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ワトソン少佐

突然その男性は、ライフル銃を持ったロボット兵2体と共に、4つの通路が交差する天井の真下に現れた。


「あなたが、クレーマーさん?」


その男性はそう言うと、にこやかな笑顔を向けながら俺の方に歩いてきた。

特徴のあるヘッドセットをしているので、どうやら宇宙人らしい……


その宇宙人らしき男性は、怒りに満ちた表情をずっと俺に向けている隣の宇宙人の女性に俺には理解できない宇宙の言語で何事か話しかけた。

すると宇宙人の女性は急いで自分の頭に右手を持っていきヘッドセットのスイッチらしきものを入れたあと客の方に向き直り言った。


「皆様、これは大変失礼いたしました……ではこの火星探査車に、お2人ずつお乗りになりお好きな通路から中へお入りください……スペースコロニーランド内の地図やご質問などは火星探査車に搭載されているAIが画面を通してお答えいたします」


それを聞いて俺たち以外の客が先に火星探査車に乗って次々と各通路の方へ向かって行き、あとには俺たちだけが残った。


するとその男性は言った。

「私はこのスペースコロニーランド代表のワトソン少佐です……ああ、私の惑星での本当の名前の発音は難しいので地球ではワトソンという仮の名前にしてるのですがね……ところであなたの名前は?」


「俺の名前は平瑠鬼です」


「そうですか……さっそくですが平瑠鬼さん……あなたを逮捕します......尚このスペースコロニーランドは治外法権なので異論は認めません」


「えっ、何の罪でですか?」


「この女性に暴言、暴行を加えたので、威力業務妨害と暴行罪ですね」


「暴行なんてしてねーよ!!!!!!!!」


「それはおかしいですね……先程、私の忠実な部下から、そう報告を受けたのですが」


ワトソン少佐は、後ろに控えている2体のロボット兵に向かって小さく手をあげ人差し指でゆっくり俺をさすと、2体のロボット兵が俺に近づいてきた。


その瞬間、俺のガーディアン・スピリッツ平清盛が俺の背後から現れた。

2体のロボット兵に向かって攻撃態勢をとっている。


「清盛、やめろ!!」


俺が清盛にそう言うとワトソン少佐はいぶかしげな表情で言った。


「清盛? 清盛とは誰のことですか?」


「いいだろ! それより、ここにいる俺以外のみんなは罪を犯してないんだな」


「ええ、逮捕するのは、あなただけです」


俺はみんなの方に向き直り言った。

「俺は大丈夫だから、みんなは先に行って遊んでて……たぶん何かの間違いだろうし、すぐ合流できると思うから」


すると突然みんなの前に2体のロボット兵が近寄り、半ば強引に不安な表情をこちらに向けているみんなをゴーカートに乗せ、次々と北側の通路、スペースコロニー城の方へ向かってゴーカートを発進させた。


だが璃乃だけは、どんなに2体のロボット兵にうながされてもゴーカートには乗らず、みんなを落ち着かせながら優しい表情で見送ったあと俺の手を握り言った。


「私は瑠鬼と行くわ……」


それを聞いたワトソン少佐は璃乃に言った。


「いえ、あなたも他の皆さんと行ってください」


「いやよ! 私は瑠鬼から離れない!」


「やれやれ……逆らうならあなたも逮捕しますよ」


そう言うとワトソン少佐は璃乃に歩み寄り璃乃の腕をつかもうとした。


それを見た俺はすぐに璃乃を後ろにワトソン少佐の前に立ちはだかると言った。


「璃乃に触るな!!!!!!!!」


俺とワトソン少佐はそのまま睨み合った……



ホテルがある南側の通路から牛車ぎっしゃが俺たちのそばまでやってきた。


「一体何の騒ぎですか! ワトソン少佐」


突然その牛車ぎっしゃの中から声がしたかと思うと藤原先輩が顔を出し地面に降りたった。

藤原先輩に続き六波羅先輩、そして九条さんも牛車から降りてきた。


すると俺から視線を外し牛車ぎっしゃの方を向いたワトソン少佐は少し驚いた様子で藤原先輩に言った。


「ああ、これは誰かと思いきや藤原総理のお嬢様ではないですか……どうしてこちらに?」


「ワトソン少佐、今日私はこのタイムマシンを地球大使......いえ王女様から受け取りに来たのです......それより、その2人は私の大事な友人なので、今すぐ解放してくださるかしら」


「ああ、そうでした、忘れていました......今日でしたか......全く王女様の独断の行動にも困ったものです......それはそうと、この平瑠鬼という者は私の部下に暴言と暴行を加えたので解放するわけには......」


「えっ、暴行ですって? 本当に瑠鬼君が? そんなの信じられないわ!」


「では私の部下が嘘を言ったとでも......」


その時、九条宙晴が叫んだ。


「たぶんそれ嘘やと思うでー!!!! だって、カネザネがそう言うとるもん」


その声にみんなが九条宙晴を見ると九条宙晴は指をさしていた。

そして九条宙晴が指をさしている先は、宇宙人の女性の頭の上に、いつの間にか乗っている黒猫だった。


突然、その黒猫が喋った。

「宙晴、何度言ったら分かるんだよ! 九条家の祖である僕には様をつけてっていつも言ってるでしょ」


「ああ、そうやったな……でもカネザネ、普段は可愛い黒猫でも、怒ったら化け猫やん」


「誰が化け猫だよ、もう......」


「とにかくこのカネザネはサイコメトリー能力があって、人や物の記憶が見れるんやで」


すると宇宙人の女の頭の上に乗った黒猫カネザネは言った。

「そう、僕には見えたんだ……この女性は嘘をついているよ、そこの男の人に暴行なんかされてない」


ワトソン少佐は宇宙人の女性の頭の上に乗った黒猫カネザネをまじまじと見ながら言った。

「これは一体どういった趣向ですかな......それでこの猫の言うことを信じて解放しろと? お嬢様は私をからかっておいでなのですか?」


「いえ、私は本気です、そうですか......では私はこのことをおおやけにします......そうすれば国民が黙っていないと思いますが、それでもいいのですか? 」


「はぁ、そう来ましたか、まぁいいでしょう......今回はあなたの顔に免じて逮捕するのはやめておきましょう......では私はこれで」


そう言うとワトソン少佐はロボット兵2体をともない4つの通路が交差する天井の真下までいくと、その次の瞬間にはもうその場から消えていたのであった。



俺は藤原先輩に言った。


「藤原先輩、ありがとうございました」


「いいのよ」


「ところでワトソン少佐たちはどこへ行ったんですか?」


「ああ、ワトソン少佐たちはこのスペースコロニーランド上空の宇宙船へ転送によって戻ったのよ……とにかく瑠鬼君と璃乃さんに、ここであったのは好都合だわ、いろいろ話すことがあるから、すぐにホテルの私の部屋へ来てもらえるかしら」


「は、はい、分かりました......」


俺はそう返事をしたあと、その場に1台残されていたゴーカートに璃乃と乗り込むと、ホテルへ行くため牛車ぎっしゃに乗り込んだ藤原先輩たちのあとについて南側の通路へと向かったのであった......

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