189.VS未知のウイルス
俺は窮奇がウイルス感染を起こしてるのだと診断し、この子の病気を治すことを決める。
まずは血液を採取し、マーキュリーさんに鑑定してもらう。
「リーフ君の言うとおりね。血液の中に、変な生き物がいるみたいだわ」
マーキュリーさんの目は、世界樹の加護をえて、さらに凄い鑑定能力を持っている。
彼女の目には体内のウイルスが見ているみたいだ。
やっぱり、マーキュリーさんはすごいなぁ。
「まずはワクチンを試してみます」
窮奇の血中に含まれるウイルスを、特別な薬で弱毒化し、そして窮奇にワクチンとして投与する。
ワクチン接種をすることで、体内にいるウイルスへの耐性を着けさせる意図だ。
『ぐ……が……ぐうぅう……』
窮奇が苦しそうにしてる。
『おかしいのじゃ。わらわの場合は、すぐに症状が治まったのに!』
不死鳥ホークスさんが困惑している。
彼女もまたウイルス感染を起こしていた。
つまり……。
「ウイルスが変異してるんです」
「変異? なにそれリーフ君」
「魔物で言うところの進化です。ウイルスは環境に適応しようと、その体の性質を変えるんです」
俺は再び血液を採取し、変異したウイルスのワクチンを作り投与する。
だが……。
『がは……!』
「……さっきより悪化してないか?」
黒銀さんの言うとおり、窮奇はさらに苦しんでいる。
これは……。
「変異のスピードが、異常なほど速いんだ」
「つまり……ワクチンを作っている間に、ウイルスが変異してしまうから、ワクチンが効かないってこと……?」
これではいたちごっこだ。
何か手を打たないと……。
『もう……いい……』
窮奇がうめくように言う。
『もう……十分だ……殺して……くれ……楽に、してくれ……』
窮奇が弱々しく訴える。
殺せば、確かに楽になるかもしれない。
……でも。
「いやだ! 俺は……あなたを助ける! 俺は……薬師だから!」
薬師とは、患者に死以外の道……すなわち、生きる道を明るく照らす存在だ。
師匠は、そう教えてくれた。
その俺がここにいるのだ。
死ぬなんて楽な方法で、楽にさせてたまるものか!
「でもリーフ君どうするの……? ワクチンが効かないんでしょ?」
「……なら、別の手を考えます」
「別の手?」
「はい……ウイルスを、不活化させます!」