51.家がやばい
俺、リーフ・ケミストは奈落の森のダンジョンをクリアした。
王都に帰る前に、ヴォツラーク領のお隣にある、故郷のデッドエンド村を訪れていた。
じーちゃんばーちゃんたちに出迎えられて、俺たちは村に入る。
家と家の間隔が広い!
牛馬などの家畜!
これぞ故郷……! って風景が広がっていた! いやぁ……帰ってきたなぁ実家に。
「マーキュリー嬢。この牛もしや牛頭種では? こっちの馬は馬頭種……空を飛ぶ英雄の牛と馬では!?」
「ええ、その通りよタイちゃん……ここ色々バグってるから気をつけてね……」
馬ちゃん牛ちゃんたちの顔をよしよしなでながら、俺は村長のアーサーじーちゃんの元へ向かう。
どこにでも見る普通の、一階建ての平屋だ!
うぃーん、とドアが自動で横に開く。
「ドアが自動で開いた!? どうなってるのだ!?」
「魔道具よ。人を感知して開くやつ」
「そんな高度な魔道具が使われてるのか!?」
そういや都会じゃあんまり見ないよね。ここじゃ普通なのに。
ファミファミファミ~♪ ファミファミファ~♪
「なんだこの音はっ!?」
「呼び鈴よ。人が帰ってきたのを自動で感知して、中の人に知らせる魔道具」
「なんと……なんと高度な家なのだ……!」
するとアーサーじーちゃんが奥からやってくる。
「リーフちゃん!!!!!!!! お帰り~~~~~~~~~~~~~!」
くんっ、と体が少し沈むと、瞬く間もなく接近してきた。
「はやっ!?」
「せい!」
俺は突っ込んできたじーちゃんの腕をつかんでそのまま関節をきめる!
「ははは! 体捌き上手になったなぁ! さすがリーフちゃん!」
「じーちゃんの教え方が上手だからね!」
「あっはっは! うれしいこと言ってくれるじゃあないか!」
にっこにこのじーちゃんから、俺はハグを受ける。
ああ、なつかしいなぁ。昔は訓練して、そのたびにじーちゃんにこうして、ぎゅってされてきたっけ。
「こ、この老人……縮地を使ってなかったか……?」
「うん。ここの武芸者だいたいそれできるから……」
「人外魔境かここは……」
「そのとおり。ようこそ英雄村へ……」
む? とアーサーじーちゃんがマーキュリーさんに気づく。
「おお! マーキュリーよ!」
「やめてお爺さま! 突っ込んでこないで! そこの特殊訓練兵とちがって、私は一般人ですので!」
特殊訓練兵?
誰のことだろうか……。
「己じゃ……はあぁ。ほんとお元気そうで何よりです」
「わはは! おまえもなぁ……しかし、少し見ない間に綺麗になったのぉ」
マーキュリーさんはアーサーじーちゃんとマーリンばーちゃんの孫なのだ。
「若い頃のばーさんにそっくりじゃわい」
「そ、そんな……綺麗だなんて……」
「胸はばーさんと違ってぺったんだがな!」
「おいこら殺すぞジジイ? あ?」
いやぁ、仲良いなぁ二人とも!
そこへ外からマーリンばーさんが帰ってくる。
「おやぁ、こんな入口で何をたむろってるんですかぁみんな」
「ばーちゃん!」
少し焦げた匂いがばーちゃんからする。
「何してたの?」
「リーフちゃんを自分の家に呼びたがってるボケ老じ……こほん、村人達とバト……こほん、協議してたんだよぉ」
そういや村に入るときに一悶着あったな。
先に行ってなさいっていわれたから、あの後何があったのかわからないけども。
「リーフちゃん、今日は旅の疲れを癒やしてゆっくりするといいよぉ」
「ありがとう!」
俺たちはばーちゃんの家のなかにはいる。
うぃいいいん~……。
「ちょっと待て!!!!」
「どうしたの、タイちゃん?」
タイちゃんが床を指さす。
「床! なぜ床が動いているのだっ……!」
「え? 動くよね、床って?」
「動かんわ……! 普通!」
「確かに王都の床って動かなくてへんだなーって思ってたけど」
「こっちが異常なのだ!!!!!」
あれれ? そうなのか。
王都とここ以外、行ったことなかったからわかんないや。
「タイちゃん……ようやく私の苦労がわかってくれたのね……」
「ああ……わが輩ここにいたら、おかしくなる……」
「ほんとそれね。ここまじで頭おかしいレベルで凄い魔法使い、魔道具師がいるから、インフラのレベルが異常にやばいのよ……」