151.海
俺たちはエルフ国アネモスギーヴに渡ることになったのだが……。
「あば……あばばば……」
船の上で、俺はマーキュリーさんの腰にしがみついてる。
くびれた腰をエロいと思う暇も余裕も無かった。
「どうしたのだ、主よ」
タイクーンのタイちゃんが俺に尋ねてくる。
マーキュリーさんも心配していた。あばばばのば。
「う、海……」
「「海……?」」
「海……怖い……」
「「え?」」
ふたりが意外そうにしてる……。
そう、俺は海が苦手なのだ。
「そりゃまた……どうして?」
「だって……泳げないので」
「ああ、なるほどねぇ……」
マーキュリーさんが得心いったように言う。
顔が見えないので、どういうふうに思われてるのかわからない。
でも情けないやつって思われたら嫌だなぁ。
「デッドエンドって海ないんだっけ?」
俺の出身地、デッドエンド村のことだ。
「あるんですが、泳いじゃ駄目って言われてるんで」
「それはどうして?」
「だって……海にはこわーい化け物がいるって……」
だから海には近づくなーって言われてたんだよね。
「いや化け物の君が言うかねそれ……」
「しかし主にも苦手があったのだなぁ」
「意外ですわね」
……うう、情けない。
一方で、マーキュリーさんがもう一人を見やる。
「で、プリシラはどうしてついてきてるの?」
今回の旅に、公爵令嬢のプリシラさんがついてきている。
護衛のエリスさんも一緒だ。
「向こうに顔が利くひとがいないでしょう? ということで、ついて行きますわ」