42.死の森へGO!
俺はヴォツラーク領にある、アインの村へとやってきた。
ここは奈落の森に最も近い村と言うことで、瘴気が最も濃い場所でもあった。
俺の作った対瘴気用の薬を飲ませてみたところ……。
「あ、ありがとうございました……リーフ様」
村長のミアさんが、俺に頭を下げてくる。
村の人たちは瘴気に苦しんでいたので、まずは浄化用のポーションを飲ませ、そしてこの瘴気を中和する薬を飲ませた次第。
「いえ! 皆さんが少しでも楽になってくれたらうれしいです!」
「え、ええ……楽になりました。一瞬、天国が見えましたが……」
天国? そんなに美味しかったのかな?
「リーフ様……本当にありがとうございます。怪我人の治療、村の補修、そして結界までも……」
「仕事ですから、気にしないでください」
「……実は、リーフ様、一つお願いがありまする」
「お願い?」
「はい。実は……奈落の森に、ダンジョンが出現したのです。その攻略をお願いしたく」
ミア村長からの話をまとめると、どうやら村の若者が、森で謎のほこらを発見したそうだ。
中を探索したところ、そこにはモンスターの存在を発見。
「森のモンスターよりもランクがうえの、強い敵がおりました。若者達は隠蔽スキルを使って何とか村まで戻ってこれましたが……」
バディのマーキュリーさんが深刻そうな顔でうなる。
「それは……まずいわね。早く対処しないと、ダンジョンがどんどん大きくなってしまって、対処ができなくなる」
「ダンジョンって大きくなるんですか?」
俺の問いかけに、エイリーンさんがうなずいて説明する。
「……ダンジョンは生き物に例えられます。人の子供が日々成長するように、迷宮も放ってくと、成長し大きくなっていく。しかも、厄介なことに人間と違って成長の限界がありません」
「じゃあ……ほっとけば世界を覆うほどのデカいダンジョン、とかなりかねないってこと?」
そんなことになれば、世界中ダンジョンだらけになってしまう。
モンスターがあふれて、大変だ。
「わかりました。ダンジョンを攻略してきます!」
俺がそう言うと、ミア村長の瞳に光が宿り、俺の前で深々と頭を下げた。
マーキュリーさんがため息をついて、
「私もついてくわ。あなた一人じゃ何するかわからないし」
何があるか、ではなく何をするかとは。
「我が輩もついて行こう。マーキュリー嬢を護衛する」
「助かるよ、タイちゃん!」
エイリーンさんがうなずく。
「……わたしはダンジョンまでご案内いたします。リーフ様の足手まといは、一人で十分かと」
「おいこら、それって私のこと? お? やんのか?」
「いえ♡ ぺちゃ」
「私のことペチャっていうんじゃあないわよ!!!!!」
取っ組み合いになりそうになるのを、タイちゃんが引き止めていた。仲良し!
「……では、ミア村長。我々はダンジョン探索へ行って参ります」
「ありがとうございます、エイリーンさん。皆様も、よろしくお願いいたします……!」
★
俺たちは森に出現したダンジョンを攻略するため、奈落の森へ入る。
背の高い木々。よどんだ空気。
光のほとんど届かない樹海のなかには、獣や風の音が反響している。
「んー、なつかしいなぁ」
俺はぐいっと伸びをしながら言う。
いやぁ、なじむ。
「慣れておるのだな、我が主よ」
「うん。子供の頃からの遊び場だったからね」
「……こんな危険な場所で平然としてのける、さすが、リーフ様です♡」
ふと、誰かが俺の手をつかんでいる。
見やると、青い顔をしたマーキュリーさんが震えている。
「どうしたんですか、マーキュリーさん?」
「……ね、ねえリーフ君。ここって、で、出るのよね?」
「出る?」
「その……おばけ」
おばけ……ああ!
「出ますね!」
「ひぃい! や、やっぱりぃ~……」
マーキュリーさんがその場にへたり込んでしまう。
エイリーンさんが「そういえば」と思い出したように言う。
「……奈落の森で死んだ人の霊魂が、森の中でさまよっていると聞いたことがありますね」
「私もそれ聞いたことあってさぁ~……」
くすっ、とエイリーンさんが上品に笑う。
「まあ……おかわいいこと。お化けが怖いだなんて」
「う、うっさい! し、仕方ないでしょ! 恐いの!」
「では一人でお帰りになられたらどうでしょう? 私がリーフ様と潜ってきますので」
「そ、それは駄目よ! わたしがリーフ君の相棒なんだから!」
俺のこと相棒だと思っててくれるんだ……うれしいなぁ。
「大丈夫です、俺がマーキュリーさんを、護りますから!」
「と、トゥンク……な、なによ……リーフ君……いつもよりかっこよく見えるじゃない……駄目よ、わたしは保護者なんだから……ああでも……」
いやんいやん、とマーキュリーさんが体をねじっている。
エイリーンさんがゴミを見る目でマーキュリーさんを見て「……ショタコンが」と吐き捨てる。
「あ゛? 何つった今? ねえ?」
「いえ別に♡ 淫乱魔女と」
「な、なにが淫乱か! わたしはまだ処女……って、何言わすのよ!」
はぁ……とタイちゃんがため息をつく。
「どうでも良いがさっさと行かないか?」
「そうだね。いこう!」
こうして俺たちは出発した。
マーキュリーさんが後ろから震えながら付いてくる。
「ひっ……! り、リーフ君! あれ……! あれぇ……!」
俺たちの進行方向に、古びた井戸があった。
「ただの井戸じゃないですか?」
「……森が広がる前に、うち捨てられた古井戸でしょう」
「森が広がる?」
「……はい。この森はダンジョンと同様生きておりまして、年々領土を拡大していって居るのです」
なるほど……てか、ん?
「それってこの森がダンジョンだからなんじゃないですか? ダンジョンも生き物なんですよね?」
ぽかん……とエイリーンさんが口を開く。
「た、確かに……盲点でした。そうか……この森自体がモンスターで」
「ちょ、ちょっと! くっちゃべってんじゃあないわよ! アレ見てあれ!」
井戸の中から、ゆっくりと誰かが這い出てきたのだ。
「お化けよ! お化け!」
「え、井戸に落ちちゃった人じゃないんですか?」
「ちっがうわよ! アレ絶対、怨霊のたぐいよ! ほら見て!」
井戸から出てきたのは、長い髪の毛に、白いワンピースを着た人だった。
「ひぃいい! き、きたぁ!」
俺の体にくっつくマーキュリーさん。
のそのそ……と四つん這いになった女の人が、近づいてくる。
それに対して俺は……。
「髪、痛んでますね?」
「なんっじゃそりゃあああああああ!」
マーキュリーさんがツッコミを入れる。
「なに怨霊と普通に会話してるのよ!?」
「え、怨霊? 井戸に落ちちゃった人じゃ?」
「どうっみても怨霊でしょうが!」
そうかなぁ、悪いやつとは思えないんだけども。
長い髪の女性は戸惑っている様子。
「ああほら、髪の毛ぱさぱさだ。はい、これ使ってください」
俺は魔法バッグから、小さな瓶を取り出す。
「これは髪の毛をつやつやにするオイルです。失礼こうやって……」
俺はオイルを少し手に乗せて、怨霊(仮)の頭をなでる。
俺がなでた後が、つやつやのストーレトヘアになった。
「なにこれすご……めっちゃつやつや」
「直毛薬って言うんです」
「これ……売ればすんごいお金になるわよ。くせっ毛で悩んでる女の子って多いし」
「え? そうなんですか?」
「ええもう、そりゃあね。多分億万長者になれるわ、これ売れば」
「あははは、大げさな。夢がありますねぇ」
「だから……って、ええええええええええ!?」
マーキュリーさんがいつも通り驚いている(通常運転)。
指さした先には、半透明の、綺麗なお姉さんが居た。
「わあ綺麗ですね!」
『……あたし、きれい?』
「はい! とっても!」
『……うれしい』
すぅう……とお姉さんが消えていく。
『ありがとう……。最後に、綺麗って言ってくれて』
「いえいえ!」
そう言ってお姉さんは消えていった……。
あー、怨霊だったんだぁ。
「す、すご……怨霊を一発で成仏させちゃったわ……」
「さすがリーフ様です!」
うーん、怨霊だとは……。
ま、最後は幸せな気持ちでいけたなら、いっか!
「よし、行きましょう!」
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