61.旅立ち
【※おしらせ※】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
俺、リーフは故郷である、デッドエンド村に帰ってきていた。
奈落の森での依頼を終えたので、そろそろ帰らないといけない。
けれどこの村を俺が離れると、じーちゃんたちの体調管理をしてくれる薬師がいなくなる。
そこで、俺は後継者としてドクオーナを育てることにした。
紆余曲折有った末に、俺は彼女を、薬師として認めることにしたのだった。
「リーフ……これ……」
俺は森で彼女を助けて、アスクレピオス師匠の家へと帰ってきた。
「うち……ボロボロだったのに……こんな綺麗に……」
「待ってる間、暇だったからね」
俺が最初ここに来たとき、家は荒れ放題だった。
しかし今は、昔俺がいたときのように、綺麗になっている。
ドクオーナが薬師としてすぐに活動できるように、環境を整えていたのである。
「りー……ぐす……うぐ……うぇ、うぇええ……リーフ……ごめんなさぁい……ごめんなさぁい……」
彼女がその場に泣き崩れる。
どうしたんだろうか?
「あ……あだ……あだし、リーフに……迷惑ばっかりかけてて、ひどいことして……ゆるしてくれたのにぃい……こんなに優しくしてくれるなんてぇ……」
「……別に、君のためじゃないよ」
そこは訂正しておく。
「じーちゃんたちの薬、すぐにでも作ってあげなきゃだからさ」
「え? どういうこと?」
「気づかなかったの? 奈落の森の魔物、出てくる数がすごい少なかったでしょ?」
ダンジョンが消えた影響もあるかもしれない。
でもこの森は瘴気がたまりやすく、すぐにモンスターが湧いて出てくる。
「た、たしかに……言われてみると襲ってきたモンスターは豚人だけ……あ」
「……気づいたみたいだね」
俺はさっきから気配を覚えていた。
「もう入ってきなよ」
「さすがリーフちゃん、気づいていたかい」
がらっとドアを開けると、中に入ってきたのは、アーサーじーちゃん達、村の老人達だった。
外でみんなが様子を見ていたのはわかっていたのだ。そして……。
「ありがとう、じーちゃんたち。ドクオーナを守ってくれて」
「!? そ、そうだった、の……」
「うん。森の魔物を間引いてくれてたんだろうね」
呆然とするドクオーナ。
彼女の胸の中には幸運ウサギが収まっている。
アーサーじーちゃんはその様子を見て、小さく微笑んだ。
「勘違いなさるな。リーフちゃんのためなんじゃからな」
「リーフの……?」
「うむ、リーフちゃんがドクオーナの様子を気にしとったからな。わしらはただ、大好きなリーフちゃんの不安を取り除いてあげた、それだけじゃ」
……頼んでないのに、じーちゃんたちは、俺とドクオーナのために……。
「あり」「ありがとうござました!!!!」
俺より先に、ドクオーナがみんなに頭を下げる。
……誰に対しても、絶対に、ありがとうって言わなかった、あの子が。
自ら頭を下げて、感謝の意を示している。……ああ、師匠。どうして師匠は今、この場にいないのでしょうか。見せてあげたいです。あの、姿を。
「今まで……たくさん迷惑かけて、ごめんなさい! 意地悪して、ごめんなさい!」
彼女が心からの謝罪の言葉を述べる。それは、何の欲にもまみれていない、ただ、彼女の心から真にこぼれ落ちた感情。謝罪の気持ち。
アーサーじーちゃんを含めた村の人たちが、目を閉じて、やがて、静かに微笑み返す。
「「「もう、いいよ」」」
……ドクオーナが涙をためて、その場に崩れ落ちる。
俺は近づいてハンカチを渡してあげた。
「良かったじゃん」
「うん……うん……ごめん、ごめんなさいみんな……」
……ふと、懐かしい匂いがした。
ここに、いるはずのない人の匂いに、俺は思わず頭上を見上げる。
……いる。なんで? いや、わからないけど、今はそれどころじゃない。
俺は天目薬壺を使って薬を調合する。
それは……目に見えないものを見えるようにする、お香。
煙はゆらゆらと天上に昇りながら、やがて一つの形を取る。
「え……? お、じい……ちゃん……なん、で……」
俺がやったのは、目に見えないものを見えるようにするだけ。
アスクレピオス師匠の霊魂が、この場にやってきてくれたから、呼び出すことができたに他ならない。
「きっと……ドクオーナの成長を見たかったんだよ。師匠は」
師匠が俺に向かって微笑み、そしてうなずいた。
それが正解だと言わんがばかりだった。
師匠はアーサーじーちゃんを見て頭を下げる。
ほかのみんなにも、同じようにして、自分の意思を示した。
……つまり、孫の不始末を、どうか許してやってくれという意思。
「おじ……いちゃん」
師匠は最後に孫娘を見て、ゆっくりと近づく。
彼女はアスクレピオス師匠を、抱きしめて言う。
「アタシ……薬師になる。おじいちゃんや、リーフみたいな、世界最高の薬師になる……! だから……! もう、来なくても……大丈夫、だから……」
師匠は静かにうなずいて、ふわりと空へと舞う。そのまま窓から出て、よく晴れた空の中に消えた……。
「ありがと……リーフ。見えるようにしてくれて」
「うん。どういたしまして」
ぐしっ、とドクオーナは涙を拭いて、俺を見やる。彼女はもう一人前の薬師の顔をしていた。
「じゃあ……ドクオーナ。みんな、俺もう帰るよ」
師匠の小屋を出ると、そこにはタイちゃんと、そしてマーキュリーさんが待っていた。
後ろを振り返る。だれも、俺を止めようとしない。
「止めても無駄じゃろうて」
「でしょうねえ、おじいさん」
うんうん、とマーリンばーちゃんを含めて、みんながうなずいてる。
「リーフ、いってらっしゃい!」
「「「いってらっしゃーい!」」」
村のみんなが笑顔で、俺を送り出してくれる。
俺はもう振り返らない。
前は、夜逃げ同然でこの村を離れた。みんなに挨拶もできず、村を捨てたんじゃないかって、思われてるんじゃないかって、思っていた。
でも……今度は違う。
俺はみんなを見て、手を上げる。
「いってきます! また……また、帰ってくるから!」
俺は仲間達と合流して歩き出す。
目指す先は王都。そこではまた新しい冒険が俺を待っている。
俺は、本当の意味で、冒険の旅に出発したのだった。
これにて、2章終了です! 3章に続きます!
そして!
本作、書籍化が決定しましたー! ありがとうござます!!!
詳細はまた後日言います! よろしくお願いします!
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