180.変身
不死鳥ホークスさんにウイルスを感染させた元凶……。
四凶、窮奇。
まずはこいつを探しだし、倒すことになった。
エルフの里にて。
「窮奇の手がかりって何かあるのかしら?」
マーキュリーさんがホークスさんに尋ねる。
ホークスさんは空を飛んでるので、マーキュリーさん、ちょっと喋りにくそう。見上げてるし。
『すまないな、魔女殿。喋りにくいじゃろう。しかし申し訳ない、わらわは不死鳥の幼体ゆえ、人化できんのじゃ』
「エルフの里長と同じくらい長生きなのに、まだ幼体なのね……」
『うむ。永劫を生きる不死の鳥にとって、わらわなんぞまだ赤子同然よ。長い時間をかけ魔力を大量に蓄えれば、人化ができるようになるのじゃが』
なるほどなぁ……魔力か。
『うう……』
「ホークス、どうしたの?」
飛んでいたホークスさんが、ふらふらと、里長さんの肩にとまる。
『すまぬ。薬師殿のおかげで病気はなおったが、体力がまだ完全には戻ってないようだ』
「大病を患っていたものね。しかたないわ。しばらく休眠したら? それか、一度死ぬか」
「し、死ぬぅ!?」
どういうこと!?
するとマーキュリーさんが説明する。
「不死鳥ってね、死と再生を繰り返すのよ。細胞が衰えると体を燃やして死に、灰からまた生まれ治す。それを繰り返し永遠に生き続けるの」
「へえー……。あれ? でもウイルス病は治ってませんでしたよね?」
「たぶんだけど、不死鳥の炎で体を焼いても、体内のウイルスは死ななかったんでしょうね」
なるほど、だから死と再生を繰り返しても、病気は治らなかったのか。
『死して灰になり、そこから復活するにも体力が要る』
「あ、じゃあこれ飲みます?」
俺はストックしていた薬を取り出して、ホークスさんのもとへ持っていく。
「ちょ、リーフ君。それ怪しい薬じゃあないわよね……?」
マーキュリーさんが疑いのまなざしを向けてきた。
「まさか。ただの栄養ドリンクですよ」
「あんたのただのが、ただのだった試しある!?」
「?」
「んぎゃぁああああああああ! そのきょとん顔くっそむっかつくんですけどぉおおおおおおおおおおおお!」
ただのはただのだ。
俺にとっては普通の栄養ドリンクである。
ホークスさんはぺこっと頭を下げる。
『かたじけない。いただこう』
里長さんが栄養ドリンクの蓋を開ける。
手のひらに液体をそそぎ、ホークスさんがそれを舐め取る。
すると……。
カッ……! とホークスさんの体が、青く輝きだした。
「ほらぁあ! まーたやりやがったよぉおおおお!」
ドンドンとホークスさんの体が大きくなっていく。
やがてそこには、背の高い、グラマラスな女性がたっていた。
「信じられぬ……人化したのじゃ……」
ふわっとした、青く長い髪。オレンジ色のメッシュがはいってる。
一糸まとわぬ、超絶美人の人間のお姉さんがいた……。
「この栄養ドリンクには、不死鳥を進化させるほどの高濃度の魔力が込められておった! 薬師殿……これは……」
「え? アスクレピオス師匠特製の栄養ドリンクですよ? 古竜のミイラをすりつぶしたものとか色々はいってる……」
その場にいる人たちがみんなドン引きしていた。
あ、あれ……? 俺何か変なこといっちゃったかな……?
「やっぱり……薬師殿はすごいのじゃ……」
ほ、ホークスさんは全裸のママ、そう言うのだった。
め、目のやり場に困るよぉ……。