194.強いぞドクオーナ
俺はアスクレピオス師匠の工房へとやってきた。
ドクオーナとともに、診察台へとむかう。
窮奇を横に寝かせる。
「精密な検査のために、一旦仮死状態をとく必要がある……」
細胞などの動きをみるためだ。
だがそれをすると、窮奇の病が進行してしまう……。
「そっちは任せて、リーフ」
「ドクオーナ」
修行して、経験を積んだドクオーナからは、かつての傲慢さは感じられない。
「あたしが病の進行を遅らせる。だから、その間にリーフは治療法を確立させて」
ドクオーナからは、懐かしい匂いがした。
人を助ける、薬師のにおいだ。
もう……昔のように、薬を、病院を、金としか見てない彼女はいない。
人を助ける薬師となったのだ。
「…………」
師匠、見てますか……?
ドクオーナは、立派になりましたよ……!
「ありがとう、ドクオーナ。じゃあそっちは任せる!」
「うん!」
俺は薬品を投与し、窮奇の仮死状態を解除する。
窮奇が苦しみ悶え出す。
「調剤! 麻酔薬!」
ドクオーナがスキルで麻酔を作る。
しかもこれは、ただの麻酔ではない。
窮奇の身体に、極限まで負担をかけない量を見極め、ギリギリの量を投与していた。
なんというテクニックの要る所業。
ドクオーナはそれをやってのけているのだ。
刻一刻と変化する病状に会わせて、薬を投与するなんて……。
「成長したね、ドクオーナ!」
俺は窮奇から血液サンプルを採取し、成分を分離しながら、彼女に言う。
ドクオーナはニヤリと笑って、自分の作業に集中し出す。
俺も……がんばらないと。