141.治癒神の謎
魔王ヴァンデスデルカは、デッドエンド村に報告に来ていた。
そこで見た物を、村長のアーサー、そしてマーリンに語る。
「「…………」」
マーリンは、記憶を読み取り、映像を映す魔道具を使った。
ヴァンデスデルカが見聞きした、リーフ・ケミストの正体を見て……。
「なんじゃ……これは……」
アーサーは一言、ぽつりとそういった。
「これが……リーフちゃんだっていうのかい?」
ヴァンデスデルカは目を細める。
アーサーは珍しく動揺していた。
食い入るように、空中に映し出される、リーフ・ケミストの映像を見ている。
マーリンも同様であった。
(二人のこの反応……リーフ・ケミストの正体については、知らなかったようだな……)
ヴァンデスデルカは相手の闘気を視認できる。
闘気の揺らぎから、精神状態をある程度把握することも可能。
目の前の二人からは、最強種とされる古竜を超越する闘気が発せられている。
しかし……動揺してるのか、激しく揺らいでいた。
(村長である二人がこの反応……ってことは、村の人たちもまた……リーフ・ケミストがあんな力を秘めていたってことを知らないのか)
ヴァンデスデルカは一応、警戒を解く。 もしも村の人間たちが、リーフ・ケミストが化け物だと知っていたとしたら。
それを知っていながら、人間界に放流したってことになる。
だが違ったようだ。
「知らなかったんすね……」
「「ああ……」」
触れた物全てを、塵にする。
破壊の力。まさしく破壊の神。
「村であの力を見せたことは、ないんすね」
「そう……じゃのう。わしらの前じゃ、いつも素直で可愛いリーフちゃんじゃったわい」
ショッキング映像を見せられたあとだというのに、この英雄達はすぐに、精神を持ち直した。
さすがは、百戦錬磨の英傑といったところか。
「わしらの前……か」
思い当たる節があるような、言い方であった。
魔女マーリンがつぶやく。
「アスクレピオス様なら、知っておったかもしれませんね」
「アスクレピオス……たしか、リーフの師匠で、育ての親とか?」
そう言えば……と魔王は続ける。
「アスクレピオスって、ナニモノなんすか? 治癒神ってことくらいしか、知識としてしらねーっすけど」
アーサー達は神妙な顔つきで言う。
「そうはいっても、わしらも知らぬ」
「は……? どういうことっすか?」
「アスクレピオス様は、村に来る前のことを、ほとんど語らずだったのだ」
アーサーを含めた、この英雄村は、かつて世界に名をはせた、英雄達が暮らしている。
しかし全員がその出自をしゃべっているわけでは無い。
「たとえば近所のセイ・ファートばあさんも、自分が何をしてきたのかさっぱり言わなんだ」
「後ろ暗い過去を持った人もいるのですよぉ」
……確かに。
時代が変われば、英雄も殺人鬼扱いされてしまうこともある。
「わしらは、語らないのであれば、無理に過去を詮索せぬからな」
「じゃあ……アスクレピオスがどんな経歴を持っていたのかも?」
「そうさなぁ……あまり気にしなかったの。ただ……村に居た頃は、とても優しく、そして慈悲深いお方であった」
……とはいえ。
村の英雄達にすら、その過去を隠してきたということだ。
「治癒神アスクレピオス……。そして、その拾われ子が……破壊神……か」
村を支えてきた治癒の神が、途端に、謎の存在に思えて……。
アーサー達は身震いした。
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