183.追跡
仲間であるタイちゃん、プリシラさんと合流した。
Sランク冒険者の黒銀の召喚士さんも加わり、窮奇討伐へと向かうのだった。
「タイちゃん、どう? 追跡できそう?」
『うむ。主にもらった目薬のおかげで、窮奇の魔力の痕跡がバッチリ見えるのである。これなら追跡可能である』
タイちゃんは獣化し空を駆けている。
その背中に、俺たちが乗ってる状態だ。
タイちゃんの足は、人間が普通に走るよりかなり早い。
眼下の森がどんどんと後ろへと流れていく。
やがて森を抜け、そこには草原が広がっていた。
タイちゃんが全速力で走ってる……のだけど。
「全然追いつけないわね」
「足がとても速いんですね。伝説の獣たるタイちゃん様よりも早いだなんて……」
このままじゃいたちごっこだ。
どうにかしないと……そうだ!
「タイちゃん、スピードアップだよ!」
「な、なんか嫌な予感が……前にもこんなことあったような! リーフ君、危ないのはやめてよね!?」
前……?
そういえば同じ状況があった気がする。すごい早い敵に対して、タイちゃんにスピードアップの薬を飲ましたことが。
「今日はプリシラもいるんだから、タイちゃんにクソ早くするような薬を飲ませないでよね!?」
「? どうしてですか?」
「一般人! プリシラはあんたみたいに体が神威鉄でできてないんだよ!」
「? 俺も体は神威鉄じゃあないですけど? 何おかしなこと言ってるんです?」
「ああああ! もう! とにかく、こっちのスピードを上げるより、相手の動きを阻害する薬出しなさいよリーフ君!」
なるほど、そっちね。
「了解です……調剤!」
俺は手持ちの素材から、スキルで新しい薬を作る。
「麻酔薬! 完成!」
「……敵は高ランクの魔物だぞ? 通常の薬では足止めすらできない」
「大丈夫です! 窮奇のツメから作った、特別な麻酔薬です!」
あとはこれを、相手に当てるだけだ。
「……それはおれに任せろ」
「黒銀さん?」
「……おれはものを転送できる。麻酔薬を窮奇のもとへ飛ばす」
「なるほど! よろしくです!」
黒銀さんの目の前に分厚い本が出現する。
本の上に、俺が作った瓶を置く。魔法陣が出現すると、麻酔薬が消えた。
「……成功だ。動きがほんの少し遅くなった」
「そんなのがわかるのですか!?」
「……ああ。転送するぞ」
ぱんっ、と黒銀さんが手を叩く。
するとタイちゃんの目の前に魔法陣が展開。
「くぐれ」
タイちゃんがうなずき、その魔法陣をくぐる。
すると一緒で目の前の光景が変化した。
気づけば……俺たちはさっき居た場所とは違う場所にいた。
そこには、全身毛針の獣が居て、苦しそうにもだえていた。
「窮奇よ!」
「足が止まっております、チャンスです!」
俺と黒銀さんがうなずいて、タイちゃんの背中を蹴っておりる。
さぁ、化物退治だ!