69.貴族の養子となって土地ももらう
マーキュリーさんの家にやってきた、グラハム公爵婦人ディアンヌさんと、その娘のプリシラさん。
今までいろいろやった結果、貴族の位をくれるっていうんだけど……正直要らない。
「ですがリーフさん、これからとても面倒なことに巻き込まれると思います」
「面倒なこと?」
公爵令嬢プリシラさんが俺に説明してくれる。
「リーフ様がこれ以上ご活躍なさりますと、そろそろ……勘のいい輩は、リーフ様の存在に気づいて、取り込もうとしてくるはずです」
「? そうなの?」
確かに、とマーキュリーさんが神妙な顔でうなずく。
「もう結構な功績を残してるし、何だったら王様から貴族にしてやるって言われるくらい活躍してるものね」
「王もおそらくは、他貴族に取り込まれないよう、リーフ様を貴族にとでも考えたのでしょう」
エイリーンさんがマーキュリーさんに追随するように言う。
なるほど、めんどくさそうだ。
ディアンヌさんがすかさず、こんな提案をしてくる。
「そこでリーフちゃん、提案があるの♡ うちの子にならない?」
「うちの子って?」
「プリシラちゃんと~、結婚するのー♡」
え、ええー!? け、けっこーん!?
「「「ちょっと待ったぁ……!」」」
待ったをかけるのは、マーキュリーさん、エイリーンさん、そしてタイちゃん(人間バージョン)。
「なーにさっそく取り込もうとしてるのよっ?」
「……リーフ様を貴族のいざこざに巻き込まないでください」
「主よ。貴族などやめておけ。吾輩か、そこの二人で我慢しておけ」
うんうん、と三人ともがうなずく。
うーん、でもなぁ……。
「話も聞かないのに断るのはちょっと」
「ありがとうリーフちゃん♡ あのね、プリシラちゃんと結婚すれば、次期グラハム当主になれるわ~。グラハムはこの国の三大貴族の一角を担ってるの。だから下手な貴族は手を出してこないかなーって」
三大貴族……?
「グラハム、カーライル、ペンドラゴ。その三つを合わせて、この国の三大貴族というんですよ」
エイリーンさんが解説してくれた……んだけど。あれ?
「ペンドラゴ? あれ、マーキュリーさんって、名字なんでしたっけ?」
するとマーキュリーさんが、気まずそうにそっぽを向いて言う。
「忘れたZE★」
「そっかぁ」
なんかマーキュリーさんの名字もペンドラゴだった気がするんだけど……。
本人が言いたくないんだったら、追求しないでおこう!
「ま、まあ何にしても、グラハム家に取り込まれるのはいいことかもしれないわ。位も高いし。でもそうすると、貴族の仕事をいずれやらないといけないわよ?」
あ、そうか。
当主になるってことは、家を継がないといけないわけだからな。ううん、それはなぁ。
「じゃあ、養子はどうかしらぁ♡」
「養子、ですか?」
ディアンヌさんが笑顔でうなずく。
「あなたはわたくしと夫の養子になる。つまり、プリシラの義弟になるの。そうすれば、家を継がなくてもいいのよ~」
「なるほど……! それは……いいですね!」
グラハムの家にまもってもらえて、かつ、貴族にならなくて良いなら、最高じゃあないか!
プリシラさんがなんだか不服そう。でもディアンヌさんが耳打ちする。
「……まずは小技で少しずつ崩していくのよぉ。それに、知ってる? 義理の姉弟なら結婚ができるの♡」
「……わかりました、お母様!」
ディアンヌさんがまた微笑みながら俺に言う。
「ということで、どうかしらリーフちゃん♡ 養子にならない?」
「ぜひ! なりましょう!」
まあ、養子だったらいいかなぁ……。だって余計なことに巻き込まれないし。知らない貴族の派閥に入るくらいなら、グラハム家のほうがいいし。
悪い人たちじゃあないからね。
「じゃ、なります、養子」
「ありがとうございます!」
プリシラさんがすごい嬉しそうだ。笑顔で俺の手を取ってくる。
「これから末永くよろしくお願いします♡」
「はい、お姉ちゃん」
「お姉ちゃん……♡ はぁ……良い響きです!」
ということで、貴族の養子になることが決定。
「じゃあ早速グラハムのおうちに帰りましょう!」
「いや、それはちょっと」
「なっ!? どうしてですか!?」
だって……。
「俺、マーキュリーさんとこで厄介になってますし。養子になったのは、あくまで利があるからなんで」
別に家に住まなくても、書類上養子になってればそれでいいわけだし。
「俺、ここでの暮らしが気に入ってるんで」
「そ、そうですかぁ……」
しょぼくれるプリシラお姉ちゃん。でもディアンヌお母さんがポンポンと背中を優しくなでて「小技小技」という。
小技?
「わかりました、リーフちゃん♡ じゃあ今後も継続してマーキュリーちゃんのとこで暮らしてって。たまにで良いから、おうちに来てくれると嬉しいわ♡」
「わかりました」
同じ王都に暮らしてるもんね。行こうと思えばすぐいけるし。
「それと陛下から土地をあげると言われてるんだけども」
「土地?」
「そう~。ヴォツラーク領」
ああ……それ。
うーん……正直要らないんだよなぁ。
「リーフちゃんがうちに入ったことで、領地も名義はグラハムのものになるけど、このまま領地はあなたにあげたいの。がんばったご褒美に」
「でも俺、領地経営なんて……」
そこで、エイリーンさんが手を上げる。
「わたし、やります! 領主代行、やります!」
「そういやエイリーン殿は今まであのオロカンの代行者だったのだよな?」
タイちゃんからの問いかけに、エイリーンさんがうなずく。
「今まで通りなので、ぜひ、私を領主代行に任命していただけたらと!」
「え、じゃあ……お願いします」
よく知ってる人が治めた方が、その土地に住んでいる人も安心だろうし。
エイリーンさんなら、信じて任せられるからね。
こうして俺は、貴族の養子となって、土地を与えられたのだった。
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