ポーション投げたらガラス屋が儲かる
ポーションピッチ。
お前も知っての通り、ポーションを投げるスキルだ。
アルケミストの俺とガラス職人のお前は良いコンビだったよな。
俺が作った薬品を、お前が作ったガラス瓶に入れることで完成する各種ポーション。
特に爆発ポーションは今までに無数の敵を蹴散らしてくれた。
まあ投げつけるたびにガラス瓶が粉々になっちまうから、そのたびにお前に瓶の作成を依頼したわけだが。
アルケミストとガラス職人は、この世界で一番相性の良い組み合わせだし、今でもなりたい職業で一、二を争っているくらいだ。
お前の街も、ガラス職人が集まる街として活気にあふれてるし、治安も良い。ガラス屋の店舗がたくさん並んでいる大通りは壮観だ。
巷では住みたい街ナンバーワンと言われているし、俺もかつて一度は住んでみたいと思ったものさ。
……さて。
前置きが長くなったが、ここからが本題だ。
実はつい最近、最強のアルケミストであるこの俺が、今まで謎に包まれていた最高レベルのスキルを開放したわけだが……。
友人として言っとく。
今すぐ全財産を持って街を出ろ。
理由は簡単だ。
そのスキルの内容が、頭の中で想像したポーションを無から生み出すというものだったからだ。
ポーションの中身はもちろん、容器のデザインも自由自在!
手紙と一緒に送った小箱があるだろう?
そのスキルでガラス瓶ごと作り出したポーションが入ってるから、まだ開けてなかったら今すぐに取り出して見てくれ。
ドラゴンをイメージして作ったガラス瓶でな。
我ながら素晴らしい出来栄えだと思う。
あぎとのところが飲み口になっているのがカッコイイだろう?
その他にも、丹念にイメージして作りあげた鱗の一枚一枚は特に注目してほしいところだ。
……おっと、つい自画自賛してしまった。話を戻そう。
この造形を、お前たちガラス職人が再現できるか?
出来ないよな?
仮に出来たとしても、俺たちアルケミストは何もないところから、完成したポーションを短時間で生み出せるようになっちまった。
つまり、もうガラス職人にガラス瓶を作ってもらう必要はないわけだ。
そして肝心なことだが、アルケミストの最高レベルのスキルがどんなものなのかを知っているのは、世界中でまだ俺だけだ。……あ、この手紙を読んだらお前もか。
まあ、それはともかく。
他のアルケミスト連中も近いうちにこのスキルを開放することになる。
俺と同じく、スキルの内容に最初は驚き、すぐにこう考えるだろう。
あ、もうガラス職人と組む必要なくね? ……と。
するとどうなる?
ガラス職人は仕事にあぶれるし、ガラス屋で成り立っているお前の街も瞬く間に寂れていくだろう。
言うまでもないが、治安も悪くなる。
最悪、街そのものがなくなってしまうかもな。
だからさ。
なるべく早く街を出ろ。
今まで稼いできた金があれば、しばらくは過ごせるだろう?
どこか別の街についたら、ガラス職人はすっぱりやめて、転職先を探せ。
……まあ、これ以上はおせっかいか。
お前の人生だからな。
じゃあな。
健闘を祈る。