173.辺境の薬師ですよ!
俺はギルドの依頼で、エルフ国アネモスギーヴへと来ている。
国に蔓延する死の灰の原因が、森に居る不死鳥のせいだと知った俺は、それを止めるために、森の中へと向かった。
「リーフ君の日焼け止め(強)のおかげで中には入れたけど……散々な状況ね」
隣をあるくマーキュリーさんが、顔をしかめて言う。
森は青い炎で包まれ、さらに死の灰とやらがずっと吹き荒れている。
「奥へ行くとさらに灰の嵐はひどくなる。どうする?」
案内人のイージスさんが尋ねてくる。
死の灰を取り込むと、エルフさんたちにみたいに、肺の病にかかってしまう……よし。
「ちょっと待ってください」
俺は背負っている木箱のなかから、1枚のマスクを取り出す。
「なにそれ、マスク?」
「はい、風邪の時に身につけるマスクです」
「でもこの死の灰を、普通のマスクで防げるかしら」
「そこで、一工夫するんです」
俺は木箱から薬草を取り出す。マスクの上に載せて、さらにガーゼでかぶせる。
「マーキュリーさん、イージスさん、こちらを身につけてください」
「マスクに薬草を挟んだだけじゃない……? こんなので……」
マーキュリーさんはブツブツ言いながらも、俺からマスクを受け取ってくれる。
薬師としての腕を信頼してくれるからだろうと思うと、うれしくなる。
彼女はマスクを付けて、眼鏡の向こうの目を丸くした。
「す、すごい。なんか新鮮な空気が入ってくるんだけど?」
「空気草の効果です!」
「空気……草? そんな薬草あったかしら?」
「自生はしてないです。俺が品種改良して作った薬草です!」
俺はデッドエンド村にいたころ、家庭菜園をやっていた。
そこで薬草の品種改良も行っていたのだ。
「外の人体に害をきたす空気を取り込んで、新鮮な酸素を吐き出す薬草を、自分で品種改良して作ったんです!」
「…………」
あれ? マーキュリーさんがまた頭を抱えてる!
そんなときは……。
「はい、頭痛薬!」
「完全回復薬ね! もう! ほんと……あんたって子は……はぁ……」
「どしたました? 疲れたのでしたらもう一本……」
「誰のせいじゃ誰のぉ!!!!!!」
そんなやりとりをする俺たちを見て、イージスさんがつぶやく。
「すごい……この少年、何者……?」
「辺境の薬師ですよ!」
【★お知らせ】
マガポケで、薬師のコミカライズスタートしてます!
よろしくお願いします!
https://pocket.shonenmagazine.com/episode/4856001361564457356