67.魔族だろうとワンパン
王都に帰ってきた俺の前に現れたのは、魔族とかいう変な輩。
呪いでギルメンのみんなを苦しめた……悪党である。ふざけるな。許さないぞ!
「ふぇ、ふぇっふぇっふぇ……」
場所は王都の城壁の外。
目の前にはフードをかぶった、大きな狼が二足歩行で立っている。
魔貴族のひとり、男爵級のウルフとかいうやつだ。
「わ、わが呪いを解いたくらいでいい気になるなよ小僧ぅ……わしはまだ、本気を出しておらぬのだからなぁ……!」
「え、なんで敵を前にして本気出さないの? 馬鹿なの?」
「ぐぅ……! こ、この……ま、まあいい。今から貴様ら人間を、このわしが皆殺しにしてやるぅ!」
ぱん、とウルフが柏手を打つ。
「いでよ、我が最強の影の軍勢……!」
しーん……。
え、と。どこ?
「どうだ見覚えがあるだろう?」
「あの……」
「そう! この影の狼たちはわしが生み出してるのだ!」
「ちょっと」
「このわしがいるかぎり無尽蔵に影の化け物達が」
「えっと」
「なんだよ!? わしが今せっかく気持ちよく語ってるのに……!」
こいつの都合なんてどうでもいいんだけど、気になったので聞いてみる。
「どこ、影の軍勢」
「はぁ? 見てわからぬのか! この周りにいる無数の……無数の……むす……」
ウルフが周囲を見渡して困惑している。
出しているはずの影狼がいなくて、小首をかしげていた。
「ふぇえ……わしの影狼たちはぁ~……?」
「いや、知らないんだけど。聞いてるのこっちなんだけど」
ウルフがパンパンと柏手を打つ。だが全然影の軍勢とやらは出てくる気配が無い。
「なぜだ!? 呪術が発動しない!?」
不思議に思ってか、マーキュリーさんが地面に目を向ける。
「! リーフ君、あなたさっき魔除けのお香を固めた丸薬を投げつけたわよね?」
「あ、はい。ついさっき。それがどうしました?」
「その結果……この周辺、破魔の結界が展開してるわ」
「はま? 結界?」
そんなもの作った覚えが無いし、聞き覚えが無い。
「ば、ば、馬鹿なぁ……!? 破魔の結界だと!? それはうしなわれし古代魔法の一つじゃ無いか!? いつの間に!?」
いや、それこっちのセリフなんだけども。
するとエイリーンさんが不思議そうに首をかしげる。
「あれ、リーフ様は昔から破魔の結界を展開なさってましたよね?」
「いやそんなの知らないですけど」
「ほら、奈落の森にお香を焚いて、魔物が来ないように囲っていたでしょう?」
「ああ、それはしてましたけど」
「それが、破魔の結界です」
「ええ!? そうだったんですか!?」
知らずにやってたや……。
タイちゃんが感心したようにうなずきながら言う。
『つまり主はうしなわれし結界術を、無意識に発動させていたと言うことか。さすが主だ』
「ふぇぇえ……しゅごいのぉお……」
ウルフが気色の悪い声を出す。
「破魔の結界は、あらゆる邪気を払うとされている。呪術が発動しないのは当然ね。呪いの力すらも払うんだから」
「ぐ、ぐそおぉ! こうなったら……うぉおおおおおおおおおお!」
ウルフが自分の体を抱く。すると、やつの体からしゅぅうう……と黒い靄があふれ出てきた。
「まずい!あの魔族、呪術を自分にかけてる! 呪いを体に宿すことで、絶大な力を手に入れる反面、バーサーカーのように襲ってくるわ!」
マーキュリーさんからの解説の通り、やつは呪いを自分にかけたことで、体がどんどんと大きく、フォルムも凶悪になっていく。
「ぐぅあああ!」「ぎゃああ!」「なんてプレッシャー!」「ふきとばされるぅ!」
やつの体から伝わる呪いのはどうで、ギルメンたちが宙を舞う。タイちゃんが華麗にキャッチして事なきを得るも、根本的解決にはつながらない。
「リーフ君! あのまま暴走したら王都はおしまいよ! どうする!?」
「どうもこうも……緑の精霊のみんな! 力を貸して!」
俺は薬師の神杖を掲げる。杖先には、さっきみんなの呪いを解いた解呪薬が充填されている。
精霊達のパワーでブーストしたそれを、俺はウルフに投与する。
「ぬぐぅううああああああ! ちからがぬけていくぅううううう……」
しゅうううう……と体から呪いのパワーが消えていき、ウルフの体が縮んでいった。
そして、元通りの体になる。
「「「…………」」」
唖然といた表情をするギルメン+ウルフ。
俺はウルフの元へと向かう。
薬神の宝刀バイシャジャグルを手に、ゆっくりと近づいていく。
するとやばいと思ったのか、ウルフが尻尾巻いて逃げようとする。
「【調剤:麻痺薬】」
ばし! 俺の作った相手を麻痺させる薬が発動し、ウルフがその場に倒れる。
「ひぃいいい! お、おたすけ、おたすけええええええええええ!」
命をこわれても、俺の心が変わることは無い。
こいつは、俺の大事なギルメン……仲間を呪い殺そうとしたのだ。
「容赦するわけ無いだろ! 【調剤:即死毒】!」
宝刀の刃に毒が充填される。
アーサーじーちゃん直伝の剣術で、ウルフの体を一刀両断する。
「ばか……な……魔族の体は……人間の何十倍も……頑丈……なのに……」
バターのようにあっさりと、やつの体は斜めに切断されている。
俺の作った毒薬の効果で、細胞を死滅させたのだ。
「なんと……いう……威力……あのお方に……ほうこく……せね……ば……」
ざふ……と煙になってウルフが消え去る。あとには静寂がただようばかりだ。
「や、やったぞ! リーフ君が、あの化け物を倒してくれた……!」
わっ、と仲間達が歓声を上げて抱きついてきた。
「ありがとうリーフ君!」「やっぱりリーフ君はすごいな!」「さすがです!」
エイリーンさんを含めて、みんながお祝いしてくれる。うれしい!
一方でマーキュリーさんとエリアルさんは神妙な顔つきで、俺が倒した魔族の後をみつめていた。
「……あのお方ってだれかしら?」
「わからない。だが、最近の事件に関連があるかもしれないな」
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