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39.精霊たちに溺愛されパワーアップ



 俺はオロカンの治めていた領地、ヴォツラーク領へやってきた。

 モンスターの増殖による被害が拡大している。


 村にはその爪痕が色濃く残っている。怪我人は治した。今度は、それ以外の部分を治療していこう。


「次は……壊れた家を直します」

「でも、家なんて直せるの? リーフ君は薬師でしょう? 薬って基本、生き物にしか効かないんじゃ……?」

「はい、だから、家を直す薬を作ります!」


 俺は背負っている木箱を下ろす。

 これはマーリンばーちゃんが作ってくれた魔法バッグで、無限に収納ができる文字通り魔法のカバンなのだ。


「って……あれ?」

「どうしたのだ、我が主よ?」


 ベヒモスのタイちゃん(人間バージョン)が小首をかしげる。


「素材が減ってる……」

「なに? 盗まれたのか?」

「いや、違うと思うけど……ずっと背負っていたし、薬草なんて盗む?」

「ふぅむ……む? 主よ! 周りを見るんだ!」


 タイちゃんに言われて周囲を見渡す。

 緑色の光の玉が、蛍のように、無数に群がっている。


「これは……たしか、前にもどこかで……そうだ。薬草に語りかけるときに見える、光の玉!」

「主は精霊が見えるのだな」

「精霊……?」


 じっ、と俺は光の点を見つめる。

 すると、緑色の服を着た小さなお人形が、空に浮いてるのがわかる。


「この、可愛い人形が?」

「うむ、精霊だ」


 へえ……可愛い。俺の肩や頭に、精霊達が停まっている。

 たまにキスされたり、すりすりと頬ずりされたりする。でも触れてる感覚は無い。不思議……。


 無数の精霊達が向こうからよってきて、キスしたり、あるいは、俺の気を引こうとしてくる。

 なんだか愛くるしい子犬みたいだ。

 つん……とつつくと、精霊がうれしそうにして、さらに体を大きくした。うお、どうしたんだこれ……。


「って、ん? マーキュリーさん、どうしたんですか?」


 彼女は無言で、手を差し伸べてきた。


「はい、頭痛薬エリクサー


 マーキュリーさんはツッコミを入れる前に、俺の作った完全回復薬エリクサーを高速で奪うと、一気飲みする。

 

「どうしたんです? 今日は早いじゃないですか、完全回復薬エリクサー

「あんたのせいじゃぁあああああああああああああああああああ!」


 マーキュリーさんが元気にツッコミを入れる。

 うん、彼女はこうでなくちゃ。


「何普通に精霊と交信してるのよっ!」

「え、いや見えますし……かわいいですし……これって何かおかしなことなんですか?」

「おかしすぎるわっ! 精霊は、普通の人間には見えないのよ! 見える方がおかしいの!」


 エイリーンさんが目を輝かせ、拍手する。


「精霊を目視できるなんて、さすがリーフ様♡ しかし、どうして見えるのですか?」

「前に隠しダンジョン突破したときに、世界樹の精霊から、精霊の目もらったんだよね」

「なんと! 隠しダンジョンを突破するなんて! さすがリーフ様です!!」


 エイリーンさんやたらと持ち上げてくるな。俺は別にすごいなんて思っちゃいないんだけども。


 さて精霊が見えるようになったわけだけども……。

 彼女たちは、俺のカバンから薬草を取り出している。


「あ、こら。勝手に取らないでよ」


 緑の光を放ちながら、彼女たちは壊れた村の建物の上を舞う。

 それはともすれば精霊達による舞踏会のようであった。


「きれいです……」


 エイリーンさんが見とれながら言う。

 一方でぎょっ、とマーキュリーさんが目を剥く。


「ちょ、ちょっとリーフ君! アレ見て!」

「あれ、建物が治ってる……【修復薬】の効果だ」


 おかしい、俺はまだ修復薬……無機物を治す薬を作ってないし、薬師の神杖での投与を行っていない。


 しかし精霊が停まったとこが、みるみるうちに、直っていくではないか。


「まさか……」

「何かわかったのですか、ペチャ?」

「もぐぞ無駄乳……精霊が、リーフ君のために、薬を作って投与しているのよ」

「精霊が自ら! そんな……あり得ないです」

「ええ、そうなのよ……前代未聞だわ……」


 戦慄するマーキュリーさん、驚愕するエイリーンさん。


「え、俺……何かやっちゃってます? もしかして」


 びきっ、とマーキュリーさんが額に血管を浮かべ、無言で手を差しのばしてくる。


 俺は完全回復薬エリクサーを手渡す。

 乱暴に飲み干すマーキュリーさん。


「いちおうそれ世界最高の回復薬なのだよな?」


 とマーキュリーさんの代わりに、タイちゃんがツッコミを入れる。

 世界最高かっていわれるとなぁ。便利ではあるけど。


「リーフ君。説明してあげるわ。精霊はね、普通人間になつかないの」

「え、そうなんです?」


 めっちゃ好かれてるけども。

 みんなスリスリとかちゅっちゅっ、てものすごいしてくるけど。


「まず人間は精霊を視認できない。長い修練を積んで、ようやくボンヤリ見えるくらい。コミュニケーションなんてほぼ不可能よ」

「魔法使いたちは基本、精霊の力を使います。彼らに力を使ってもらうために、呪文という不便なコマンドを使ったり、魔力という貢ぎ物をして、ようやく魔法は使えるようになるのです」


 エイリーンさんはマーリンばーちゃんの元で修行していたからか、魔法の知識に明るいようだ。


「あれ、でも俺、呪文使ってないし、魔力なんて消費してないし、そもそも精霊が勝手にやってくれてるんだけど」

「そう! それがおかしいの! 精霊が何の見返りもなく力を貸すってことがまず異常なの!」

「異常って……なんかイケないことしちゃってるんですか?」

「やばいレベルですごいってことよぉおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 またも頭を抱えてぐわんぐわんと謎の動きをするマーキュリーさん。


 タイちゃんは得意顔でうなずく。

 

「精霊は主に好かれたいがために、皆競うように、主のためになることをしてるわけだ」

「でもなんでそんな好かれてるんだろ?」

「主から漏れ出る、清らかな魔力が関係してるのだろう。主の持つそれは、誰よりも緑の匂いがする」


 ううーん……難しい。理解できない単語がいっぱいだ。

 でもまあ、この緑の精霊に好かれてるのは事実。


 で、この子達が俺のために、先回りして薬を勝手に作ってくれてたみたいだ。


「ありがとう、緑の精霊達!」


 ぱぁ……! と精霊達が笑顔になる。


「って、ええええええええ!? なにあれぇえええええええ!?」


 空を覆うほどの、すごい数の緑の点……精霊達がこっちやってくる。

 精霊達の手には、様々な薬草が握られていた。


「ど、どうやら我が主のために……薬草を勝手に採ってきてくれたようだな……」

「さすがリーフ様!」

「自動薬生成、自動薬草採取って、これ以上チートになってどうすんのよっっっっっっっっっ!!!」


 頭を抱えるマーキュリーさん。

 えっと……。


「チートって、何のことです?」

「おまえのことだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 まあ、何はともあれ。精霊達が自動で薬草を採ってきてくれるなら、薬草切れを起こす心配がもうなくなった。


 これなら、たくさんの人を治療できるぞ! やった!

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― 新着の感想 ―
[一言] 漫画が面白かったので原作?を見ました。 なんかやっちゃいました?も振り切ると面白いですが、、、 急に設定が変わるから引っかかってしまう マーキュリーは巨乳だから肩が凝ると書いているのに、物…
[一言] 主人公がやらかす 回りが突っ込む いつまでもこれの繰り返し 代わり映えもなにもなくワンパターン 読むのすら苦行な作品
[気になる点] マーキュリーさんは教練室の壁を直す時に修復薬見てます
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