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70.弟子入り志願



 貴族の養子になった俺。

 その翌日。俺は所属する冒険者ギルド、天与てんよの原石に来ていた。


「おお! リーフよ、久しぶりじゃな」

「ヘンリエッタさん。ただいま帰りました!」


 このギルドのギルマス、ヘンリエッタ・エイジさん。

 長い銀髪に、黄金の目を持つ女性だ。


「長旅ご苦労なうえに、帰ってきて早々、トラブルに巻き込んでしまってすまなかったの?」

「え、トラブル……?」


 トラブルなんてあっただろうか……。


 はぁ……と付き添いのマーキュリーさんがため息をつく。


「いたでしょ、魔族」

「ああ、あれ」

「魔族をあれ扱いする……リーフ君くらいよ……」

「大丈夫ですか? 疲れたときにはこれ一本!」


 俺は魔法バッグからそれを取りだして渡す。


「そう! 疲れたときには完全回復薬エリクサーね! って、伝説のアイテムを、栄養ドリンク的に渡すんじゃないわよ……!!!!!」

「え、飲まないんです?」

「飲むわよ! ああもう!」


 マーキュリーさんが完全回復薬エリクサーをがぶ飲みする。

 大好きだよね完全回復薬エリクサー

 だからついたくさん作っちゃうんだ。


「して、聞いたぞリーフ。おぬし貴族の位をもらったらしいの」

「まあ、欲しくてもらったんじゃないですけど」

「うむ……じゃが、どうしてじゃ? なぜ、冒険者を続ける?」


 なぜ? なんで……。


「リーフ君、貴族になれば国から定額の給金がもらえるの。結構な額なのよ。わざわざ体を張る冒険者をやる必要ないんじゃないってこと」

「え、なんで? やりますよ、冒険者」


 え? と二人とも驚いている。

 あれぇ、俺、なんか変なこと言ったかなぁ?


「だって俺、冒険者の仕事、大好きですし……! 師匠からもらったこの力で、たくさんの人を助けられる、この仕事が好きなんで」

「リーフよ……うう……なんて良い子なのじゃぁ……」


 え、良い子かな?

 普通のことだと思うんだけど。


 マーキュリーさんが溜息をついて言う。


「まあ、君がそうしたいなら止めないけど。別に、君とバディが続けられるのが、うれしくて言ってるんじゃないけどね!」

「そうですか! でも俺は、マーキュリーさんとバディ組めてて幸せですよ!」

「うが……こ、この……無自覚年上キラーめ……照れちゃうじゃないのよ……」


 ぶつぶつ、とマーキュリーさんが照れたように何かをつぶやいていた。

 なんだろう? ま、いっか!


「俺はこれからも冒険者続けますよ。てゆーか、貴族になったって思ってないんで、俺」


 他の貴族に取り込まれて、利用されたくないから、グラハム公爵家の養子(暫定)になっただけだからね。


「わかったのじゃ。ワタシとしては是非もないのじゃ。これからも頑張っておくれ」

「はい!」


 さて。


「今日呼んだのは他でもない。リーフ、おぬしに頼みたい仕事があるのじゃ」

「仕事……ですか? なんですか?」


 一拍おいて、ヘンリエッタさんが言う。


「ギルメンを、鍛えてやってほしいのじゃ」

「鍛える……? 俺が……?」


 な、なんか急展開だな。俺がギルドの人たちを鍛える?


「いったいなんでですか?」

「先日……魔族の襲撃があったであろう。だが、我らギルメン達ではまるで歯が立たなかった。魔族と力量を比べたら、我らは大人と子供」


 うーん……。

 そうかなぁ……。


「リーフ君、不服そうね」

「え、不服って言うか、どっちも同じくらいじゃないですか?」

「は? いやいや、エリアル負けそうだったじゃん!」


 え?


「どっちも同じくらいですよ。俺から見たら。レベルは一緒くらい」


 びきっ、とマーキュリーさんの額に血管が浮かぶ。


「そりゃねえ! 遥かな高みからすれば! ドングリの背くらべでしょうけどもね!」

「え、何か怒らせること言いました?」

「アアアアアアアアアア! 無自覚うぜぇえええええええええ!」


 し、しまった……怒らせてしまったようだ。反省。

 ヘンリエッタさんが咳払いしていう。


「最近魔族の活動が活発化してきておる。人と街を守る我ら冒険者も、太刀打ちできるようレベルを上げねばならない。そこで、英雄達の住まう村で、鍛えて最強の力を得たおぬしに、鍛えて欲しくて頼んでいるということじゃ」


 なるほど……理屈はわかったけど……。


「え、でも俺、最弱ですけど?」


 アーサーじーちゃんたちと比べたら、ね。

 俺なんてまだまだですよ。


「だぁあからぁあああああああああああああ! あの超次元ジジババたちと比較すんなっつってるでしょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「え、どうして? 現実問題として俺、あの人らに勝ったことないんですが」


 頼むんだったら、直接、じーちゃんたちに頼めば良いのに。

 俺みたいな弱者が、誰かを指導するなんて、おこがましい。


「あの村の英雄達は、現世に混乱を招かぬよう、下界のことがらには不干渉じゃからな」

「ああ、そう言えばそんなこと言ってましたね」

「うむ。打診したときに、こう言っておった。リーフちゃんならやってくれるじゃろうって」


 なるほど……じーちゃんたちから、任された訳か。

 じゃあ……やるっきゃないな。


「わかりました。俺、やります」


 こうして、俺はギルメンたちを鍛えることにしたのだった。



 

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― 新着の感想 ―
[一言] いい加減、主人公の無自覚がうざくなってきた…… ごめんねえ
[気になる点] まあ、君がそう居たいなら止めないけど。 居たい→言いたい ではないでしょうか?
[一言] 安心安定のエリクサーw
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