73.魔力量を増やします!
天与の原石のギルメンの皆さんを、恐れ多くも鍛えている俺、リーフ。
強走薬によるトレーニングが一段落ついた後、次のステップに進む。
俺たちがいるのは、王都から近い場所に発生したダンジョン。
そのボス部屋にて。
「次は魔力量を増やします!」
本当ならボスがいる部屋。
俺はボスを半殺しにして、薬で仮死状態にしている。
そのため、ボスは襲ってこない!
マーキュリーさんを含めたギルメンのみなさんが、ぐったりとへたり込んでいる。
「少し……休憩したいのだが……」
「なんで……私まで……」
エリアルさんとマーキュリーさんが、ぜえぜえと肩で息をしている。
「そんなときには、はい、完全回復薬!」
俺は緑の精霊たちの力を使い、ギルメンみんなに薬を配ってもらう。
エリアルさんがぐったりしながら、精霊から薬を受け取る。
「なあ……マーキュリー。これって……ものすごいアイテムじゃなかったのか?」
「ええ、そうよ……エリアル。ものすごい高価な薬よ」
「だよなぁ……こんな……たくさん飲んでたらバグってきそうだ……」
「わかってくれる……」
あ、あれあれ?
元気になるお薬なのに、二人ともなんだかぐったりしてるぞ。
どうしたんだろう……。
「もっと飲みます?」
「いらんわい! で、魔力を伸ばす修行って何するの?」
みんなが俺に注目する。
「魔力を伸ばすためには、簡単です、魔力を使い切れば良いんです!」
「使い切る……だって?」
エリアルさんの問いかけに俺がうなずく。
マーキュリーさんが首をかしげる。
「魔力を使い切るって、文字通り体内に保有してる魔力を全部使うってこと?」
「そうです。そして、魔力を全回復させるんです。完全回復薬で!」
するとあらふしぎ、魔力量が使い切る前より伸びているのだ!
「なるほど……ただ魔力を使い切るんじゃなくて、その後に薬で一気に回復させることで、魔力量が増えるのだな」
「で、でも……リーフ君。魔力を使い切るのって、結構、くるわよ。頭痛がすごいの」
わかる。俺もばーちゃんのとこで修行したときに、そうなったから……でも。
「大丈夫!」
「痛みを和らげる薬とかがあるのね」
「やってくうちに痛いのに慣れてきますので!」
「まさかの根性論!?」
青い顔をするマーキュリーさんたち。
「大丈夫ですよ! 完全回復薬飲めば頭痛は一発で治るんで! 繰り返していけば魔力が空になったときの頭痛も、何も感じなくなるんで!」
「そ、それは危険なんじゃないのかい……リーフ君……」
エリアルさんをはじめとした、ギルメン達がおびえているぞ。
「大丈夫! 死んだら俺が蘇生させるので!」
「リーフ君の大丈夫がさっきから全然大丈夫じゃないんだけどぉおおおお!?」
案ずるより言うがやすし!
さっそく訓練開始だ。
「魔力切れを起こすまで魔法を撃ちまくってください」
「魔法職じゃないメンバーはどうするんだい?」
エリアルさんの言うことはもっとも。
でも、魔法職じゃなくても魔力を消費する方法がある。
「魔力撃を使ってください」
「魔力撃……?」
「体の中の魔力を、手のひらから放出させる技術よ」
マーキュリーさんがお手本を見せてくれる。
右手を前に掲げる。
魔力がそこへ集中していき、弾丸のように打ち出される。
魔力の弾丸が迷宮の壁にぶつかる。
結構大きな音が出たけど、ひびひとつ入っていなかった。あれれ?
「マーキュリーさん、そんなんじゃいつまで経っても魔力を使い切れないですよ」
「え? 結構な威力で使ったんだけど……」
「いいですか、魔力撃のこつはですね」
俺は壁に手をやる。
「まず魔力をたくさん、手のひらに集めて、それをぎゅっ、と圧縮し、放つ……!」
ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
「ええええええええええええ!? め、迷宮の壁に穴がぁああああああああ!?」
「とまあ、これくらいの穴が開くくらいの一撃を放ってください」
「無理無理無理無理! リーフ君、迷宮の壁って、絶対壊れないようになってるのよ!?」
「あれ? そんなことないですよ。壊れますって」
俺は普通に殴る。
ぼごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!
「ほら、普通に殴っただけで壁に穴が開きましたよ?」
「あんたの普通が普通だったためしあるぅううううううう!?」
まあ、何はともあれ、訓練スタートだ!