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50.里帰りで溺愛される



 ダンジョン攻略を終えた俺は、王都に帰る前に、故郷であるデッドエンド村に顔を出すことにした。

 奈落の森を抜けた先にあるのは、草原。


 どこまでも広がる田舎の風景に俺は懐かしさを覚える。

 すぅ……と息を吸うと混じりけのない新鮮な空気が鼻腔をくすぐる。


「はぁ~……いい空気だ」

「ここが主の故郷なのか?」


 ベヒモスのタイちゃんが俺の隣に立ち尋ねてくる。


「うん。まあ本当の生まれはわからないけど、俺の帰ってくるべき場所はここだよ」


 俺は本当の両親の顔を知らない。

 捨て子だったのを、俺の師匠であるアスクレピオスが拾ってくれたのだ。


「本当の両親に会いたいとは思わぬのか?」

「ぜーんぜん」


即答だった。心からの言葉だったので、考える必要すらなかった。


「俺はこの村を愛してるし、育ててくれた村のじーさんばーさんたちが大好きだから。もう本当の親とかどうでもよくなったよ」

「そう……か。なるほどな」


 バディのマーキュリーさんが息をついて言う。


「さっさと顔出してあげましょう。おばあさまたち、きっと喜ぶわ」


 マーキュリーさんはこの村の魔女マーリンばーさんの孫なのだ。

 生まれはここじゃないんだけど、一時期デッドエンド村で育ったことがあるんだって。


 俺たちは村へと近づいていく。

 ぶわ……! とタイちゃんの尻尾がホウキみたいに膨れ上がる。


「え? どうしたのタイちゃん……?」

「あ、ある……うう……」


 ぺたん、とタイちゃんがその場にへたり込む。


「え!? なに!?」

「あ……が……るじ……いき……ぐる……」


 マーキュリーさんが慌ててタイちゃんに近づいて、鑑定眼で状態を見やる。


「魔物を恐慌状態にする呪術ね。とても高度な呪いがかかってるわ」

「そんな! 誰かの攻撃?」

「たぶん村の人じゃないかしら? リーフ君の魔除けがなくなったから、自衛してるんじゃない?」


 なるほど……そうだったのか。

 けれど仲間のタイちゃんがこれ以上苦しむのは見てられない。


 俺は呪いを解除する薬を作ってタイちゃんに飲ませる。

 すぅ……と彼女の顔色が良くなった。


「すまない、主よ。こんな強力な呪い……生まれて初めて受けた……」

「そうだったんだ。ごめんね。多分悪気は無かったと思うから」


 そのときである。

 ドドドド、と村の方から誰かが駆けつけてきた。


「じーちゃんたち!」

「「「おーーーーーーーーい! リーフちゃぁああああああああああああん!」」」


 大勢の老人達がこちらに向かって駆けてくる。

 じーちゃん! ばーちゃんだ! うっわぁ! わー!


 俺は思わず駆けだしていた。

 みんなに向かってダイブする!

 抱き留めてくれるじーちゃんたち!


「ただいま!」

「お帰りリーフちゃん!」「ひさしぶりだねえ!」「げんきだったかい!」「怪我してないかい?」


 みんなに囲まれてもみくちゃにされる。でもうれしかった、みんな、みんな元気だから!

 気にするなってマーリンばーちゃんに言われてたけど、それでもいつだってみんなの顔は脳裏にあった。


 薬がなくなったら、体調管理できないんじゃいないかって。


「リーフちゃん、よくきたねえい」

「マーリンばーちゃん!」


 世話になったマーリンばーちゃんに俺は抱きつく。

 よしよし、と俺の頭をなでてくれた。


「薬は大丈夫だよぉ。ツテがあるからねえ」

「そっか……良かったよ、みんな元気そうで」


 みんなが笑顔でうなずいてる。そんな顔を見れただけでも俺は元気になれた。

 ……そしてその一方で、タイちゃんが怯えた表情で俺……というか、老人達を見ている。


「どうしたのタイちゃん?」

「……い、いや。その……」


 青い顔をしてブルブルと震えているタイちゃん。

 ん? どうしたんだ……? そんな怖い物がそこにあるみたいな顔して。


 マーキュリーさんが同情的なまなざしをタイちゃんに向ける。


「わかる、わかるわタイちゃん。ここの人ら……やばいオーラ出してるわよね」

「ああ……一歩踏み込めば、殺される。そんな、達人、超人の雰囲気を、常に出している……」


 戦慄の表情でタイちゃんがみんなを見ている。

 え? 殺される?


「そんな大げさなぁ~」

「……いや、リーフ君。あなた感覚バグってるからわからないんだろうけど、まじよ?」

「ああ。超人、達人、偉人たちの放つすさまじい雰囲気が出ている。素人が立ち入れば殺されるような、そんな雰囲気だ」


 俺はばーちゃんたちを見渡す。

 みーんな笑顔でニコニコしているのに、どこが殺される? わからん……。


「リーちゃん、うちに寄っておゆき。冷やし飴あるよぉ」

「ばっか! リーフちゃんはうちに来るんだ! おいしい熊が手に入ったんだよ!」

「ほほほ、馬鹿言っちゃこまる。リーフちゃんはわしと一緒にお風呂に入るんじゃあ」


 ぴしっ! と空気が一瞬で凍り付く。

 ごごごご! と天地が鳴動しだし、タイちゃんがその場で泡吹いて倒れた。


「タイちゃん! だいじょうぶ!?」


 俺は彼女に近づいて気付け薬を飲ませる。

 その一方で、じーちゃんたちが小競り合いを始めた。


 ちゅどぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!

 どがぁああああああああああああああああああああん!


 ばきばきずばばばばぁああああああああああああああああああああああん!


「り、リーフ君とめて! なんか最終戦争みたいになってる! みんなやばい! 魔法も剣も、やばすぎる!」


 たかが大地や空、山や森が消滅したくらいで、大げさだなぁ。


「あんなの日常の小競り合いじゃないですか。止めるまでもないですよ」

「いいから! 滅ぶ! リーフ君をめぐっての馬鹿みたいな争いで、世界が滅んじゃうううううううううううううううううう!」


 うーん、よくわからないけど、ケンカはよくないよね。


「みんな、俺のために争わないで!」

「「「はーい!!!!」」」


 ぴたっ、と争いをやめる老人達。

 うん、ケンカはよくないね!


「……我が主は、とんでもない人物だったのだな」

「ええ……彼一人で、下手したら世界を滅ぼせるレベルよ。あの化け物軍団を操縦できるんだから……」


 


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