87.S級冒険者は魔王と戦う
さて、天与の原石に三人いるSランク冒険者のひとり、エリアルはというと……。
「ん? どうしたおまえら?」
「エリアルさん! すごい新人が現れたんすよぉ!」
ギルメンが受付を指さしながら言う。
リーフのそばにマーキュリーと、そして、美しい白髪の聖女がいた。
「リーフ君」
「あ! エリアルさん! 最近見なかったですけど、どこいってたんです?」
「自主練」
リーフはギルマスのヘンリエッタからの依頼で、ギルメン達を鍛えていた。
ある程度強くなった後は、おのおの個人練習(というかギブアップしていた皆)となった。
エリアルはその後、何度もダンジョンに潜って、自らの技を鍛えていたのである。
「ニィナ。この子は新人かい?」
「はい! デルカさんです! すごいんですよぉ、リーフ君の次に!」
デルカという少女ががっくりと肩を落としながら「次にて……」とつぶやく。いやでも、リーフの次にということは、実質ギルドトップということになる。(※リーフは規格外だから)
「…………へえ」
力不足を嘆いてるところに、大型新人の出現。このギルドにまた新しいSランクが生まれるかもしれない。
ギルドとしては、いいことだろう。そう、これはいいことなんだ。Sランクが増えるということは、ギルドの価値があがるということだから。
「あ、そうだ! エリアルさん、次に戦闘力試験、エルアルさんにお願いしてもいいですか?」
「え、わ、私が……かい?」
大型新人の登場に、若干の焦りを覚えいてるところに、ニィナからの提案が来た。
正直……気にはなる。どれくらい【やる】やつなのか、試したい。
それに今の自分は、訓練で強くなった……はず。その力もまた試したかった。
「……私でよければ」
「はい、じゃあ二人とも、訓練場へ移動いましょう!」
★
……気づいたら、エリアルは空を見上げていた。
「な、んだ……今のは……?」
訓練場の床に転がりながら、エリアルは勝負の一部始終を思い出す。
デルカ(※魔王)と対峙したエリアル。
彼女の獲物は、杖だった。
どうやら治癒術や魔法は使えないらしく、前に出て戦うという。
彼女は長い杖を手に持って構えていた。
一方でエリアルは剣。体格差もあるし、これなら勝てる。
そう思っていたが、勝負が始まった瞬間、彼女は恐るべき早さで接近してきた。
巧みな杖裁きで武器をまず弾き飛ばされ、足払いをされて、頭を杖で殴打された。
結果、簡単にエリアルは敗北したのである。
「勝ったっす!」
「おお、すごいねデルカさん!」
リーフや仲間達が新人を褒める。Sランクのエリアルに、真っ向から勝負を挑んで勝ったのだ。
(……なんて、強いんだ。あんな華奢なのに!)
さてエリアルは一つ誤解している。
デルカはただの一般人では無い、魔王だ。
活躍の場が皆無で、戦う相手が化け物(アーサー達)or化け物だから、弱く見える。
だが実際には魔族のトップに君臨する猛者なのだ。
Sランクだろうと、たかが人間ごときに後れを取るはずが無い。得意の魔法が無くとも、素の力がそもそも違うのだ。
……しかしエリアルは、デルカの正体を知らない。それゆえに、大いに落ち込んだ。
デルカもまた、エリアルと同じ女であるはずなのに、自分は、鍛えてきたはずなのに。
失意の中でエリアルはその場から出て行く。
遺されたデルカというと……。
「デルカさん! 俺とやってみませんか!」
「ぎえぴいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
あまりに一瞬で勝負が付いたからということで、リーフとの再戦が行われた。
だが結果はリーフに瞬殺されたのだった。
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