79.魔王ヴァンデスデルカ
リーフが王都でやりたい放題してる、一方その頃。
辺境の地、デッドエンド村にて。
マントを身につけた美青年が、村を訪れた。
「ここが……英雄の村、か」
美青年の後ろには、数多くの魔族たちが集まっている。
彼ら魔族は、青年の前に跪いていた。
「魔王ヴァンデスデルカ様、ご指示を」
ヴァンデスデルカ。それは、現在の世界において、魔族たちの王とされる人物。
俗に言う……魔王であった。
アメジストの長い髪に、すらりと長い手足、甘いマスク。
なるほど、戯曲に出てくる英雄のようであった。
しかし彼は黒いマントを羽織り、背中からはコウモリのような翼をはやしている。
ヴァンデスデルカは魔族のなかでも、最強とほまれだかい、吸血鬼の血筋を引いている。
「ヴァンデスデルカ様! 英雄を滅ぼしにきたのですね!」「目障りな人間どもを駆逐するために!」「まずはここにいる、年老いた英雄どもをぶち殺そうっていうんですね、ヴァンデスデルカさまぁ!」
ふっ……と魔王は笑う。
「貴様らはそこで待機だ」
「なんと!」「我らもお供いたします!」「英雄どもを皆殺しにするのでしょう!」「なぜお一人で!?」
ぎん、と魔王が部下どもをにらみつける。
吹き飛んでいく部下たちを、ふん……と鼻を鳴らし、見下ろしながら言う。
「貴様らがいては足手まといだ」
「「「おお! さすが魔王様!!!!!」」」
ヴァンデスデルカは彼らを置いて、ひとり、英雄たちの住まう村の中に入る。
彼は何度か後ろを振り返り、【部下がついてきていないこと】を確かめる。
やがて……。
「む?」「なんだ貴様は……」
村で(比較的)若い男たちが、入り口を守っていた。
村の警備を担当する若者(※65歳)。
そこに現れし、強大な魔物の王。
古今東西、どんな物語においても、ありふれている導入だ。
平和でのどかな村に現れる、強大な悪。
それが村を、そして村人たちを蹂躙し、地図上から村が一つ消える。
そう……。
魔王ヴァンデスデルカは……。
「チィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッス!!!!」
腰を直角に曲げて、頭を深々と下げる。
「おひさしぶりっす! 英雄村の皆さん! ヴァンデスデルカっす!」
まるで怖い先輩に対して、頭を下げる舎弟のように、魔王ヴァンデスデルカは、そういったのだ。
「おお、ヴァンじゃあねえか」
「ひさしぶりじゃあのぉ?」
村の番人たちが、魔王にからんでいく。
がしっ、と肩を抱いてニヤニヤ笑いをする。
「ん? 今日はどれくらい金持ってるんじゃあ?」
「い、いや……金ないっすよぉ! 先輩がたぁ」
びくびく、と魔王がおびえきった表情で、両方の先輩たちに萎縮した態度を示す。
「ああん? じゃあジャンプしてみろ!」
「は、はいっす!」
ぴょんぴょん、と魔王がジャンプする。じゃらじゃら、と身につけていた宝石やネックレスが音を立てた。
「あるじゃねえか、てめえ!」「罰として隠し持ってる財宝ぼっしゅぅううううと!」
「そ、そんなぁ……!?」
「「なんだ、文句あんの?」」
「無いっす! さーせんっす!!!!!」
……先ほどまでの威厳はどこへやら。
今の網は、完全に田舎のヤンキーにからまれる、陰キャ男であった。
「こらこら、それくらいにせんか」
「「村長……!」」
この村の村長にして、リーフの恩人のひとり、アーサーが現れる。
魔王ヴァンデスデルカは、アーサーの前に立つ。
後ろで手を組んで、ばっ! と頭を下げる魔王。
「お疲れ様です、兄貴!!!!! このヴァンデスデルカ、ただいま推参しましたっす!!!!!!」
……デッドエンド村。世界最高の英雄たちが集まる村。
そんなものが存在する世界観で、魔王ごときが、世界の覇権をとれるわけがない。
そう……魔王よりも、もっと恐ろしい化け物どもが、田舎でたむろしているのだから。
【★読者の皆様へ お願いがあります】
ブクマ、評価はモチベーション維持向上につながります!
現時点でも構いませんので、
ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂けると嬉しいです!
お好きな★を入れてください!
よろしくお願いします!