140.出生
元魔王ヴァンデスデルカは、デッドエンド村に報告に戻っていた。
村長のアーサーととともに、村へと戻る。
「もーもー」「べーべー」「う゛ぇええええう゛ぇええええええ」
村のそばには、家畜たちが檻で囲われており、牧歌的な雰囲気が漂っている。
しかし……。
「キングミノタウロスに、オピオタウロオスに、アウズンブラが、家畜として飼われてる村なんて、世界広しといえどここしかないっすよなぁ……」
どれも、化け物級にヤバい、牛のモンスターである。
しかしその化け物たちを凌駕する、異次元の存在。
それがこの、英雄村こと、デッドエンド村に住む老人達だ。
アーサーが挨拶していく老人達は、みな文字通り英雄達。
竜を討伐したとか、海を渡ったとか、世界を救ったとか。
そんなヤバすぎる偉業をこなし、そして引退した連中がここに集まっているのである。
アーサーはヴァンデスデルカとともに、自分の家へと戻ってきた。
「おーい、ばーさんやーい。帰ったぞー」
すると目の前に魔法陣が展開し、そこへ、老婆が現れる。
「転移魔法……無詠唱でやるなんて……」
「おかえりなさい、おじいさん。それに……ヴァンデスデルカ」
大魔女マーリン。
世界に存在する、凄い魔女のなかのひとりだ。
「お、おひさしぶりっす……マーリンさま」
「まあまあ。すっかりヴァンデスデルカも、人間の姿が板についてきたわね」
魔王は本当は魔族。
しかしリーフ・ケミストに接触するために、見た目を偽装してるのだ。
現在はシスター服を着た、人間の美少女姿をしている。
「それで?」
「今日は報告と……聞きたいことがあってきたっす」
魔王はもともと、この老人たちに命じられて、王都にいる邪教徒たちを調査しにいった経緯がある。
ヴァンデスデルカは王都で見た邪教徒と、彼らがあがめる邪神について報告。
そして……邪神との戦いで話題に上がったのは……。
「突如として、リーフ君が謎の力を解放して、全部を片付けたっす」
「「…………」」
リーフ・ケミスト。
最初から化け物じみた力を持っていたが。
しかし、王都で見せたのは、もうそんな化け物とかそういうレベルを超越していた。
全てを破壊し、全てを元通りにした。
「あんなの……もう、神じゃないっすか」
そう、神。
邪悪なる神に対抗できうる存在もまた、神でしかありえない。
魔王は層結論づけた。
つまり……。
「リーフ君って……ひょっとして……邪神なんじゃないっすか?」