156.不審者?
グラハム公爵からの依頼で、流行病が起きてるエルフ国を、助けに来たはずだったんだけど……。
「どうしてこうなった……」
マーキュリーさんが俺の隣で頭を抱えている。
俺と彼女は今……牢屋に入れられていた。
「あのぉ……出してもらいたいんですけど……?」
ここは、木でできた牢屋のなか。
この建物は、とてもでかい木の上にあって、俺たちはそこへと運ばれたのである。
なんでって?
「私たちは不審者じゃないのよ……! 信じて……!」
「黙れ」
牢屋の外には、怖そうな顔つきのエルフさんが立っている。
「エルフさんお名前は?」
「貴様らに名乗る名前はない」
「でも会話するとき不便じゃないですか……?」
するとエルフさんはにらんで、ちっ、と舌打ちした後……。
「我が名はイージス」
「イージスさんですね! 俺はリーフ・ケミスト! こちらはマーキュリーさん。流行病で困ってるってきいて、ギルド天与の原石から派遣されてきました!」
そうだよ、牢屋に入れられてるのは、何かの間違いだよ。
ちゃんと話せば……。
「そんな話、信じられると思うか?」
「ええ……信じてくださいよぉ」
しかしイージスさんは俺たちをにらみつけて言う。
「貴様らは、空から強襲し、この村へやってきた。そして【お守り様】の小屋に勝手に入ってきた! お守り様を奪おうとする不届き者だろう!?」
「ちがうわよ……! お守り様なんてはじめて聞いたしっ! 空から襲ってきたのは、単に船から落ちただけで……」
「ふん! バカか。船が空を飛ぶわけがないだろう」
「そうだけだけど! そうだけどもぉ!」
どうやら俺たちは、エルフの皆さんが大切にしてる、そのお守り様とやらを、奪いに来たと思われてるようだった。