当に厳しい戦いだと思う。どうか、頑張ってほしい。
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比較に刺されたあと「気持ちを戻す技術」
逃げても、再定義しても、
それでも胸の奥にザワつきが残ることがある。
深度2ではそれが普通だ。
だから、もう1つ技術を渡す。
これは良く効く。
■技術③:《書き始める》
灯の声を聞いて、一行、書くんだ。
・続きの1行
・新しい1行
・単語1つ
・オープニング候補の文字ひとつ
「書きたい」ことならなんでもいい。
比較は、《「書きたい」書いている自分に触れた瞬間、効力を失う》。という性質を持つ。
なぜなら、「自分が書きたい」という想いは、比較できないからだ。
君が書きたいと思うもの、僕が書きたいと思うもの。
これは比較できない。
君は書きたいことがあって、僕も書きたいことがある。
だから書いている。それで完全に完結する。
これで、少年の灯は育っていくんだ。
比較は未来の化け物との戦い。
灯は今の君の中にある。
未来の怪物は、今の「書きたい」で書く行動には手を出せない。
具体的に言えば、
比較:君の方が『いいね』が少ないぞ!
君:それがどうしたの? 僕は今これが「書きたい」んだ。だから、書くだけだよ。
これが防具だ。
深度1で学んだ灯を大切にする姿勢が君のお守りさ。
この法則は覚えてほしい。
比較の毒は《書く》で中和される。
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■4 比較の急所を理解する
比較の正体は、実は「優劣」ではない。
比較の核はたった一つ。
《今の自分では届かない》と感じたときに痛む。
つまり、君が感じている痛みは、
「相手が強い」痛みじゃない。
「自分がダメ」な痛みでもない。
本当の痛みは、《相手との距離の痛み》だ。
距離とは、経験差、年齢差、継続差、積み重ねの差。
遥か彼方に見える大作家の背中との距離。
同時期に始めた隣を走っていたのに、今は一歩前を走る作者の背中との距離。
この距離が痛いんだ。
深度2の君は、まだ1歩目を踏み出した少年で、距離の差を痛く感じるのは仕方ない。
正直に言って、感じるのは防ぎようがないんだ。
だから比較は痛いものと断言する。
それでいい。
痛いのは生まれたばかりの《灯》を守ろうとしている証だ。
痛みは、正しい反応だ。
もう一歩だけ、深度を上げるよ。ギリギリかもしれないけど。
痛みは、《灯》を守ろうとしている証だと言った。
灯とは、君の作家としての才能のことだ。
距離の比較とは、「自分の才能《灯》が、遠くに見えるあの人の背中に届くだろうか?」と疑うことだ。
この問いは既に痛い。
「未来は分からない」からこそ痛い。
さらに、「届かない=才能が、ない」という結論を、誤って結論を下してしまえば、《灯》は折れ、消える。
比較は二段階で殺す。才能が足りないかもしれないという即時ダメージ。
そして、きっと才能が足りないと君が信じた瞬間、自分には才能がないという認識が脳内に走って致命傷だ。
それは即座に、書く意味がないに繋がる。
これが筆を折る前の10秒間だ。
繰り返し言うよ、才能があの人に届くかどうかは問題ではない。
今の書きたいを書くんだ。それが遠くに見えるあの背中に追いつく方法だよ。
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最終防具──比較を《無効化する》構え
ここまでの防具は即効性だ。
最後に、長期的に効く、深度2の上限ギリギリの技術を渡す。
■技術④:《比較しない理由》を自分の中に作る
比較は本能だ。
だから、本能には逆の反射を重ねる。
たとえば、比較の痛みを感じた瞬間、反射としてこう心の中で叫ぶ
・深度2で俺は数字を気にしない!
・今は練習だ!
・読まれなくて当然!
・続ければ育つ!
・書けば強くなる!
この5つのどれか1つを、
比較を感じた瞬間に唱えるといい。
深度2の君は、言葉で心がすぐ戻る。
対応する構えを持っている少年は死なない。
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■6 最後に:深度2の「勝利条件」を伝える
深度2の勝利は、
数字でも、評価でも、読者の反応でもない。
深度2の勝利はただひとつ。
痛み(辛さ)を感じてもなお《書けた》。
これだけだ。
逆に、深度2の敗北もひとつ。
《書けなくなった》。
だから比較は敵なんだ。
最短最速で灯を折るのが比較だから。
ロジックを再掲するよ。
比較する→自分はダメだ→いつか届くだろうか→届かないと誤解=自分には才能がない=灯が折れる
このロジックはね、無防備に受ければ、比較対象を見て、10秒以内に死に至るよ。
「こんな天才に絶対に勝てない。どんなに頑張っても無理だ。だったら、今俺が頑張って書いても意味がないのでは。もう……やめよう(ぼきっ)」で10秒だ。
「こんな天才に絶対に勝てない。ちょっと待て。これ、比較だ。【今は練習!】→(深呼吸して)俺って何が書きたい?灯の声を聞く→書きたいから書く→成長」で君は生還する。
大丈夫さ。
今この瞬間、比較を《敵として認識》できている君は、深度2の中で《最強》少年の一人だ。
敵を知っている。危険を危険と知っている。
深度2でそれは本当に珍しく、素晴らしい《加護》なんだよ。
だから、大丈夫だ。
君は折れない。
深度2はまだ始まったばかりだ。
灯はまだ君の胸の中で大切にされている。
ここから育つ。
深度3に行くために、痛みを感じても、歩いていくんだよ。
約束する。いつか、その痛みを痛みと感じなくなる時は来るからね!
▪️次は創作論だ!
一行でもいい、何でもいいから書きたいを書け!と言ってきた。
何を書くのかという話はしてこなかった。
それだと、迷いも出るだろう。
軸として知るべき、最低限の創作論を記しておく。
じゃあ、次のページに進もう!




