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ロエヌ到着

 さらに3日かけてロエヌに到着し、街に入る門の所に行くと衛兵が立っていた。

 とは言えロエヌはまだ前線から離れた都市であるため、そこまで警備も厳重でもない。


「止まれ。身分証はあるのか?」


「ありますよ」

 ラトムは衛兵に身分証を渡す。

「竜騎士様候補ですか。失礼しました」

 確認した衛兵が慌てて敬礼をする。

 一兵卒にとって竜騎士はお偉いさんであり、また竜騎士にならなくとも、将校の地位は約束されている。

 竜騎士候補でも機嫌は損ねたくないという言う気持ちも元兵卒であるラトムは良く解っているので、ラトムも優しい笑みを浮かべて敬礼を返す。

 もっともラトムはヴェルサルユスにずっと守られて来たため、彼も兵卒の気持ちを完全に理解しているとは言えない。駐留軍の司令官であってもラトムに気を使わなければならない状況であったのだから……


「もう入って良いかな?」

 ラトムが問うと衛兵は申し訳なさそうに返す。

「いえ、そちらの女性のも確認させて頂きたいの……もしかしてあなた様はヴェルサルユス……様ですか?」


「あら。何故私の名前と顔を知っていたのかしら?」


「恐れながら西部方面軍の将兵でヴェルサルユス様を知らない者はいないかと……」


 衛兵の声は恐怖で震えていた。ヴェルサルユスを怒らせるとヤバいと言うのはリュベル駐留軍将兵と同じく解っていた。


「そう。じゃあ、もう私達は通って良いわよね」


「いえ、一応身分証明書を見せていただかないと」


「はあ!?私と知っておきながら身分証を見せろと言うの?この町は中々命知らずの勇者がいるわね。それとも猿並みの知能しかないのかしら」

 ヴェルサルユスの背後に黄金の魔力の塊が出現する。

 それを見た衛兵は恐怖で完全に足が震えており、もはやしゃべれる状況ではなかった。


「さて、もう一度聞くわ。私に身分証を」

 衛兵を言葉と魔力を脅すヴェルサルユスの肩にラトムは手を置いて止める。

「おい。冗談なんだろうけど止めろよ。そこの人も仕事で言っているだけなんだから」


 止められたヴェルサルユスはラトムの方を向いて彼の顔を見て溜息をついた。

「解った……わよ」

 ヴェルサルユスは魔術を解除し、身分証を衛兵に投げ渡す。


 それを受け取り損ねて落としてしまった衛兵は慌てて拾って確認する。

「確認致しました。竜騎士候補様は今後この町でどうお過ごしになりますか?」


「冒険者ギルドで軽く仕事してレーベルにある竜騎士学院までの旅費をいくらか稼いで行こうかな思っていますけど」


「解りました。冒険者ギルドまでご案内いたしましょうか?」


「大丈夫ですよ。自分達で探しますので……」

 ラトムは衛兵から2つの身分証を受けとり、ヴェルサルユスとともに町に入った。



 ヴェルサルユスは金色の美しい長髪を靡かせながらラトムの隣を歩いていた。

 顔も人形のように整っている事から町を歩く人達(特に男)から注目の的であったのが、ヴェルサルユスは無視していた。いや、無視していると言う以前の問題で興味すらなかった。


 そのためおしゃれ等ラトムと出会うまで全く興味等なかったが、彼と出会って1年2年と経つ内にヴェルサルユスは化粧や香水などを使い容姿に気を使い始めたのだ。


 近年ではラトムとデート(ヴェルサルユスから見て)に行く時だけは一時間以上も化粧や衣服に悩み、なるべくおしゃれをして会いに行くようになった彼女を見たメイド達は驚き、年老いたメイド長はリュベル住人の大半から恐れられている竜を孫娘を見るかのように微笑ましく思っていたのであった。


「さっきからヴェルは注目の的だね。」

 ラトムがからかうように言うと

「私の美しさを考えれば当然じゃないかしら。まあ、どうでも良いけど……」

 とヴェルサルユスはといつも通りの口調で返す。

 実際ヴェルサルユスにとって目の前の男の子の評価以外どうでも良いのである。


「今の所俺が見て来た女性の中で一番ヴェルが美少女だと思うよ。」

 予想外のセリフにヴェルサルユスは戸惑ってしまった。今までラトムに容姿でここまでストレートに褒めてもらった事はない。せいぜい、服装の事や香水を変えたねとかそんな程度である。


「はぇっ、あ……ありがどう。でも……あなた、本当にそう思ってる?」

 ヴェルサルユスは自分の顔が赤く染まり始めているのに気づきながらも尋ねる。


「本当にそう思っているけどね。実際ヴェルをおかずにぬ……いや何でもない。」

 ラトムは慌てて首を横に振る。ヴェルサルユスが本気で怒るかも知れないと思ったからだ。流石に殺される事はないだろうが、雰囲気が悪いまま一緒に旅をするのはとても辛い物がある。しかし、ラトムの心配は的外れであった。


「あぅ……」

 普段のヴェルサルユスからは考えられない程に弱々しく真っ赤になっており、誰の目から見ても可憐な乙女の姿そのものであった。


 これにはラトムも戸惑う。こう言うヴェルサルユスを見るのは初めてだったからだ。


(もしかして脈ありだったりするのか?)

 ラトムは心の中で呟く。

 ラトムとしてもヴェルサルユスを女として全く意識していないわけではないのだ。親友と言った感情は強いが、先程口にしかけたがヴェルサルユスをおかずに自慰した事もある。

 ただ、異種族であると言う事と今の関係を壊したくない、後は彼の復讐に彼女を巻き込みたくないなど様々な要素が絡み合い、ラトムもそれを口にする事は出来なかったのである。







☆☆☆☆☆☆








 ヴェルサルユスとラトムに対応した衛兵はこの事を上官に報告して、その上官は現在司令部に報告に行っていた。


「ヴェルサルユス様はヤバかった。殺されるかと思ったぜ」

 対応した衛兵は隣にいる同僚にヴェルサルユスに会った時の話していた。

「良く、それでお前命助かったよな。」


「ラトム様とか言う竜騎士候補がヴェルサルユス様をおさえてくれたんだよ。いや、本当に良い竜騎士様になるな」


「まあ、あのヴェルサルユス様をおさえて動かしてくれるだけで現場としては大助かりだよ。」


「全くだ。ラトム様が卒業し、竜騎士様になられたら是非うちの戦線に配属されて欲しいぜ。」


 二人の衛兵の顔は希望にあふれていた。ベルン要塞陥落により劣勢になりつつある西部戦線がヴェルサルユスの本格的な参陣で戦況が変わってくれるかもと言う淡い期待によって




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アルファポリス様でも先行公開中

https://www.alphapolis.co.jp/novel/839347574/216934439

 

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