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第6話 魔法とは

 こんばんは。第6話です。前半が説明調なので読みにくいかもしれません。よろしくお願いします。

 市場での一悶着から三日。私は魔法について勉強していた。一番最初に、魔法の法律の本を読んでみた。魔法省の提示する基本の四か条があり、其の一、人の為に。其の二、倫理を重んじ。其の参、環境に配慮し。其の四、時代に配慮せよ。調べてみると百年前に改正されたきり、そのままにされているようだ。当たり前の事を言っているが、其の四がくせ者な気がしている。時代とは移り行くものだから変えていこうという事なのか、それとも、先進的な魔法は許されないという事なのか。まあ、解釈についてはまた改めて知っていこう。他の憲法等もある様だが、日本とそこまで変わりはない。民法では、選択的夫婦別姓と同性婚があるので、日本より進んでいると見える。

 また、科学に関する法律もある。魔法と科学が両立する事があるのだと、顎をさする。よく言われるロボット工学三原則も書かれている。確かに炭鉱で働くロボットが居たのだから、こういったものがあるのは頷ける。しかし、随分と杜撰な法もいくつかある。それは仕方ない、完璧なものはないのだ。これからの若者が変えていくしかないだろう。私もここで生きるのならば、よく考えなくてはならない。

 法以外には、魔法陣解析学、魔法倫理、神話等も読んでみた。魔法陣解析学は私には早かったようで、何もわからなかった。転移魔法についても載っていたが、ルガーノさんやクラリスが言っていた事以外はわからなかった。魔法倫理は倫理学の魔法版というだけだったので割愛する。

 神話の絵本が一番この世界の事を教えているように感じた。絵本の内容を要約すると、闇が生まれ、闇は光が生まれて初めて自分を理解した。光から炎が生まれ、炎を鎮める水が生まれた。炎と水から土が生まれ、土は草を生んだ。草は揺れて、風が存在することを示したと、魔法の生まれ方と世界がどう創造されていったのか書かれていた。また、魔法には闇、光、炎、水、土、草、風の7つの属性があるとも書かれていた。それぞれの属性を司る神がおり、闇から順に位が高いそうだ。これは、属性差別がありそうで少し怖い。

 さらに、歴史の本も読んでいると四大国についても記載されていた。四大国、東の国ルオメイ、西の国ヘメロガリス、南の国アニカオニカ、北の国アバナント。ヘメロガリスはエメラルドの心臓の舞台だ。王国であり、よくある小説の世界のように、煌びやかなドレスや社交界、貴族制度、政略結婚等もある。アバナントは貴族制度が無くなって百年が経っている。民主政治となっているが、実際はお金のある元貴族が政治を行っており、庶民出の議員は少なく、まだまだ先は長いようだ。


 私が頭を抱えながら本を読んでいるのを心配したルガーノさんから本を取り上げられた。取り上げられてから気づいたが、額に汗を浮かべるほど熱中していたみたいだ。


「根を詰めると後で響くよ。君はここに来てまだ一週間も経っていないんだから、ゆっくり休みなよ。」


「あ、あはは。そうですね、私ずっとここに居る気になってました。」


「それは…良い事、って言っていいのか悩むね。」


 汗を袖で拭い、一息つく。椅子から降りるとふらついてしまった。テーブルに手をつけたので事なきを得たが、やはり私は無理をしていた。ルガーノさんが慌てて水とタオルを持ってきた。


「無理をしては駄目だよ。ほら、一旦横になるんだ。」


 ルガーノさんに抱えられながら、ベッドに横たわる。確かに疲れていたようだ、すぐに眠気に襲われた。私が意識を手放すまでルガーノさんの気配があった。




 次の日、私はルガーノさんに謝罪しつつ、私にも魔法が使えるのか聞いてみた。彼曰く、実際に使わなければわからないらしい。そもそも体の作りがこちらの世界の者と違うならば、魔力が存在しない。また、魔力がどれほどあるのか数値で見るには、専用の機械が必要だと言う。


「こればかりはしょうがない。ただ、どの属性の魔法が使えるのか試してみるのは良いと思うよ。光が使えるなら魔物退治ができるし、水か闇なら治療法を身につけることができる。他にも土なら錬金術師になることも可能だ、草なら魔法薬師になれるし、炎なら鍛冶屋に弟子入りもできるし、風なら精霊師になることもできる。」


 不憫な属性は一つもないのが、この世界の良いところかもしれない。私としては、水か土が使えてほしいものだ。一通り呪文を教わったので、広場で実践する事になった。心の中で詠唱してみる。が、どれも反応がない。やはり体の作りが違うのかもしれない。それとも私のやり方が間違っているのか。ルガーノさんに助けを求めた。


「どれも反応がないんですが、どうすれば……」


「え、君、詠唱してないだろう。そりゃ出るものも出ないよ。」


 ルガーノさんの言葉に驚く。彼は瞳の色を変える時、無詠唱だった。てっきり無詠唱で行えるものだと思っていた。


「ルガーノさんは無詠唱で魔法が使えるじゃないですか。何で使えるんですか?」


「それは……僕の家系魔法だからだよ。それ以外は全て詠唱しないと使えないよ。」


 家系魔法、そんなものもあるのか。魔法とは奥深い。ルガーノさんの顔に影が落ちる。聞いてはいけない事だったか。


「それじゃあ、改めて使ってみますね。“光よ、雷を放て”」


 何も反応がないと、こんなにもいたたまれない気持ちになるのか。ルガーノさんは平然としているが、私としてはとても恥ずかしい。他の呪文も試してみたが何も反応がなかった。これではただの辱めではないか。顔を真っ赤に染めている私を見て肩を震わせているルガーノさんを睨めば、違う魔法を教えてくれた。


「これは使える者が殆どいないから教えなかったんだけど、唱えてみてほしい。頭の中に何かをイメージしてから、“無よ、これを有に変えよ”。唱えてみて?」


 私は川にある何でもない平たい石を想像してから、呪文を詠唱した。


「“無よ、これを有に変えよ”」


 ゴトッと音がする。私がイメージした通りの石が目の前に落ちてきた。思わず石をじっと見つめると、それはやがて消えてしまった。ルガーノさんを見ると、腕を組んで考えているようだった。


「これは、なかなかだね。……こちらの世界でもイレギュラーはあってね。時々、無属性の人が生まれるんだ。それと同じように、君には属性が無い。」


「それって、良い事なんですか?悪い事なんですか?」


「他人に知られると厄介だ。君は、使えない事にした方が安全だね。」


 異世界あるあるが私の身に降り掛かるとは。有事の際以外は使わないようにと念を押された。これの使い道がいまいち思い付かないが、悪い人達はホイホイ思い付くのだろう。無口は美徳だと誰かが言っていたので、忠告通り黙っていよう。


「ルガーノさんは何の属性ですか?」


「ん?僕は、闇だよ。影縫いとか戦いで使う魔法が得意かな。治療法は苦手であまり使わない。」


「へえ、魔法も色々あるんですね。勉強になります。」


「……君も家系魔法があるかもしれないね。いつか探してみようか。」


「そうですね。使えるものは多い方が良いですから。」


 ふと、クラリスの魔法を思い出す。


“エメラルドよ、数多の泣き叫ぶものを包め!”


 その日、魔物退治をしていた者は言う。緑の祝福が我々を包み、強くなれた、大地が味方し、心には震えるほど勇気が満ちた、と。

 実は、クラリスの魔法など元の小説内では出てきていません。そもそも小説では魔法の概念はありません。

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