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第3話 いただきます。

こんばんは。第3話です。今回は申し訳程度の恋愛要素が入っています。

 家に戻ると、ルガーノさんがkaiに電気をつけるように言った。私がどうしようかと思って立ち尽くしていると、コートを脱がしてくれた。コートを掛けた後、部屋に案内された。


「ここ、一応掃除はしてある。そのまま使って問題ないはずだよ。」


 床は木目調、壁紙は白く、シングルベッドと滑らかな木の机と椅子、小さな棚もある。充分だ。働いていた時の私の部屋よりよっぽど生活感がある。


「……素敵な部屋ですね。とても嬉しいです!ありがとうございます。」


 ルガーノさんにお礼を言うと、頬を少し染めて目を細めた。イケメンは微笑みも可愛いのだな。心臓に悪い。他にもリビング、キッチン、ルガーノさんの部屋、トイレやお風呂場も案内してもらった。

 洗面所も案内してもらったが、私は鏡に映ったものに驚愕した。思わず顔に触れてしまった。私の黒かった瞳は、綺麗なエメラルドグリーンに変わっていた。鏡の前で固まっている私を不思議そうにルガーノさんが見ている。


「あの…!私の目が、黒かったのに緑色になってしまっているんですけど!ど、どう言うこと何でしょう?」


「ん?黒だったのかい?……そうだな、転移中に何か不具合があったみたいだね。転移する時、一度粒子になるから、」


「えっ、粒子になるんですか?!」


 何と言う事実だ。衝撃が強すぎて頭が追いつかない。つまり私は粒子から再構築される時に何かが起こったと。


「転移について本当に知らないんだね。そう、簡単に説明すると粒子になって転送される。転送先で体が再構築されて転移が完了する。その魔法陣の計算式は未だに研究されていて、無機物を使っての実験も行われているんだ。昔は奴隷身分の人が犠牲になることもあったけど、今は身分制度は無くなったからね。」


 急に饒舌になったルガーノさんに戸惑いながらも、瞳をもう一度確認する。何回確認しても緑色だ。異世界転移だと黒髪黒目が美しいとか言われていた。私も自分の目を気に入っていたが、戻す為に転移をもう一度する方が怖い。よく見れば地中海のようで綺麗だ。


「君は戸惑っているかもしれないけど……その緑、美しいと思うよ。とても素敵だ。」


 鏡越しに目が合う。まるで洋画のような時間が流れる。肩に手が添えられて、顔が近い。イケメンはやる事が全部心臓に良くない。


「えっと、ありがとうございます……」


 ニコニコのルガーノさんを見るに、もしかして緑色の瞳が好きなだけなのでは?それは、そうだな。初めて会った人間を好きになる訳がないか。勘違いしそうになった。急にチベットスナギツネのような表情を浮かべる私に微笑みかけるルガーノさんは、紳士か女たらしだろう。


「さて、よければ何か食べに行くかい?デリバリーもあるけれど。」


「それなら、よければ私作りますよ。材料さえあれば。」


「本当?折角だからお言葉に甘えようかな。」


「はい!お任せください!」


 私は冷蔵庫を開き中を確認した。卵と玉ねぎ、ジャガイモ、ベーコン、何故かパプリカがある。基本的な調味料もあるから、スパニッシュオムレツが作れる。昔、母さんに教わったスパニッシュオムレツを作った。今思えば、料理をするのは久しぶりだ。仕事をしていた時は料理なんてできなくて、スーパーも閉まってしまうから、コンビニの安くなった物を適当に口に入れていた。何を食べていたのかさえ覚えていない。あの頃に比べたら随分と人間的になったものだ。


「いい香りだね。これは卵焼き?」


「えぇっと、具沢山卵焼きです。」


 スペインが無いことがわかってしまったので、スパニッシュオムレツとは言えなかった。ルガーノさんがウキウキしながらパンを用意してくれている。残りの野菜でスープも作ろう。有り合わせの物だが、異世界に飛ばされて初の温かいご飯。大事に食べよう。テーブルに料理を並べて、ルガーノさんも椅子に腰掛けた。


「……いただきます。」


「イタダキマス?」


 ん?そうか、ここの人はこういった挨拶はしないのかもしれない。だからカタコトなのだろう。


「うん、食べ物を食べられる事に感謝するんだ。食べ物と、作ってくれた農家さんや畜産家さんにいただきますねって。」


「ふーん、面白い文化だね。僕も真似してみよう……いただきます。」


「へへ、召し上がれ。」


 母が作ったスパニッシュオムレツほど美味しくはなかったが、ルガーノさんの瞳が輝いているから良しとしよう。スープもお気に召したようで、ふむ、と感心していた。その姿がくすぐったくて、思わず口元が緩む。それに気づいた彼が軽く咳払いをして、また面白くなってしまった。異世界初めての食事は幸せな記憶として私に刻まれた。





 声が聞こえる。男性のような女性のような、子どものような老人のような。気持ちが悪い。やめて、私に話しかけないで、何処かに行って!


『貴方は………なの。だから………。お願い……』


 思わずベッドから飛び起きる。ここは何処……そうだ、私はルガーノさんの家に来て、夕飯を一緒に食べて、お風呂に入って、ちゃんと寝た。今は何時だろうか。窓から少しずつ陽の光が差してくる。おそらく六時くらいだろう。そのまま寝る気にもならず、私は洗面所へ向かった。顔を洗い、ふと鏡を見ると、そこには私に似た一人の女性が映っていた。

ルガーノは、普段眼鏡を掛けて過ごしています。しかし、格好つけたがりなところがある為、アガサの前ではかけていません。

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