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第8話 日記

こんにちは。第8話です。今回はルガーノがいます。

追記:誤字があったので修正しました。失礼いたしました。

 ルガーノさんに無の神の存在を明かし、無の神に主人公と言われたことを話した。ここが小説の世界かもしれないと言っても、普通は信じない。伝わらないと思った。だから断片的な情報を伝えた。少しずつ、自ら異変に気づいてもらうために。


「………。無の神か。無が有になると言うのが無属性魔法だから、神が存在するのは、あり得ると言えばあり得るのか。」


「信じてくれるんですか?」


「君がそんな嘘を付くタイプじゃないと知っているから。」


 ルガーノさんはその後、本棚の奥から古めかしい本を手に戻ってきた。表紙には日記と書かれていた。


「これは僕の先祖のマクベス・アメジストが残した日記なんだけど、実際はこの人自身が調べた事なんかが書いてある。無の神についても書いてあるかもしれない。」


「それ、私が読んでも大丈夫なんですか?」


「大丈夫じゃなくても僕が許すよ。突然現れた神なんて、神かどうかも怪しい、下手したら世界の外から来た異分子かもしれない。そんなのが居座ってるなんて一大事だろう?」


「そう、ですね。この本に何かヒントがあると良いんですけど。」


 私は日記を開いた。最初は普通の、貴族の日記であったが、少しずつ、妻の異変に気づき始めていった。


“私の妻、リリーの様子がおかしい。彼女はもともと物静かで、刺繍と古典の好きな賢く優しい女性だった。時々領地経営についても助言をくれ、それが革新的で終わりつつあった領地はみるみる活性化されていった。

 それもある時から突然、刺繍も読書もやめ、領地経営の方針を旧式的なものへ変更するよう言ってきた。使用人には優しい奥様と言われていた彼女は鬼と称されるようになり、私の愛した妻はどこにも居なくなってしまった。

 彼女の身に何が起こったのだと、私は居ても立っても居られず、彼女の部屋に無断で入った。すると常軌を逸した日記を発見した。『無の神に主人公だと言われた』と、無の神など神話にさえも登場しない。しかし、変わってしまった時から、彼女は全属性の魔法を使うようになっていた。無の神によるものなら調べていく必要がある。”


“無の神について調べてみようとしたが、神殿の図書館にも王国の図書館にも記述を見つけることはできなかった。妻の暴走は酷くなるばかり。早く情報を掴まなくてはいけない。”


“無の神については載っていなかったが、有の神という記述を見つけることはできた。有の神は何もなかった世界に闇と光を生んだ者だという。この一文のみだが、あの闇の神を生んだ、謂わば世界を生んだ神がこの一文のみで終わっているのはおかしい。最高神として崇められていても良いはずだ。もしや、無の神と有の神は同一の者なのかもしれない。その神が私の妻に手を出した理由がわからない以上、どうしようもない。”


“今日は最悪の目覚めだった。夢にかの無の神が現れた。彼女の邪魔をするなだと?領地民を守る為には、使用人を守る為には、彼女を軟禁するしか方法はなかった。私の作り出した自作の魔法で、やっと彼女を無力化することに成功したというのに。

 命令を聞かなければ制裁を加えると言われても、私はこの愛する地と民を守る義務がある。何が起こっても、私は彼女を解放する気はない。”


 ここで日記は終わっている。ルガーノさんが言うには、マクベスは雷に撃たれ、燃え殻になってしまったと。無の神の制裁を受けてしまったのだろう。あの時、私が反発しても何もなかったのはアイツから“主人公”という役割を付けられたからだ。そうでなければ死んでいた。しかし、アイツは少し妙な事を言っていた。私が“最後”だと。最後の主人公。そうだとしたら、アイツにはもう異世界から人を呼ぶ力は無いのだろう。良い事を知った。

 マクベスの日記でも、リリーは人が変わったようだと記述されていたが、おそらくこれは異世界あるあるの成り代わりというものだろう。アイツが呼ぶ人間は碌でもないな。私も人のことは言えないが。

 しかし、昔からこんなことをしていれば、バタフライエフェクトが起こるのはしょうがない気がする。アビゲイルとペトラが違う行動を取ったのはアイツがかき回しているからだろう。アイツは何がしたい?何を見たいのか。それがわかれば、この世界を壊すことができそうだ。

 いや待て、私のやろうとしている『壊す』という行為は正しいのか?アイツは物語が見たいと言っていた。それなら、最悪の駄作を作るのが最高の結末なのではないか。幸せにとも言っていたが、私が幸せでもなく、大丈夫でもなくなれば、アイツのしたかった事は全部壊される。これが私のやるべきことかもしれない。


「……アガサさん。すごい悪役みたいな笑顔だけど、何か思い付いたのかい?」


「悪くない案を思いつきました。私、不幸せになります。無の神は、ハッピーエンドが大好きみたいなので。」


「え?……え?!それは、どうなんだ…?無理矢理ハッピーエンドにさせられたりするんじゃないかな。」


 ふむ、ルガーノさんの言う通りか。アイツなら無理矢理軌道修正してくるかもしれない。難しい。何かもっと完璧な案はないものだろうか。


「でも、ハッピーエンドを壊すのは一つの手だと思うよ。無の神の思い通りにならない為には、突拍子もないことが起こったほうが良いかも。例えば、トゥルーエンドにいくとか。」


「トゥルーエンド、ですか?」


「そう。トゥルーエンドって必ずしも幸せじゃないだろう?知らなければ幸せだったのにって。知り過ぎた者というのは、幸せとは限らないから。」


「なるほど。確かにそうですね。バッドエンドとハッピーエンドだけが全てじゃない。」


 盲点だった。そうか、トゥルーエンドを目指す。この世界を解き明かし、絶望へと向かう。面白いかもしれない。あの神が見たいのは幸せなエンドっぽいから、丁度良い。


「じゃあ、私達はトゥルーエンドを目指しましょう。それも胸糞の悪いものへ!」


「初めて見るよ、そんな嬉しそうな顔……」


 私ならできるはず、友達からはヴィランの方が向いてると言われたことがある。最高で最悪のエンド(トゥルーエンド)を見せてやろう。

最近出ていないイーサンについて。

ハンナの夫であり、機械回収と特殊清掃の仕事をしています。体力が人一倍ある為、朝はハンナの畑仕事も手伝っています。

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