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【WEB版】辺境の薬師、都でSランク冒険者となる~英雄村の少年がチート薬で無自覚無双〜  作者: 茨木野
第五章

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267.



「よかった……マーキュリーさんが無事なら、安心だ」


 僕はホッと胸を撫で下ろす。

 あの人が元気なら、合流するまで何とか持ちこたえてくれるだろう。

 今は目の前の仕事に集中しないと。


「それじゃあ、案内をお願いします。患者さんはどこに?」

「ええ、ええ。こちらですよぉ……」


 ジョシューさんが重厚な鉄の扉の鍵を開ける。

 ギィィィ、と錆びついた蝶番が悲鳴を上げ、監獄エリアへの道が開かれた。


 その瞬間だった。


「「「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」」」


 鼓膜をつんざくような、黄色い悲鳴が響き渡った。


「えっ!? な、なに!?」


 僕は思わず耳を塞ぐ。

 敵襲か? 暴動か?

 身構える僕の目に飛び込んできたのは、鉄格子の向こうから伸びる、無数の「手」だった。


「男だ! 男がいるぞおおお!」

「嘘でしょ!? 本物!? 幻覚じゃないの!?」

「いい匂い! 若い雄の匂いがするわぁ!」

「こっち見て! ねえ、お姉さんと遊びましょ!」


 檻の中に閉じ込められた女囚たちが、鉄格子にへばりつき、必死に手を伸ばして叫んでいる。

 その目は血走り、口からは涎が垂れ、まるで獲物を見つけた猛獣のようだ。


「ひぃっ……!」


 僕は後ずさる。

 怖い。

 物理的な暴力とは違う、ドロドロとした欲望の圧力が凄まじい。


「あらあら、大人気ですねぇ先生」


 ジョシューさんが他人事のようにクスクスと笑う。


「こ、これは一体……?」

「ここの階層』囚人たちは、長らく男性と隔離されていますからねぇ。男気に飢えているんですよ」


 なるほど、だから「女性禁止」だったのか。

 もしここにうっかり女性が入ってこようものなら、「貴重な男性(獲物)」を奪い合うライバル、あるいは泥棒猫とみなされて、嫉妬で八つ裂きにされかねない。

 逆に男性なら、こうして(捕食対象として)大歓迎されるわけだ。


「さあ先生、早速診察をお願いしますね。みんな、貴方に触れてほしくてたまらないみたいですから」


 ジョシューさんが無慈悲にも、一番手前の檻の鍵を開けた。


「ちょ、待っ……!」

「先生ぇええええええええええっ!」


 ガバァッ!


 檻の中から、筋骨隆々のアマゾネスのような女囚が飛び出してきた。

 そして、タックル気味に僕に抱きついてくる。


「ああんっ! 久しぶりの男の感触ぅ! すべすべぇ!」

「や、やめて! 離して! 診察! 僕は診察に来たの!」

「診察ぅ? いいわよぉ、全身くまなく診てぇ! まずは私の『ここ』が熱いの、触診してくださぁい!」

「セクハラだぁああああああああああああ!」


 僕はもみくちゃにされながら、絶叫した。

 マーキュリーさん、助けて。

 ここ、地獄インフェルノよりもタチが悪いよ!



【おしらせ】

※1/30(金)


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