171.やること
俺たちはエルフのイージスさんに案内してもらいながら、神獣の森へと向かう。
どうやら、神獣の不死鳥が悪さをしてるようだ。
「不死鳥様は元々我らエルフに力を貸してくださっていた。ところが、ある日、急に不死鳥様は暴走し、我らに【死の灰】を振りまきだした」
「死の灰……? なによそれ」
「わからない。ただ、不死鳥様が飛んだ後に、黒い灰が散布されていた。それを取り込んだものは全員、体調を崩していた」
……調べてみないとなんとも言えないけど、それがエルフさんたちに、病気を引き起こしていたのか。
「灰が体調不良にさせるなんてありえるの?」
「確かに、鉱山で働く人たちが、粉塵によって肺をやってしまうって事例はあります」
「なるほどね……。それに魔物の肉体には毒が含まれてるし、それも影響があるかもね」
マーキュリーさんの言う通りだ。
まあ不死鳥は神獣っていうらしいけど……。
でも、特別な力を持った獣ということは、神獣もまた魔物と同じ身体の構成をしていると考えられる。
その灰が健康被害を引き起こす可能性は、十分にありえた。
「じゃあ……俺たちのミッションって、不死鳥の元へ行き、急にエルフさんたちを攻撃しだした原因を突き止めること、でいいんですよね?」
するとイージスさんは目を丸くして、立ち止まっていた。
え、なんだろう……?
「……てっきり、討伐するのかとおもったのだが」
「? どうして? だって今までは仲良くやれてたんでしょ?」
「いや、まあ、そ、そうだが……」
「なら、殺す必要なんてない。多分なにか外的要因が、不死鳥さんに悪さするようにさせてんたんですよ! なら原因を突き止めて、改善させれば良い。でしょ?」
イージスさんはうつむいたあと、こくんとうなずいた。
「……殺さないでくれて、感謝する」
彼女からは悲しみの匂いがした。
俺は鼻が良いのだ。
涙をこらえているのだということが、とてもよく伝わってきた。
マーキュリーさんは彼女の肩をぽんと叩く。
「大丈夫よ。うちの化け物、すんごいんだから」
うん? 化け物……?
誰のことだろうか……。
まあでも、俺のやることは、決まった。
不死鳥の元へ治療すること。それれだけ!