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ロエヌに向かう道中

 リュベルを出て1週間が経過していたが、ラトムとその騎竜候補(自称)であるヴェルサルユスは竜騎士を養成するための学院であるレーベル学院に向かう道中にあった。

 ヴェルサルユスが竜に変化して空で移動すればとっくについているのであるが、

 彼女の「空で行くなんてつまらないわ。時間があるのだから歩いていきましょう」と言う一言により、陸路で行く事となった。

 ラトムも当初陸路で向かう予定であったため、彼女の気まぐれに従っても特に不都合はなかったため、それを受け入れた。

 ただし、ラトムも所持金が旅費は1人分と予備費が少しだったため、冒険者稼業もやりながら向かう事をヴェルサルユスに認めさせている。

 もっとも、彼女もラトムの頼みを嫌がる事なく素直に受け入れていたが……


 ちなみに冒険者とは言ってしまえば何でも屋だ。溝掃除から薬草等のアイテム回収、兵員が不足している軍に変わって魔獣討伐を受ける。幸い、今向かっている都市ロエヌはリュベルにはかなり劣るものの、それなりの規模の都市であるため冒険者ギルトもある。


 前を歩くヴェルサルユスがラトムの方を振り向く。

「ねえ。ふと思ったけどギャンブルとかで稼がないの?ラトム、ゲーム強いじゃない?」


 後ろを向きながらも全く問題なく歩いているヴェルサルユスを見て人間と竜の身体能力の差を感じながらラトムは答える。

「流石に久しぶりだとゲーム感覚が鈍っているし……それに」


 ヴェルサルユスは首を傾げながら尋ねる。

「それに?」


「まあ、余り勝ちすぎるとそこのマフィアみたいな連中に目をつけられるんだよね。特に余所者は」

 ラトムも幼い頃、ギャンブルの親で生計を建てていたため、その辺りの事情は詳しかった。

 ギャンブルの親はその地域のマフィアに上納金を納める代わりにそこで賭け事をするのが許されるし、もめ事が起きればマフィアが処理してくれる。余所者があまりにも勝ちすぎればその街のマフィアが絡んでくる以上、揉め事はごめんだ。


「マフィアって言っても馬鹿な人間の集まりでしょう。簡単に蹴散らせるわよ」


「簡単にって……まあヴェルはそうだよね。」

 ラトムは匙を投げた。

 まあ、どちらにしてもマフィアに関わらないからどうでも良い内容だからだ。


「何、その言い方。まるで私が非常識みたいな感じじゃない?」

 ヴェルサルユスは頬を膨らませながらラトムに尋ねる。

「まさか、ヴェルから常識と言う言葉が出てくるなんて……明日は雨かな」


 ラトムの憎まれ口にヴェルサルユスは冷たい笑みを浮かべて

「それはどう言う意味かしら?」

 と尋ねる。

 しかし、ラトムもヴェルサルユスが本気で怒っていない事は解っており

「そのままの意味だけど」

 と彼は軽く返した。


「後で覚えておきなさいよ」

 ラトムの答えを聞いたヴェルサルユスが頬を膨らませて不満そうに返したのである。



 ラトムとヴェルサルユスがいつも通り、軽く言いあっていたが、夕焼けに染まった空を見たラトムが

「そろそろ夜営準備しないとね」

 と呟き、ヴェルサルユスもしぶしぶ頷く。

「たまにはベッドで寝たいのだけど、まあ仕方ないわ……ね」



 10分ぐらい歩いた後、ラトム達は広い空き地を見つけた。


 ヴェルサルユスの傍らで、ラトムは背中の荷物を下ろした。


 魔獣等を寄せ付けない結界をヴェルサルユスが張り、ラトムは二人分の食料と料理道具などを取り出す。


 ラトムは道中集めた枯れ木で焚き火の準備をした後、座って肉の塊を棒を突き刺していると、ヴェルサルユスが隣に座って

「今日の夕飯は何?」

 と尋ねてきた。


「2日前に買ったテイラ(魔獣)の焼肉と野菜サラダだけど良いかな?」


「別に構わないわよ。」


 ヴェルサルユスの答えを聞いたラトムは手際よく肉を棒で刺していく。

 その間、ヴェルサルユスはじっとラトムの横顔を見つめていた。


「ヴェル、頼みがあるんだけど」

 肉の加工が全て終わったラトムは隣に座るヴェルサルユスに目を向けるとすでに彼女は左手を枯れ木の方を向けていた。

 そして、ヴェルサルユスの左手から炎が出て枯れ木が燃える。


「これで良いんでしょ」

 ヴェルサルユスは自信満々にラトムを見ながら言う。

「まあ……そうなんだけど良く解ったね?」

 ラトムが驚きながら言うとヴェルサルユスが苦笑を浮かべながら

「それなりにラトムと一緒にキャンプに出ているし……それに」

 と答えていたが、途中で彼女の白い頬が少し赤くなった。


「それに?……ちょっとヴェル、顔が赤くない?熱でもあるのか」

 ラトムがそう言いながらヴェルサルユスのおでこに手を当てる。

「熱はなさそうだけど……と言っても龍族の体温は解らないんだけどね」


「何それ、私のおでこに手を当てる必要なかったじゃない。」

 ヴェルサルユスは呆れたように言った後、顔を赤くしながら

「でも、心配してくれてありがとう」

 と恥ずかしそうに続けた。


「やっぱり明日雨でも降るんじゃない?」

 ラトムが肉を火で炙りながら冗談を口にする。


「いきなり何よ!?」

 ヴェルサルユスは頬を膨らませる。


「いや……ヴェルが俺に礼を言う事なんてまずないじゃん。」


「あんた、私を馬鹿にしてるでしょう!?そうなんでしょう!?」


「いやいや。俺ごときがヴェルサルユス様を馬鹿に出来る訳ないじゃん。」


「冗談でもヴェルサルユス様と言うのは辞めて。本気でイラっとするから」

 ラトムが苦笑を浮かべて

「普段からヴェルサルユス様と言われてたじゃん?」

 と尋ねると

「別にゴミどもから何と呼ばれようがさほど気にならないけど、ラトムは別よ」

 とヴェルサルユスは普通に答える。


「ゴミどもって……」

 ラトムは苦笑しながら

「と言う事は俺を特別視してくれてるの?」

 半分以上冗談で尋ねると

「当たり前じゃない。そうじゃなければこの私があなたの騎竜になる訳ないでしょう」

 とヴェルサルユスは真剣な声で答えた。


 数十分後に出来上がった料理をたった数分で残さずヴェルサルユスは平らげ、彼女は満足げに感想を述べた。

「美味しかったわ、ラトム。竜騎士なんかならずに料理人になれば良いのに。私が雇ってあげても良いわよ」


「いやいや。これ、誰でも作れるようなメニューだからね。」


「それでも美味しかったわよ。今まで雇っていたどの料理人と比べてもね。似たような事昔言った事あるような気がするけど」


「言ってたな。俺が軍に入る前、俺の部屋にヴェルが入り浸っていた時だろう。懐かしいな」


「仕方ないじゃない。あの蜂蜜パン美味しかったんだから」


「蜂蜜はヴェルのだったし、あんなの作ってるうちに入らないんだけどね」


 ラトムは話をしながらヴェルサルユスと自分の食器を手際よく片付けていった。





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アルファポリス様でも先行公開中

https://www.alphapolis.co.jp/novel/839347574/216934439

 

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