2-1 少年になった君の灯へ
──どうか筆を折らないで
*
深度2に降りてきた君へ。
ここに来たということは、
もう書くのが楽しいだけの世界を君は卒業したということだ。
深度2は、痛みと向き合う場所だ。
だが、その痛みは、君が弱いから起きているわけではない。
灯が外界に触れ始めただけだ。
それは成長の証でもある。
赤ちゃんだった君の灯は、
君があげたミルクを飲んで少年になった。
揺りかごを飛び出し、家を飛び出し、
外の世界に歩み出そうとしている。
外の世界には他人がいる。
家の中の安全な環境ではもうないのだ。
──だから、
比較して苦しくなる。
他人の成功が胸を刺す。
自分の下手さを直視するのが怖い。
承認が欲しくて苦しむ。
これらは全部、深度2の正常反応だ。
深度1では、好きと嫌いだけで動いていた。
好きだから書く。
嫌だから休む。
単純で、美しく、純粋だった。
でも深度2に来ると、感情はもっと複雑になる。
言葉にならない違和感。
書きたいのに苦しい矛盾。
嬉しいのに不安が混ざる揺れ。
「正しいのに痛い」ような、理由のない苦しさ。
これらはすべて、君の灯が、
外の世界と接触し始めたサインだ。
創作には技術がある。
物語には構造がある。
キャラには心がある。
でも、そのすべてを学ぶ前に必要なのは、
自分の内側で何が起きているかを理解することだ。
安心してほしい。
創作論の基礎は、まだ難しくない。
物語とは「心の変化」を描くもの。
キャラとは「自分の心の鏡」。
迷いは「灯が世界を探索している動き」。
痛みは「外界の風が灯に強く吹き付けている証拠」。
君が今感じていることは、
異常でも間違いでもない。
深度2は、心が痛む層だ。
けれど、その痛みは君の灯を殺すためにあるのではなく、
灯が《現実と接続する準備》をしているだけだ。
好きや嫌い以外にも、
成長痛、葛藤、期待、恐れ、羞恥、焦り、嫉妬、希望──
複数の感情が同時に立ち上がる場所。
その揺れは、君が「作家」として世界と触れ始めた証だ。
深度2で必要なのは、
完璧になることではない。
痛みを消すことでもない。
必要なのはただ一つ。
《灯を外界の風から守りながら、前へ進む方法を覚えること》
これだけだ。
大丈夫。
君は折れない。
折れそうに感じる日は、灯が揺れているだけだ。
思い出してほしい。
《書きたい》を大切にできたから、
君は今ここにいる。
深度2は、まだ戦わなくていい場所だ。
守ればいい。
理解すればいい。
痛みに名前をつければいい。
その一歩が、深度3への扉になる。
さぁ、少年の灯が、立ち上がったよ。
痛みがある世界でも、ワクワクを抱えて、ゆっくり外へ歩み出していくんだ。




