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56.最終試験



 元婚約者のドクオーナを薬師に育て上げることにした。

 一億年ポーションを使うことで、彼女に薬師として必要な知識を(文字通り)叩き込んだ。


「でき……た!」


 アスクレピオス師匠の工房にて。

 ドクオーナが今、ポーションを作成し終えた。


 バディのマーキュリーさんが瓶を手に取って鑑定スキルを使う。


「うん、いいんじゃない。高品質のポーションよ」

「よしっ!!! やったー!」


 鑑定を使わなくても、かなりのクオリティのポーションであることはわかっていた。

 マーキュリーさんは感心したようにうなずく。


「すごいわ、最初はあんなゴミみたいなポーションしか作れなかったのに。リーフ君のあの訓練のおかげね」


 まあ元々素質はあったんだよね。腐っても治癒の神の孫娘だし。

 でも……。


「まだまだだね」

「そんな! どうして!?」


 俺はドクオーナのポーションを手に取って、彼女に突きつける。


「これ……誰のために作ったもの?」

「だれ……って、それは、あんたに認めてもらうタメに作ったんだけど……」


 ああ、駄目だ。

 全然わかってない。


「不合格」

「そんな……! ちゃんとした薬でしょ! 作れるようになってるじゃないの! あぐぅ!」


 奴隷の首輪が発動して、その場にへたり込むドクオーナ。

 俺に逆らったから発動したのだ。


「確かに前と比べて知識はついたし、もともとの素質があったおかげで、クオリティの高い薬は作れるようになった……けど、おまえはまだ、大切な物を身につけていない」

「大切な物……?」

「ああ。薬師をしていく上で、絶対に身につけなきゃいけないこと。それをわかってないんじゃ、まだ一人前と認めるわけにはいかないな」


 ドクオーナの薬には決定的に足りてないものがある。

 それは……人に言われて身につく物じゃあない。


 気づかなかったら、一生気づかないままだ。

 ……ここは、試してみるか。


「ドクオーナ。君を試験する」

「し、試験……?」

「うん。これから奈落の森(アビス・ウッド)に潜ってもらう。一人で」

「は、はぁあ……!? 森に一人!? 無理無理! あぐぅう……」


 奴隷の首輪が発動してその場にへたり込むドクオーナ。

 厳しいことを強いるようだけど、それくらいのことしないと、彼女はこの村にふさわしい薬師にはなれない。


「これは最終テストだよ。今回学んだ知識と、自分の持っている技術を使って、一日奈落の森(アビス・ウッド)で生き残る。それができれば……合格」

「……できなかったら?」

「不合格。俺はおまえを許さない」


 俺が許さないと、多分この先もずっと、彼女はこの村で居場所を失う。

 彼女は生まれも育ちもこの村だし、かなりわがままだ。


 村の外で暮らしていけるとは、到底思えないし、この試練を超えられない程度じゃ、どこへ行っても定職には就けないだろう。


「どうする?」

「……やる、やるわ。それ以外の選択肢は、ないでしょ」


 彼女の心の中はのぞけない。でも彼女はやると言った。

 ……薬師の修行を通して、意識に変化が起こってることを期待する。


 俺は魔法カバンを彼女に渡す。


「こんなかには調剤に必要な道具は入ってる」

「や、薬草とかの材料は?」

「現地調達して」

「……わかった」


 こうして、ドクオーナは俺の課した最終試験に挑むことになったのだった。

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