224.ヘル・インフェルノ女囚監獄
僕、マーキュリーさん、タイちゃんの三人は、天与の原石ギルマス、ヘンリエッタさんに呼び出されていた。
「失礼します! リーフ・ケミスト、ただいま参上しました!」
扉を開けると……。
むわ……! ときついたばこのにおいが部屋に立ちこめていた。
「おっそい。遅いわよ、坊や……」
部屋の中には、嗅ぎなれない匂いの、女性がソファにふんぞり返って座っていた。
凄い……美人だ。
年齢は20代後半くらいかな?
濃い紫色のショートカット。片目を眼帯で隠してる。
スラッとしてるけど、お尻と胸はおっきい。
特徴というと、まず……エッチな格好が目に付く。
ボンテージ衣装っていうのかな?
黒くて、つやつやしてる革の服みにつけている。しかも結構きわどいやつだ。局部が見えてしまわないんだろうか……!
見慣れぬ帽子と、コートを身につけている。猛禽類のように鋭い目つきの、美女。
そんな美女が長いたばこ片手に、不機嫌そうにソファに座っていた。
「おお、よく来たなリーフよ」
「ヘンリエッタさん!」
ギルマスのヘンリエッタさんが来い来い、と手招きする。
僕はヘンリエッタさんの隣へと移動。
「この子が、我がギルドのホープにして、薬神の弟子、リーフじゃ」
「はじめまして、リーフ・ケミストです!」
相手が誰か知らないけど、初対面なので、ぺこっと頭を下げる。
「ふぅん……この坊やが、あのアスクレピオスの弟子ね」
ふぅー……と女性がたばこを吹かせる。うう……苦手……たばこって……。くさいし……。
するとマーキュリーさんがそっ、とハンカチを取り出す。
「はいこれ」
「あ……ありがとうっ」
マーキュリーさん、細やかな気遣いできるんだよなぁ。
普段だらしないけど。そんな優しいとこ、大好きだ!
「ふん……なんだ、カノジョ持ちか。強いと聞いて期待してたけど……がっかりだな」
む?
女性から、僕を馬鹿にするような匂いがするぞ?
カノジョ持ちだから……なんだってんだろう?
すく……と女性が立ち上がる。
「ゴズ、おきな」
「ゴズ……?」
女性が足下に向かって言う。
すると……のそり! とソファが動き出したのだ!
ソファだと思っていたそれは、巨大な……亜人だった!
「大鬼じゃない!?」
マーキュリーさんが驚いてる。
大鬼……? なんだ、聞いたことないぞ!
「この女……大鬼を使役していたの? とんでもないレベルのテイマーだわ……」
「ゴズ。このガキを殴りころしな」
「な!?」
ゴズって呼ばれた大鬼? さんが、僕をにらみつけてきた。
ゴズさんは僕の目の前に立つ。
わぁ! おっきぃ~!
「うごおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ゴズさんは思い切り拳を振り上げて、僕に向かって殴りつける。
ずどぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!
「りーふくーーーーーーーーーーーーん!」
「なんですかぁ?」
「うぇえええええええ!? 生きてるぅうううううううううううう!?」
ゴズさんのパンチで、僕は二階から一階へと落とされてしまった。
ので、ジャンプで戻ってきたのである。
「今のでなんでいきてるのよ!?」
「? なんでっていわれても……あんま強くない一撃だったので」
「大鬼よ!? しかも、肌の色を見る限り亜種だわ!」
「えっと……だから?」
大鬼だか亜種だかしらないけど……。
「デッドエンド村にいた、ダイダラボッチちゃんのパンチと比べたら、全然つよくないですよ?」
「ダイダラボッチぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
「あれ、何に驚いてるの?」
「それって伝説の巨人じゃないの! そんなのにパンチされたらぺしゃんこになるどころじゃないわよ!」
「あはは! ダイダラボッチちゃんは僕ら村の子の遊び相手ですよぅ。ぺしゃんこになんてしないですよぉう」
「おまえほんとさぁあああああああああああああああああああああ!」
ダイダラボッチちゃんのパンチとくらべたら、ゴズさんのパンチなんてたいしたことないや。
女性はフッ……と笑う。
「やるじゃないか、坊や。合格だ。ヘンリエッタ。仕事を依頼したい」
「う、うむ……あの、【パンデモニウム】殿、テストする際はその、あらかじめ言って欲しかったのじゃ」
パンデモニウムさんは、僕に近づいてくる。
「初めまして。私はパンデモニウム。【ヘル・インフェルノ女囚監獄】で、監獄長をやっているものだ」
「は、はぁ……。ヘル・インフェルノ女囚監獄?」
なんだそれ……?
「坊やに、治してもらいたい囚人がいるんだ」