138.不安だわ
プリシラさんのおうちにて、俺は後輩のローレン君と模擬戦をした。
完全回復薬で回復させたあと……。
「じゃ、帰るわよリーフ君」
「「え~!」」
マーキュリーさんには悪いけど、俺はもうちょっとローレン君と模擬戦とかしたい!
しかしあきれたようにため息をつくと、マーキュリーさんは言う。
「帰るの。ほら」
「どうしてですか?」
「この家ぶっこわれちゃうでしょうが!」
「? なら完全回復薬で治せばいいのでは?」
「治せるからって壊すなや……!!!」
まあそうかもしれない。
でもなー。
「暴れるなら外でやりなさい。明日は冒険者として依頼を受けてもらうから」
「そうですね。じゃ、ローレン君、またね」
うむ! とローレン君が元気よくうなずく。
ふふふ、元気の良い後輩が入ってきてくれて、うれしいなっ。
「プリシラ様、あとはよろしく」
「わ、わかりましたわ」
マーキュリーさんがローレンくんの耳元で言う。
「……では、勇者様。くれぐれも正体は隠して置いてくださいね」
「うむ! 了解だ!」
二人がこっそり話している。
むむ、ちょっと焼けちゃうなぁ。
俺もローレン君と秘密のお話とかできるくらい、仲良くなれたらな!
「さよならお二人とも」「またね!」
と言って俺とマーキュリーさんは、グラハム家をでて、彗星亭へとむかう。
同じ王都の敷地内とはいえ、結構ここからは距離がある。
「超絶疲れたわ……」
「完全回復薬飲みます?」
「ありがとう。でも大丈夫。この薬でどうこうなるもんじゃないから」
精神性のものかな?
「じゃあ頭痛薬飲みますか?」
「いらねえよ同じもんでしょうが……はぁ……」
マーキュリーさんが頭を抑えている。
頭痛薬飲めば直ると思うのに……。
なんで飲まないんだろう。
味が飽きたのかな。
それだ、飲み飽きたのかも。
俺は蓋を開けて、ちょろちょろとマーキュリーさんの頭上から、頭痛薬をかける。
「んんぅ? リーフ君、何してるのかなぁ?」
「疲れてそうだったので! 元気になりました?」
「元気になったわよ……! ありがとねちくしょう!」
「そっか! 良かったです!」
うぐぐう……とマーキュリーさんが言葉に詰まる。
「……惚れたら負けってほんとよねぇ。はぁ」
「え、なんですって?」
「なんでもないわ。でもねリーフ君、女性の頭に無許可で液体ぶっかけるのは、良くないわよ」
「そうなんですか? 田舎じゃ元気ない人に、こうやって無理矢理にでもぶっかけてましたけど」
「うん、田舎の常識を、都会の常識と思うなって、あたしなんっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっべんも言ったわよね!」
そうかも。
「はぁ……不安だわ。爆弾が二つに増えて、果たしてやってけるかしら?」
「爆弾なんて買ったんですか?」
ちら、とマーキュリーさんが俺を見て、はぁああああ……とため息をつく。
俺が無言で頭痛薬を差し出すと、マーキュリーさんは無言で受け取って、ごくごくと飲んでいるのだった。
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