77.猫よけの薬で魔族ワンパン
リーフによる地獄のしごきが開始されてから、しばらく経ったある日のこと。
ひとりの魔族が王都近くの森まで来ていた。
それはともすれば、巨大な蜘蛛。二足歩行する人間的なフォルムをのこした、異形なる存在。
「きしし、あの犬っころのやつ、作戦失敗しやがってよぉ」
犬とは、こないだ王都に襲撃をかけた魔族のこと。
このクモ男の同僚であった。
「バカ犬が失敗したせいで、あのお方は大層ご立腹だ。きしっ! 犬のせいでこっちの評価まで下げられちゃ困るきし」
クモ男の近くに、魔物が近寄ってくる。
それはAランクモンスターの、赤熊だ。
非常に獰猛、かつ、その牙に噛まれると爆発を起こす。
かなり危険視されてるモンスター。
赤熊がクモ男に襲い掛かろうとする。
だが次の瞬間、その肉体がバラバラになったのだ。
「きし?なんだぁこいつ。おれさまを殺そうとしたのか?きし!あほなやつぅ」
そう、クモ男は敵に気付いてすらいなかったのだ。
攻撃の意思を持たず、攻撃すらせず、Aランクの敵を倒した。
異次元の存在。
これが、真なる魔の一族。
「さて、あのお方が癇癪を起こす前に、倒すとするかねぇ。人類最強、リーフとかいうガキを」
クモ男が一歩、前に踏み出したその瞬間。
ずるっ、と足を滑らせた。
「きし?なんだぁ?泥で足を取られたのかぁ?」
だが、彼は気付いた。彼の足が、消え去ってることに。
「はぁ!?な、なんで!? 何が起きてる!?ぎしぃ!?」
王都に向かって一歩踏み出した。
その土地に魔のものが触れた。その瞬間に、発動したのである。
リーフの作った、魔除けの薬、【忌避剤】が。
忌避剤。それは、俗に言う猫よけの薬だ。猫が嫌がる匂いをだすことで、猫を遠ざけるそれ。
しかしリーフの作ったこの特別な忌避剤は、魔を遠ざける効果がある。
が、彼の作ったそれは、効果がありすぎて、魔のものが触れた瞬間消滅するという、恐るべき兵器へと変貌していたのだ。
「し、しもべたちよぉ!あのお方に知らせるのダァ!」
クモ男が、森の中にすまうクモたちに命じる。
「人間のなかに、化け物がいるぞぉ!」
……それが彼の末期の言葉になった。リーフの作った忌避剤で、魔族は完全に消滅したのだった。
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