230.後ろにたつな
マーキュリーさんの匂いが急に消えちゃった!
どうしたんだろう……。ひょっとしたら……。
「誰かに誘拐されたとか!?」
あ、ありえる!
だってマーキュリーさん、すっごく美人だもん!
誘拐されてもおかしくない!
「まあ落ち着け我が主」
タイちゃんが人間姿になって僕の首根っこをつまむ。
ふん!
「ふぎゃぁあああああ!」
僕は反射で、タイちゃんを一本背負いしてしまった。
「僕の後ろに立っちゃ危ないよ、タイちゃん。自動で反撃するように、村のじいちゃんから格闘術もたたき込まれてるんだから」
「…………」
タイちゃんがぶくぶくと泡を吹いている。
え、今のでノックダウン?
もろいな……。
『もしもし、リーフちゃん? 聞こえますか?』
そのとき、僕の頭の中に、マーリンばあちゃんの声が聞こえてきた!
「マーリンばあちゃん! どうしたの?」
『マーキュリーは先にヘル・インフェルノ女囚監獄にいったようじゃよぅ』
「監獄に? どうして?」
『待っておってもやることがないので、先にいくみたいですよぉ』
なるほどぉ。
「わかったよ! ばあちゃん! 教えてくれてありがとぉお!」
ばあちゃんの声が聞こえなくなる。
タイちゃんがむくりと起き上がる。
「主よ……」
「ミーメイさんのとこいこっか」
「ええ!? ど、どうしたのじゃ……? 急に、心変わりしたみたいに」
「ばあちゃんに教えて貰ったんだ、マーキュリーさん先に行ったって」
「は……?」
「僕らは僕らの仕事しよっか!」
「え、いや……どうやって知ったのかの……?」
ぽんっ。
どがん!
「あ、ごめん! でも後ろに立ったタイちゃんが悪いんだよ?」
白目むきながら、タイちゃんがつぶやく。
「わ、我が輩には……この子のツッコミは……むり……じゃ、マーキュリー、たす……け……がくん」
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