256.雷よりも
雲の中に引きずり込まれたタイちゃんを救うため、僕は迷わず飛び込んだ。
嵐が荒れ狂う中でも、彼女の匂いの跡ははっきり追える。
――が。
「気をつけてください、ミーメイさん……」
「ど、どうしたんすか?」
「敵意の匂いです」
「! 敵……!? い、一体どこに……?」
どこに、と聞かれても答えようがない。
「敵意の匂いに、囲まれてます。……というか、僕らは敵の腹の中にいるようです」
「な!? ど、どういうことっすか!?」
「文字通りです。僕らは敵の体内に飛び込んでしまったんですよ」
その瞬間――空気が一変した。
髪の毛が逆立ち、皮膚がビリビリと痺れる。
次の瞬間、真っ白な閃光が視界を焼き、耳を破るような轟音が響いた。
ピシャァァァッ!!
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
雷は一直線に、僕めがけて落ちてきた。
距離にしてゼロ。落ちてきた瞬間には、もう当たっていた――
「うぉっ!? リ、リーフさん!? 大丈夫なんすか!? 黒焦げっすけど!?」
「大丈夫!」
服は焦げてるが、体は平気だ。
「て、てゆーか今ナニが起きたんすか……?」
「え? 雷が僕に向かって落ちてきたので、ミーメイさんを空中に放り出して回避させました。で、僕が雷を受けた瞬間にキャッチし直した……それだけです」
「いや……もうなんなんすか!? でたらめっすよぉ!」
「? これくらい普通ですよね?」
「雷と同じ速度で動いてることの、どこが普通なんすかぁあああああああ!?」