139.報告
一方、元魔王ヴァンデスデルカはというと。
邪教徒が引き起こした、王都騒乱の件を報告するため、辺境へと向かっていた。
「ぜえ……はあ……相変わらず、ここは遠い……」
王国の端っこにある、旧ヴォツラーク領、そして隣接する奈落の森を超えて……。
ヴァンデスデルカは、リーフの故郷、デッドエンド村へとたどり着いた。
門番の比較的若男が、こちらに気づいて、近づいてくる。
「お? おまえは……」
「しまった……今は人間に変装してるのだった。変装を……」
「ヴァンデスデルカでねえか」
「なんでわかるんすかぁ~……」
最強の魔女マーリンから渡された、人間を欺くための魔道具をつけているのだが……。
「はは! 空気感でわかるよ」
「ああ、そうっすか……」
そうだ、この老人ども、人間じゃ無かった……。
人間を欺く魔道具がきくはずがなかった……。
そう、この村に住んでいるのは、全員が引退した英雄達。
デッドエンド村。通称、英雄村。
誰も彼もが、比類無き強者達である。
「どうしたんだ? 今日は。たしかリーフちゃんのとこにいったんでねえか?」
「ああ、そうなんすけど……ちょっと報告と、気になることがあったんで。村長さんいるっすかね?」
今回、アーサー、そしてマーリン村長夫婦から、依頼を受けていたのだ。
邪教徒をどうにかしろと。
しかし邪教徒のトラブルを解決する段階で、一つの問題が浮き彫りになった。
……すなわち。
リーフ・ケミストの、正体について。
彼は人間離れした力を、元々持っていた。
しかし邪教徒戦でみせたあの姿は、そういう次元を超えていた。
比喩表現では無く、リーフ・ケミストは人間では無い。
……その事情を、アーサーたちが知らないわけが無い。
だとしたら、なぜ隠しているのか?
「村長は森で狩りしてるよぅ」
ヴァンデスデルカは居場所を教えてもらい、アーサーの元へむかう。
しばらく歩いて行くと、開けた場所へと到着する。
「おー、ヴァンデスデルカ。ひさしいのぅ!」
「はぁ……」
アーサーは、上半身裸で、【とあるものの】上に乗っている。
それは、古竜だ。
老成して巨大化したドラゴンの死体の上に立って、馬鹿でかい肉にかぶりついている。
「そちらもお元気そうで。古竜を朝ご飯にするとは……」
ばりばり、と骨ごと古竜を食べる化け物。
だがリーフ・ケミストの真の正体は、これ以上の化け物であった。
今から、この男に探りを入れてみる。
「どうだい、古竜食っとく?」
「え、遠慮しておきます……」
……脳裏に、秘密に近づこうとして、アーサーに処刑される未来を思い描き、ぶるぶるとヴァンデスデルカは身震いするのだった。
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